大腸がん超高危険度群におけるがんリスク低減手法の最適化に関する研究

文献情報

文献番号
201438096A
報告書区分
総括
研究課題名
大腸がん超高危険度群におけるがんリスク低減手法の最適化に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
武藤 倫弘(独立行政法人 国立がん研究センター 研究所 がん予防研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 秀樹(京都府立医科大学 分子標的癌予防医学)
  • 鈴木 貞夫(名古屋市立大学大学院 公衆衛生学)
  • 中島 健(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科)
  • 高山 哲治(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部 消化器内科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,769,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大腸がん超高危険度群であり、散発性大腸発がん過程を再現する家族性大腸腺腫症(FAP)患者における内視鏡的治療法の確立(FAP患者における手術の回避やQOLの改善が可能となる)、及び、がん化学予防剤による大腸がんの発生防御の実現を目指す。そのため、FAP患者に対する内視鏡的ポリープ摘除の有用性と安全性に関するエビデンスの構築、またドラッグリポジショニングによる小~中規模のがん予防臨床試験のプロトコルひな形作成やその実施、更には大規模臨床試験に向けたエビデンスの構築及びロードマップ作成をすることを目的とする。
研究方法
大腸がん超高危険度群であり、散発性大腸発がん過程を再現する家族性大腸腺腫症(FAP)患者における内視鏡的治療法の確立(FAP患者における手術の回避やQOLの改善が可能となる)、及び、がん化学予防剤による大腸がんの発生防御の実現を目指す。そのため、FAP患者に対する内視鏡的ポリープ摘除の有用性と安全性に関するエビデンスの構築、またドラッグリポジショニングによる小~中規模のがん予防臨床試験のプロトコルひな形作成やその実施、更には大規模臨床試験に向けたエビデンスの構築及びロードマップ作成をすることを目的とする。
結果と考察
J-FAPP Study IIIにおいて217人がエントリーされた。さらにそのエントリー後に、アスピリン/5-aminosalicylic acid製剤といったがん化学予防剤候補物質を組み合わせる二重盲検無作為割付臨床試験(J-FAPP Study IV)を行う計画を立案した。本年度は、研究組織構築が完成し、その組織内でプロトコルの確認•承諾が得られた。また、研究推進に必須な周辺領域に関わる研究として、FAP患者における小腸腺腫及びがんの発生頻度を検討したところ、大腸外病変として小腸腺腫を高率に有することが明らかとなった。一部に高度異形腺腫も認められることから、発がんポテンシャルを有すると考えられた。
結論
アスピリンのような副作用の良く分かっている廉価な薬剤をドラッグ•リポジショニングによってがん化学予防薬として検証することは、厚生労働行政の政策形成に役立つものと考えられる。また、本試験を介したがん化学予防薬の開発により、内視鏡的大腸腺腫の摘除の頻度を軽減することができれば、FAPの治療法として内視鏡的大腸腺腫の摘除 (J-FAPP Study III) という手法の実用化も相乗的に進むと考えられる。最終的に本研究を遂行することにより、がん予防介入試験の基盤(組織およびプロトコルひな形)が整備されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201438096C

成果

専門的・学術的観点からの成果
家族性大腸腺腫症(FAP)患者における大腸がんの発生は、adenoma-carcinoma sequenceにより多段階発がん経路を取ると考えられている。良性の腺腫(adenoma)の段階で、内視鏡的/薬剤的介入を行い、大腸がんの発生を予防することが出来れば、FAPにおける大腸がん発生経路の解明の一助になることが出来る。また、本試験の遂行により、新たな学術的な領域(分子標的がん予防学)の確立に繋がることが期待される。
臨床的観点からの成果
内視鏡的徹底的摘除をFAP患者に実施する多施設単一介入試験(J-FAPP III)とがん化学予防剤の二重盲検無作為割付臨床試験(J-FAPP IV)を開始した。J-FAPP IIIは登録を終了し、現在、重篤な有害事象もなく順調に研究が進行している。また、J-FAPP IVは登録中である。期待される成果としては、FAP患者の大腸全摘手術を回避したり、時期を遅らせたりすることが出来、手術による下痢/腸閉塞/デスモイド発生などが予防されることによりQOLが改善される。
ガイドライン等の開発
今後、FAP患者に於ける、内視鏡的徹底的摘除によるがんの予防方法の確立、および既存薬のがん化学予防薬としての実用化(ドラッグリポジショニング)を目指し、ガイドライン作成に繋がるエビデンスを構築して行きたいと考えている。
その他行政的観点からの成果
内視鏡的に大きな腺腫を摘除したのち、小さな腺腫の増大を薬剤にて抑制することは、内視鏡による検査及び治療間隔をのばし、患者の負担及び人的な労力の低下に繋がるとともに、医療経済的な削減にも寄与すると考えられる。本試験で得られる成果は、行政的観点から有意義なものになることが期待される。これらの観点にて行政的な課題を、本年のサイエンスアゴラのキーノートセッションにて討論し、幾分かでも解決の目安を付けたい。
その他のインパクト
ドラッグ•リポジショニングによる小~中規模のがん予防臨床試験におけるプロトコルひな形作成や大規模臨床試験に向けたエビデンスの構築及びロードマップ作成が成されることにより、がん予防に関する臨床研究が促進されると同時に、国民が期待している先制医療の確立に関わる研究事業の実施が公知されることが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
23件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
21件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shimizu S, Ishigamori R, Fujii G, et al.
Involvement of NADPH oxidases in suppression of cyclooxygenase-2 promoter-dependent transcriptional activities by sesamol.
J Clin Biochem Nutr  (2015)
原著論文2
Takasu S, Fujii G, Takahashi M, et al.
Candesartan suppresses intestinal carcinogenesis partly through inhibition of plasminogen activator inhibitor-1 expression.
J Cancer Sci and Clin Res.  (2015)
原著論文3
Shimizu S, Fujii G, Takahashi M, et al.
Sesamol suppresses cyclooxygenase-2 transcriptional activity in colon cancer cells and modifies intestinal polyp development in ApcMin/+ mice.
J Clin Biochem Nutr.  (2014)
原著論文4
Komiya M, Fujii G, Takahashi M, et al.
Bi-directional regulation between adiponectin and plasminogen activator-inhibitor-1 in 3T3-L1 cells.
IN VIVO  (2014)
原著論文5
Hori M, Takahashi M, Hiraoka N, et al.
Pancreatic fatty infiltration serves as a risk factor for pancreatic cancer, independently of obesity and diabetes.
Clin Transl Gastroenterol.  (2014)
原著論文6
Ishikawa H, Mutoh M, Suzuki S, et al.
The preventive effects of low-dose enteric-coated aspirin tablets on the development of colorectal tumours in Asian patients: a randomised trial.
Gut  (2014)
原著論文7
Shimizu S, Miyamoto S, Fujii G, et al.
Suppression of intestinal carcinogenesis in Apc-mutant mice by limonin.
J Clin Biochem Nutr.  (2015)
原著論文8
Komiya M, Fujii G, Miyamoto S, et al.
Suppressive effects of the NADPH oxidase inhibitor apocynin on intestinal tumorigenesis in obese KK-Ay and Apc mutant Min mice.
Cancer Sci.  (2015)
原著論文9
Shiotani A, Ishikawa H, Mutoh M, et al.
Genetic polymorphisms in ADH1B and ALDH2 are associated with colorectal tumors in Japan.
J Cancer Therapy  (2015)

公開日・更新日

公開日
2015-09-14
更新日
2016-06-10

収支報告書

文献番号
201438096Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,999,000円
(2)補助金確定額
39,621,714円
差引額 [(1)-(2)]
377,286円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,879,027円
人件費・謝金 3,620,793円
旅費 588,950円
その他 16,302,944円
間接経費 9,230,000円
合計 39,621,714円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-08-04
更新日
-