文献情報
文献番号
201442039A
報告書区分
総括
研究課題名
パーキンソン病患者由来iPS細胞を中心とする多面的疾患モデルに立脚した革新的医薬品の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 良輔(京都大学 大学院医学研究科・臨床神経学)
研究分担者(所属機関)
- 服部信孝(順天堂大学医学部 神経内科)
- 岡野栄之(慶應義塾大学医学部 生理学)
- 井本正哉(慶応義塾大学理工学部 生命情報学科)
- 望月秀樹(大阪大学大学院 医学系研究科 神経内科学)
- 青木正志(東北大学大学院 医学系研究科 神経内科学分野)
- 戸田達史(神戸大学大学院 医学研究科 神経内科学)
- 田代 悦(慶応義塾大学理工学部 生命情報学科)
- 赤松和土(順天堂大学 ゲノム再生医療センター)
- 駒野 肇(慶応義塾大学医学部 生理学)
- 浅田隆太(名古屋医療センター 臨床研究センター )
- 山下博史(京都大学大学院医学研究科 臨床神経学)
- 山門穂高(京都大学大学院医学研究科 臨床神経学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 難治性疾患等実用化研究(難治性疾患実用化研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
パーキンソン病(PD)は我が国で2番目に多い神経変性疾患であるが、治療は対症療法に留まり現在のところ根本的治療法はない。本研究では、樹立済みPD患者由来iPS細胞を中心に、多彩なPDモデル動物(マウス・ラット・メダカ・ショウジョウバエ)を含めた多面的疾患モデルを基礎として、創薬シーズの同定から進行抑制や先制医療に繋がる革新的医薬品を創り出すことを目標とする。
研究方法
初年度から次年度において、多彩な疾患モデルからパスウェイ解析を含めたトランスクリプトームやプロテオームの解析を行い、ミトコンドリアやリソソーム系障害の検証に加え、新規の創薬シーズを同定する。次年度以降、薬剤スクリーニングシステムの構築を行い、2年以内にヒット化合物の取得を目指す。ヒット化合物は患者由来iPS細胞でヒトにおける妥当性、モデル動物でin vivoにおける検証を3年以内に行う。ターゲット分子が同定できない場合も、ドパミン分化iPS細胞から得られた表現型を指標として、iPS細胞そのものを用いた薬剤スクリーニングを行う。
また、中核をなす疾患モデルの拡充のため、新規に同定したPD責任遺伝子変異をもつ変異患者由来iPS細胞や、独自に開発した新規孤発性PDモデルマウスの病態解明および薬効評価系確立を同時に進行させる。さらに、PDで障害されるミトコンドリアや小胞輸送を標的としたリード化合物を同定しており、2年以内の同化合物の分子薬理作用の解明・薬効評価を目指す。
同時にバイオバンクとも連携し、バイオマーカー(診断・重症度相関を持つもの)の同定を進め、創薬シーズとの相互検証、臨床応用への可能性を検討する。また作製済みのPDデータベース(PD200名、類縁疾患50名程度)を2000人以上までの規模に拡充し、臨床試験への迅速化を図る。
また、中核をなす疾患モデルの拡充のため、新規に同定したPD責任遺伝子変異をもつ変異患者由来iPS細胞や、独自に開発した新規孤発性PDモデルマウスの病態解明および薬効評価系確立を同時に進行させる。さらに、PDで障害されるミトコンドリアや小胞輸送を標的としたリード化合物を同定しており、2年以内の同化合物の分子薬理作用の解明・薬効評価を目指す。
同時にバイオバンクとも連携し、バイオマーカー(診断・重症度相関を持つもの)の同定を進め、創薬シーズとの相互検証、臨床応用への可能性を検討する。また作製済みのPDデータベース(PD200名、類縁疾患50名程度)を2000人以上までの規模に拡充し、臨床試験への迅速化を図る。
結果と考察
iPS細胞からの創薬シーズ同定のために孤発性PD患者由来iPS細胞の解析を行った。LRRK2 遺伝子変異(I2020T)を有するPARK8患者よりiPS細胞を樹立し、神経細胞へ分化させた所、ドパミン放出能の低下とAKT/GSK-3βの亢進によるTauのリン酸化が誘導された。患者剖検脳における神経原性線維変化からもGSK-3β阻害薬による治療の可能性が示唆された。また、PD患者100名からGBA変異患者3名を同定しiPS細胞を作製した。培養細胞を用いてGBA遺伝子変異の修復を行っており、iPS細胞に適用する予定である。
ゲノム解析・データベースを用いた創薬アプローチとして、ゲノムワイド関連解析から同定された孤発性PDリスク遺伝子やそれら遺伝子と蛋白間相互作用がある遺伝子を標的とする薬剤を,データベースから検索し,細胞実験で神経保護効果を持つ可能性のある薬剤を見いだした.細胞モデルからの創薬としては、漢方薬ライブラリーから神経細胞死を抑制する化合物を見出し、活性酸素種 (ROS) の産生抑制により神経保護活性を発揮することを明らかにした. またPD原因遺伝子DNAJC13の病態解析では、変異型DNAJC13は初期エンドソーム外に異常分布し、エンドソームの形態・分布異常を引き起こす可能性を確認した。さらにα-syn BACを用いたルシフェラーゼアッセイ系を確立し、α-synの発現を低下させるFDA承認化合物(BBB通過する良性疾患治療薬)を得た。動物モデルとしては、α-syn BAC TgマウスとGBAヘテロKOの交配マウスを作製した。また、GBA変異メダカで軸索内のオートファゴソームとα-synの蓄積を伴うspheroidが形成されることを見出し、PDにおけるGBA変異とα-syn蓄積メカニズム解明の糸口を見出した。さらに新規PD遺伝子としてCHCHD2を同定し、ノックアウト・トランスジェニックマウスを樹立し解析中である。また、 変異型α-syn を強制発現した遺伝子改変マーモセットの病理学的解析から脳内にリン酸化α-synの蓄積とPETによるDATの減少が観察された。今後PDの早期症状の解析とin vivoでの治療薬開発モデルになると期待される。
ゲノム解析・データベースを用いた創薬アプローチとして、ゲノムワイド関連解析から同定された孤発性PDリスク遺伝子やそれら遺伝子と蛋白間相互作用がある遺伝子を標的とする薬剤を,データベースから検索し,細胞実験で神経保護効果を持つ可能性のある薬剤を見いだした.細胞モデルからの創薬としては、漢方薬ライブラリーから神経細胞死を抑制する化合物を見出し、活性酸素種 (ROS) の産生抑制により神経保護活性を発揮することを明らかにした. またPD原因遺伝子DNAJC13の病態解析では、変異型DNAJC13は初期エンドソーム外に異常分布し、エンドソームの形態・分布異常を引き起こす可能性を確認した。さらにα-syn BACを用いたルシフェラーゼアッセイ系を確立し、α-synの発現を低下させるFDA承認化合物(BBB通過する良性疾患治療薬)を得た。動物モデルとしては、α-syn BAC TgマウスとGBAヘテロKOの交配マウスを作製した。また、GBA変異メダカで軸索内のオートファゴソームとα-synの蓄積を伴うspheroidが形成されることを見出し、PDにおけるGBA変異とα-syn蓄積メカニズム解明の糸口を見出した。さらに新規PD遺伝子としてCHCHD2を同定し、ノックアウト・トランスジェニックマウスを樹立し解析中である。また、 変異型α-syn を強制発現した遺伝子改変マーモセットの病理学的解析から脳内にリン酸化α-synの蓄積とPETによるDATの減少が観察された。今後PDの早期症状の解析とin vivoでの治療薬開発モデルになると期待される。
結論
PD患者由来iPS細胞から動物モデルに至るまで、様々な創薬シーズやin vivoにおける検証のためのユニークな動物モデルが作成されつつあった。募集要項に研究期間が1年であることが明記されていたため、申請書の「当該年度の研究事業予定期間」を(3年目の1年目ではなく)1年目の1年目と記載したために、終了課題と判断された。本来は次項のロードマップからも3年計画である。
公開日・更新日
公開日
2019-07-10
更新日
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