強度変調照射法を用いた放射線治療の疾患別および治療法別の安全性の確立

文献情報

文献番号
201438031A
報告書区分
総括
研究課題名
強度変調照射法を用いた放射線治療の疾患別および治療法別の安全性の確立
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
橘 英伸(国立がん研究センター東病院臨床開発センター粒子線医学開発分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
放射線治療の根幹である治療装置の品質保証は重要であり、患者個々の治療計画を保証するツールとして独立計算システムがある。欧米では標準的に実施されている一方、日本では施設の判断に委ねられている。また、強度変調放射線治療など高精度な治療が独立計算システムに対応していない。そこで、本研究では、独立計算検証の有用性を海外の調査から明確にし、またコンベンショナル治療だけではなく、強度変調放射線治療も対応させた独立計算システムの許容値を多施設試験から評価した。
研究方法
1.独立計算の明確な意義を国外の調査から明確化する。
2.多施設試験前の独立計算のビームデータのチェックを行った。
3.多施設試験前の独立計算と治療計画装置の組み合わせによるクレデンシャリング(精度の確認)を行った。
4.従来の治療法について、部位毎の許容値の評価を行った。
5.従来の治療法について、ウェッジおよびOff-centerの処方点を利用した際の許容値を評価した。
6.独立計算検証プログラムの違いによる影響を評価した。
7.極小照射野を利用する脳定位放射線手術(Stereotactic Radiosurgery, SRS)および治療(Stereotactic Radiotherapy, SRT)について許容値の評価を行った。
8.小照射野を利用し、不均質補正の影響をふける肺がん体幹部定位放射線治療(Stereotactic Body Radiotherapy, SBRT)の許容値を評価した。
9.前立腺がんおよび頭頚部がんにおけるIMRTの許容値について評価した。
10.前立腺がんおよび頭頚部がんにおけるIMATの許容値について評価した。
結果と考察
1.独立計算の明確な意義の調査の結果、1)世界的に標準的に行われる検証である、2)治療装置の精度を保証するものではなく、治療自体の安全の保証を行うものである、3)コミッショニングでカバーできない部分を補った検証の実施を可能にする、4)治療の問題を特定、検出するものである、ということがわかった。
2.多施設試験前ビームデータチェックの結果、参加施設の独立計算検証システムの登録項目が一定の基準のデータであることを確認した。
3.クレデンシャリングを実施した結果、治療計画装置に依存する差が判明したが、多施設試験を実施するに際しては許容範囲であると判断した。
4.従来の治療法では多くの部位で5 %の許容値を利用可能であるが、線量計算アルゴリズムの違いが強く影響する部位(特に乳房、肺)では部位別の許容値設定が有効である。
5.従来の治療の方におけるウェッジを利用したOff-center処方は、ウェッジの軸外線量比を考慮することで他のプランと同様に5%の許容レベルが利用できるといえる。
6. 2つの独立計算システムを用いて比較した結果、独立計算ソフトウエアが用いる実効深の算出手法、また治療計画装置が算出する実効深の算出方法により計算結果への影響が見られた。
7. 脳定位Arc照射はConfidence limitは±2.5%であり、系統誤差2%含めると4.5%である. しかし、精度の高い散乱係数を採用することで、Confidence limitの減少は可能であるといえる。
8.肺SBRTにおいて国内の5施設の多施設試験から線量計算アルゴリズム別に許容値を評価した結果、Confidence limitの値は、AAA、PBC、ACでそれぞれ7.7±6.0 %、4.7±3.9 %、5.3±3.3 %であった。治療計画装置と独立検証ソフト間のアルゴリズムの相違を考慮し、系統誤差を含めた運用が必要である。
9. IMRTの独立計算の計算値と治療計画の計算値との差異±1SDは-2.1±1.9 %(前立腺)、-3.0±3.7 %(頭頸部)であった。S&S方式(1施設)とSW方式(6施設)の比較した結果、S&S方式とSW方式の間には有意差が認められた(p=0.000, p < 0.05)。
10. IMATの臨床プランの評価点線量と独立計算の計算値との誤差(平均値±1SD)は、前立腺、頭頸部でそれぞれ-0.8±2.4%、-1.3±3.8%であった。前立腺においては、系統誤差、標準偏差ともに小さい結果となったが、頭頸部では誤差がバラついた。照射野形状の取得法や評価点がMLC下に位置する際の計算方法を改善することで、IMAT独立線量計算検証の可能性が示された。
結論
本研究の結果は従来法ならびにIMRT、IMATでも5%程度の許容値を用いることが可能であることが示すことができた。また、治療法別、部位別に許容値を設定することが望ましいといえる。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438031C

収支報告書

文献番号
201438031Z