文献情報
文献番号
201443005A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性痛に対する認知行動療法の普及と効果解明に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
柴田 政彦(国立大学法人大阪大学 医学系研究科疼痛医学寄附講座)
研究分担者(所属機関)
- 堀越 勝(国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター)
- 北原 雅樹(東京慈恵会医科大学 麻酔科・ペインクリニック)
- 井関 雅子(順天堂大学医学部 麻酔科学・ペインクリニック講座)
- 住谷 昌彦(東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部)
- 山本 則子(東京大学大学院医学系研究科 成人看護学)
- 高井 ゆかり(東京大学大学院医学系研究科 緩和ケア看護学)
- 今村 佳樹(日本大学歯学部 口腔診断学)
- 井上 玄(北里大学医学部 整形外科)
- 宮岡 等(北里大学医学部 精神科学)
- 佐々木 淳(大阪大学大学院人間科学研究科 臨床心理学)
- 小山 なつ(滋賀医科大学医学部 生理学講座)
- 木村 慎二(新潟大学医歯薬総合病院 総合リハビリテーションセンター)
- 沖田 実(長崎大学大学院医歯薬総合研究科 リハビリテーション科学)
- 松原 貴子(日本福祉大学 健康科学部リハビリテーション学科)
- 西上 智彦(甲南女子大学 看護リハビリテーション学科理学療法学科)
- 鈴木 勉(星薬科大学薬品毒性学教室)
- 祖父江 友孝(大阪大学大学院医学系研究科 社会環境医学講座)
- 池本 竜則(愛知医科大学 運動療法センター)
- 大江 悠樹(国立精神神経医療センター 認知行動療法センター)
- 高岸 百合子(駿河台大学 心理学部)
- 岩佐 和典(就実大学 教育学部)
- 福森 崇貴(徳島大学大学院 ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部)
- 蟹江 絢子(国立精神神経医療研究センター リハビリテーション部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 慢性の痛み解明研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
4,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性痛に対する認知行動療法(以下CBT)の普及とその効果解明
・慢性痛に対するCBT資材を作成し、作成した資材を活用したセミナー開催
・産業界における慢性痛の実態調査およびCBTの需要調査の実施
・慢性痛に対するCBT・リハビリ入院プログラムの作成及び実施
・医療者に対する痛みの教育の普及
・慢性痛に対するCBT資材を作成し、作成した資材を活用したセミナー開催
・産業界における慢性痛の実態調査およびCBTの需要調査の実施
・慢性痛に対するCBT・リハビリ入院プログラムの作成及び実施
・医療者に対する痛みの教育の普及
研究方法
i.2009年以降の61の慢性痛に対するCBT研究論文をreviewし、効果の高い18のプログラムを抽出し1セッション30分で以下の8セッションの慢性痛に対するCBTプログラムを作成した。
ii.関東圏内某企業においてアンケートによる慢性痛の実態調査を行った。
iii.研究分担者が所属する小規模病院にて、慢性痛に対して就業が困難な患者を対象とした3週間短期入院CBT・リハビリプログラムを作成し実施した。効果を厚労省牛田研究班による慢性痛多面的評価法を用いた。
iv.過去の医師用、歯科医師用、リハビリ療法士用コンテンツ、IASP Curriculum Outline on Pain for Nursingなどを参考に、臨床に携わる看護師の予備知識や理解を考慮して作成した。
ii.関東圏内某企業においてアンケートによる慢性痛の実態調査を行った。
iii.研究分担者が所属する小規模病院にて、慢性痛に対して就業が困難な患者を対象とした3週間短期入院CBT・リハビリプログラムを作成し実施した。効果を厚労省牛田研究班による慢性痛多面的評価法を用いた。
iv.過去の医師用、歯科医師用、リハビリ療法士用コンテンツ、IASP Curriculum Outline on Pain for Nursingなどを参考に、臨床に携わる看護師の予備知識や理解を考慮して作成した。
結果と考察
i.CBTプログラムを以下の内容とし紙媒体の資材を作成。
①痛みのしくみ
②呼吸法
③ボディ・スキャン、漸進的リラクセーション/目標設定
④生活週間/ペーシング/タイムマネジメント
⑤行動実験、障害対策
⑥思考モニター
⑦知再構成
⑧再発予防
「慢性痛に対する認知行動療法のセミナー開催」は、H26年11月24日に東京で開催した、NPO痛み医学教育情報センターが主催した医療者向け研修会において、「認知行動療法を学ぶ」と題して堀越らが45名の参加者を対象に講演した。H27年度には、研究班主催の2回のセミナーとNPOと共催で2-3回のセミナー計画を策定した。
ii. 企業における慢性痛の有症率は11.2%で本邦の従来における報告よりやや低値であった。生産性の低下や欠勤・早退など、痛みにより仕事に何らかの支障があったと回答した人は全体の12.9%であった。リスク因子の分析では、3カ所以上に痛みがあること、痛みに対する恐怖回避行動がリスク因子であった。
iii. 3週間短期入院によるCBT・リハビリプログラムを作成し、40台男性1名に実施した。PDAS: 32/60→6/60, EQ-5D 0.60→1.0と著明に改善した。
iv. 看護師用痛みの教育コンテンツは、高齢者の特徴や性質を踏まえ、痛みへの対処法を考えることが出来るような内容を入れた。新人看護師と先輩看護師がある在宅高齢者について話をするというストーリーを用いて、読者の心をつかむ工夫をした。薬剤師用痛みの教育コンテンツは、薬剤師に必要な痛みに関連した薬理学的知識に加えて、薬剤師が痛みを有する患者に対する服薬指導を行う方法や注意点について言及した。
D.考察
H26年9月に本研究計画が採択され、約半年間でCBT資材、看護師用及び薬剤師用の教育コンテンツの作成が完成に近づいた。産業界における慢性痛の実態調査を行い、現状の解明が進んだ。痛みのために就業に支障をきたしている症例を対象に短期CBT・リハビリ入院プログラムを策定した。1例に実践し効果があった。慢性痛による社会的コストの大きさと、その削減対策には大きな社会的な意義があることを明らかにし、効果が期待できるCBTという有力な治療法を普及させるという目標に向かって着実に成果を出し始めている。
①痛みのしくみ
②呼吸法
③ボディ・スキャン、漸進的リラクセーション/目標設定
④生活週間/ペーシング/タイムマネジメント
⑤行動実験、障害対策
⑥思考モニター
⑦知再構成
⑧再発予防
「慢性痛に対する認知行動療法のセミナー開催」は、H26年11月24日に東京で開催した、NPO痛み医学教育情報センターが主催した医療者向け研修会において、「認知行動療法を学ぶ」と題して堀越らが45名の参加者を対象に講演した。H27年度には、研究班主催の2回のセミナーとNPOと共催で2-3回のセミナー計画を策定した。
ii. 企業における慢性痛の有症率は11.2%で本邦の従来における報告よりやや低値であった。生産性の低下や欠勤・早退など、痛みにより仕事に何らかの支障があったと回答した人は全体の12.9%であった。リスク因子の分析では、3カ所以上に痛みがあること、痛みに対する恐怖回避行動がリスク因子であった。
iii. 3週間短期入院によるCBT・リハビリプログラムを作成し、40台男性1名に実施した。PDAS: 32/60→6/60, EQ-5D 0.60→1.0と著明に改善した。
iv. 看護師用痛みの教育コンテンツは、高齢者の特徴や性質を踏まえ、痛みへの対処法を考えることが出来るような内容を入れた。新人看護師と先輩看護師がある在宅高齢者について話をするというストーリーを用いて、読者の心をつかむ工夫をした。薬剤師用痛みの教育コンテンツは、薬剤師に必要な痛みに関連した薬理学的知識に加えて、薬剤師が痛みを有する患者に対する服薬指導を行う方法や注意点について言及した。
D.考察
H26年9月に本研究計画が採択され、約半年間でCBT資材、看護師用及び薬剤師用の教育コンテンツの作成が完成に近づいた。産業界における慢性痛の実態調査を行い、現状の解明が進んだ。痛みのために就業に支障をきたしている症例を対象に短期CBT・リハビリ入院プログラムを策定した。1例に実践し効果があった。慢性痛による社会的コストの大きさと、その削減対策には大きな社会的な意義があることを明らかにし、効果が期待できるCBTという有力な治療法を普及させるという目標に向かって着実に成果を出し始めている。
結論
慢性痛に対するCBTの普及と効果解明の目標を達成するために、資材作成、実態調査などの点で着実な進捗が見られる。
公開日・更新日
公開日
2015-06-26
更新日
-