近赤外分光装置によるニューロフィードバック技術を応用した脳卒中及び神経難病の機能改善に寄与する新しいリハビリテーションシステムの開発

文献情報

文献番号
201446001A
報告書区分
総括
研究課題名
近赤外分光装置によるニューロフィードバック技術を応用した脳卒中及び神経難病の機能改善に寄与する新しいリハビリテーションシステムの開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
望月 秀樹(大阪大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 三原 雅史(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 渡邉 嘉之(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 服部 憲明(社会医療法人大道会 森之宮病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 障害者対策総合研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
11,253,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、非侵襲的に測定した脳活動を用いて選択的に中枢神経の可塑的変化を誘導するニューロフィードバックと呼ばれる技術を応用した新たなリハビリシステムの、神経疾患患者に対する有効性を検証することである。本研究では、非侵襲的脳機能測定技術として患者負担が少なく安全安価で汎用性の高い近赤外分光法を用いたシステム(NIRS-NFB)を開発し、広く臨床で用いられるリハビリ手法として確立させることで、社会保障費増加を抑制しつつ慢性神経疾患のADL/QOL向上に寄与することを目指している。
研究方法
本研究は大阪大学および森之宮病院の2施設による多施設共同研究であり、平成26年度には、①健常者を対象にしたバランス能力に対するNIRS-NFBの有効性の検討を行い、また②神経疾患患者に対するランダム化二重盲検デザインを用いた治療介入研究を開始した。また、NIRS-NFBに伴う脳内ネットワーク評価の一環として、③パーキンソン病におけるすくみと関連する神経ネットワークの評価も行った。
①健常者を対象にしたバランス能力に対するNIRS-NFBの有効性の検討
歩行バランス能力に対するNIRS-NFBの有効性を検討するため、健常成人20名(男性7名、平均年齢28.1才)を対象に、補足運動野(SMA)活動を用いたNIRS-NFB介入を行い、前後でのバランス能力及び上肢巧緻性を評価した。
②神経疾患患者に対するランダム化二重盲検デザインを用いた治療介入研究
緩徐進行性の脊髄小脳変性症患者18名(男性9名、平均年齢59.5才)に対して、集中リハビリテーション(4週間)とあわせて、立位バランス課題を用いた運動想像中のSMA活動を用いたNIRS-NFB介入を週3回2週間行い、介入前、介入直後、介入後2週間での小脳失調および歩行能力を評価した。
③パーキンソン病におけるすくみと関連する神経ネットワークの評価
すくみを有するパーキンソン病患者15名(平均年齢68.5才)に対して、拡散強調画像(DTI)によるFractional anisotropy(FA)を用いた脳内ネットワーク評価を行った。
結果と考察
①健常者を対象にしたバランス能力に対するNIRS-NFBの有効性の検討
 Real-FB条件では、繰り返し後半の試行中のSMA活動が前半の試行中と比較して有意に大きかったが、Sham-FB条件では有意な脳活動変化は認めなかった。また、バランス指標については、介入条件と評価タイミングの間に有意な交互作用が認められ(F1,38=6.2, p<0.05)、Real-FB条件でSham-FB条件と比較して介入後の立位バランス能力が高かった。一方、上肢巧緻機能には有意な差は認めなかった。これらのことから、SMAをターゲットにしたNIRS-NFBは健常者において立位バランス能力に良好な影響をあたえることが示唆された。
②神経疾患患者に対するランダム化二重盲検デザインを用いた治療介入研究
 SARAおよびTUGに関して、評価時期とグループとの間に有意な交互作用を認め、Real-FB群で改善効果が大きかった(F2,15=3.6, p<0.05)。また運動想像中の脳活動については、Real-FB群では介入前後でのSMAの賦活効果が認められたが、Sham-FB群では明らかな変化を認めなかった。これらの結果から、NIRS-NFBは脊髄小脳変性症患者においてもターゲットの脳領域の活動を賦活させ、それに伴い機能改善効果が認められることが示唆された。
③パーキンソン病におけるすくみと関連する神経ネットワークの評価
 DTIを用いた検討によって、先行研究と異なり、脳幹被蓋部背側の領域がすくみの重症度と関連していることが明らかになった。この領域は歩行に関わる脳内ネットワークの中心に位置し、基底核、視床下部および中脳などからの歩行及び姿勢保持に関連領域からの下降線維が集中している領域であり、これらの領域の変性がすくみの病態に直接関連している可能性が示唆された。
結論
本研究は当初の予定通り順調に推移しており、これまでに、NIRS-NFBシステムの健常者に対する効果を証明し、SCDの患者に対する有効性を示唆する結果も得られている。また、関連する機能画像評価から、パーキンソン病のすくみの病態の一端を明らかにすることができたが、これらの結果もNIRS-NFBの有効性を支持するものであった。引き続き来年度もこれらの検討を続け、一般臨床への応用を目指していきたいと考えている。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201446001C

収支報告書

文献番号
201446001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,628,000円
(2)補助金確定額
14,628,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,966,172円
人件費・謝金 0円
旅費 933,590円
その他 353,238円
間接経費 3,375,000円
合計 14,628,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
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