文献情報
文献番号
201445005A
報告書区分
総括
研究課題名
神経エネルギー代謝の改善を指標とした認知症根本治療効果を発揮する生薬エキスの網羅的評価
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
竹森 洋(独立行政法人 医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 )
研究分担者(所属機関)
- 古江 美保(独立行政法人 医薬基盤研究所 難病 疾患資源研究部)
- 渕野 裕之(独立行政法人 医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター)
- 佐々木 勉(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 田端 俊英(富山大学 大学院理工学研究部)
- 上里 新一(関西大学 化学生命工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 認知症研究開発
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
21,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢化社会において、認知症は未だ根本治療薬が存在しない深刻な疾病であり、神経変性及び神経シグナル伝達不全を伴う。神経シグナル伝達の不全・過剰は、ともに神経障害作用を惹起することから、認知症治療薬には神経保護作用を示すこと及び正常な神経伝達シグナルは維持することが求められる。一方で、認知症の原因は様々であることから、認知症病態における多様な型の共通現象(病態発症機構)を標的とした治療薬が有効であると考えられる。
本研究では、認知症病態の共通現象である神経細胞-支持細胞(アストロサイト)間のエネルギー交換能低下による神経興奮毒性制御不全に着目し、認知症治療薬に必要な条件の双方を評価するスクリーニング系を構築し、漢方生薬エキスライブラリーを網羅的に評価することで、認知症根本治療効果を発揮する生薬及びその成分を同定することを目標とする。なお、評価に用いる高品質細胞供給源として、ヒトiPS細胞由来アストロサイトを利用する。また、同定する生薬及びその成分のマウスの記憶能力に対する効果を検証する。さらに、将来、製薬企業へ創薬シーズとして高機能化生薬成分を導出するために、生薬成分の有機修飾も行う。
また、本研究のスクリーニングの特徴は、これまでの漢方抽出法では含有率が低かった脂溶性成分を含めた広範囲の極性化合物を含む漢方生薬エキスをスクリーニングすることにある。本研究成果の波及効果としては、同定される生薬成分の有機修飾による新薬創製も期待される。本研究は、神経細胞のエネルギー代謝を改善させる新たな創薬手法を開拓し、治療法を提供することを目的とする。
本研究では、認知症病態の共通現象である神経細胞-支持細胞(アストロサイト)間のエネルギー交換能低下による神経興奮毒性制御不全に着目し、認知症治療薬に必要な条件の双方を評価するスクリーニング系を構築し、漢方生薬エキスライブラリーを網羅的に評価することで、認知症根本治療効果を発揮する生薬及びその成分を同定することを目標とする。なお、評価に用いる高品質細胞供給源として、ヒトiPS細胞由来アストロサイトを利用する。また、同定する生薬及びその成分のマウスの記憶能力に対する効果を検証する。さらに、将来、製薬企業へ創薬シーズとして高機能化生薬成分を導出するために、生薬成分の有機修飾も行う。
また、本研究のスクリーニングの特徴は、これまでの漢方抽出法では含有率が低かった脂溶性成分を含めた広範囲の極性化合物を含む漢方生薬エキスをスクリーニングすることにある。本研究成果の波及効果としては、同定される生薬成分の有機修飾による新薬創製も期待される。本研究は、神経細胞のエネルギー代謝を改善させる新たな創薬手法を開拓し、治療法を提供することを目的とする。
研究方法
神経エネルギー代謝評価には、細胞外酸素消費計Flax analyzer(Seahorse社)を利用してミトンコンドリアでの酸素消費を指標とした。その他、ATPはルシフェラーゼ測定システム、NADHは細胞毒性Kitを活用して、細胞質とミトコンドリア内を分けて測定した。
神経細胞は、ヒトはiPS由来、マウスは初代培養細胞及び癌化細胞(ヒト神経芽細胞腫由来株 SK-N-SH及びマウスNeuro2a)を利用した。 神経培養培地及びB27 Supplementは、Miltenyi社から入手した。
神経薬理薬、ピルビン酸オキシダーゼ・乳酸オコキシダーゼは和光純薬から入手した。
(倫理面への配慮)
本研究はマウス及びヒトiPS細胞由来材料を利用する。マウス実験は医薬基盤研究所動物実験委員会の承認のもとガイドラインに沿い、研修のうえ、十分に動物愛護上の問題点に配慮し研究を行っている。また、ヒトiPS細胞の取り扱いも、医薬基盤研究所の倫理委員会の承認を得て実施した。
神経細胞は、ヒトはiPS由来、マウスは初代培養細胞及び癌化細胞(ヒト神経芽細胞腫由来株 SK-N-SH及びマウスNeuro2a)を利用した。 神経培養培地及びB27 Supplementは、Miltenyi社から入手した。
神経薬理薬、ピルビン酸オキシダーゼ・乳酸オコキシダーゼは和光純薬から入手した。
(倫理面への配慮)
本研究はマウス及びヒトiPS細胞由来材料を利用する。マウス実験は医薬基盤研究所動物実験委員会の承認のもとガイドラインに沿い、研修のうえ、十分に動物愛護上の問題点に配慮し研究を行っている。また、ヒトiPS細胞の取り扱いも、医薬基盤研究所の倫理委員会の承認を得て実施した。
結果と考察
チョウトウコウ(Chou)のエキスにアストロサイトからのピルビン酸分泌促進作用があることが示唆された。次に、医薬基盤研究所の薬用植物資源研究センターの別ロットを、ATP量を元にした神経毒性評価から,どのロットに目的成分が多く含まれるかを予測した(詳しくは渕野の項目)。渕野による多項解析結果から、成分が同定でき、その成分にはミトコンドリ機能亢進活性が検出できた。ATPと同時に、細胞毒性試験に利用されるNADHを測定してみると、本成分にはNADH量を高める活性が存在していたが、その活性は毒性負荷を行わないコントロール細胞よりも高かった。乳酸脱水素酵素LDHがピルビン酸を乳酸に変換する際にNADHをNADに変換することから、チョウトウコウ成分は、LDH阻害剤である可能性が示唆された。そこで、LDH活性を測定したところ、やはり、チョウトウコウ成分はLDH活性を30%ほど抑制した。 一般的に、LDH阻害は神経障害を惹起すると考えられるが、これは、LDH完全欠損患者でのことで、LDHの30%活性阻害は、ピルビン酸供給量を高める手段そしては有用かもしない。今後の解析が期待される。
結論
神経細胞のエネルギー代謝を改善し、神経毒性耐性を獲得させるためにピルビン酸が重要な役割を担っていることが示唆された。ピルビン酸の高感度測定計を樹立し、生薬エキスライブラリーのスクリーニングを開始した。
公開日・更新日
公開日
2016-03-14
更新日
-