化学療法に対する抵抗性を克服することを目的とした希少がん(悪性胸膜 中皮腫)治療薬開発のための医師主導治験の実施

文献情報

文献番号
201438129A
報告書区分
総括
研究課題名
化学療法に対する抵抗性を克服することを目的とした希少がん(悪性胸膜 中皮腫)治療薬開発のための医師主導治験の実施
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金田 安史(国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 奥村 明之進(国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科)
  • 中野 孝司(兵庫医科大学)
  • 安宅 信二(国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター)
  • 門田 嘉久(大阪府立呼吸器・アレルギーセンター・)
  • 新谷 歩(国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科)
  • 齋藤 充弘(大阪大学医学部附属病院)
  • 李 千萬(大阪大学医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
153,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
化学療法抵抗性になった癌に対する有効性を実証するため、化学療法抵抗性MPMに対する医師主導治験(第I相)を実施し、オーファン申請後に第II相治験で国内承認を取得する。
研究方法
1. 医師主導治験の準備と実施
阪大病院で実施したHVJ-Eの医師主導臨床研究の解析結果や、現在実施中の悪性黒色腫患者を対象とした治験の治験薬概要書等を基に、治験実施計画書を構築した。
2.毒性、薬効検証のための非臨床研究
1)薬効・薬理試験
ヒトMPM細胞としては、ACC-MESO-4、MSTO-H211, EHMES, ACC-MESO-1, H2052の細胞株を用いた。正常ヒト胸膜細胞株としてMet-5Aを用いた。HVJ-Eに対する感受性は、96well plateに1 wellあたり5000個の細胞を播き込み、HVJ-Eを種々の濃度で培養液中に投与し、24時間後の細胞生存をMTT法で測定した。マウス中皮腫モデル治療実験として、ヒト悪性胸膜中皮腫細胞株MSTO211HをCB-17/SCIDマウスの壁側胸膜内へ接種して作製したヒト悪性胸膜中皮腫担癌マウスに対し、接種後9日目にHVJ-Eの腫瘍内投与ならびに抗癌剤シスプラチンの投与を行った。また、その7日後よりHVJ-Eの皮下投与を2週毎に行い、マウスの生存率を検討した。
動物実験についてはすでに大阪大学医学系研究科での審査を受けており、その安全委員会の指針に従って施行された。
2)安全性試験
HVJ-EのMPM腫瘍内への投与の安全性を検討するために、ポリアクリルアミド・ゲルへのEvans Blue色素を注入し、腫瘍内注入擬似実験を行った。
3.治験薬GMP製造
攪拌工程と精製工程のスケールアップ検討を開始し、攪拌用のバックと精製用カラムについて、IQ:Installation Qualification (据付時適格性確認)、及びOQ:Operational Qualification (稼働性能適格性確認)までを実施した。
結果と考察
1.医師主導治験の準備と実施
平成26年11月8日に全員が参加してキックオフ会議を開催し、医師主導治験を着実に推進するための業務分担と、スケジュールも含めた目標設定の共通認識を確立し、規制当局対応も含めて治験がスムースに進むような強固な実施体制を構築した。本研究の目標は、現時点ではMTD(maximum tolerated dose)を決定することではなく、安全性を主要評価項目とし、至適用量を選び、副次項目として有効性の評価を行う方法を選択することとした。
また医師主導治験体制を構築し、現状で医師主導治験の準備に必要なSOP5つを整備し、治験実施計画書案、治験薬概要書案を作成した。
2.毒性、薬効検証のための非臨床試験
1)薬効・薬理試験:HVJ-Eを各MPM細胞に作用させ、生存率をMTS assayにより測定した。どのヒトMPM細胞も細胞死が誘導され、生存率の低下がひきこされた。また正常のMet-5Aは受容体があるにもかかわらず、細胞死誘導は起こらなかった。MPM担癌マウスへの治療実験においてHVJ-EはMPMに対し高い抗腫瘍効果を示した(平均生存日数39.5日 vs コントロール群27日)。さらに、シスプラチン(5 mg/kg)単回投与にHVJ-E治療を上乗せした治療群では、シスプラチン単回投与群よりも有意な生存期間の延長を認め、HVJ-Eとシスプラチンとの併用による相乗効果を認めた(平均57日以上vs 42.6日)。化学療法抵抗性のMPMに対して治療効果を期待できると考えられる。

2)安全性試験:空気圧式製剤注入器を用い、Evans Blue色素を20~30%ポリアクリルアミド・ゲルへ注入すると、ゲルの硬度が触診上で硬い場合でも(硬度計表示上4~5)、0.5~1 mLの色素を刺入部から逆流することなく、注入することが出来た。HVJ-Eは少なくとも10000 mNAU(臨床研究で用いられた最大量)は投与可能と考えられる。
3.治験薬GMP製造
攪拌工程については、樹脂性のバックに目的の溶液を充填して攪拌した際の温度分布と均一性を、精製工程については精製用樹脂を充填したカラムの理論段数を、それぞれ指標としてIQ:Installation Qualification 、及びOQ:Operational Qualification を実施した結果、いずれの指標についても目標とする規定値の範囲内である事が明らかとなり、スケールアップの妥当性が検証された。
結論
スケジュール通りに研究が進んでいる。HVJ-EはMPMの治療剤として有効であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-15
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438129C

収支報告書

文献番号
201438129Z