消化管がんに対する特異的蛍光内視鏡の開発とその臨床応用に向けた研究

文献情報

文献番号
201438024A
報告書区分
総括
研究課題名
消化管がんに対する特異的蛍光内視鏡の開発とその臨床応用に向けた研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 豊(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科)
研究分担者(所属機関)
  • 浦野 泰照(東京大学大学院 医学系研究所)
  • 尾野 雅哉(独立行政法人国立がん研究センター研究所 創薬・臨床研究分野・プロテオミクス)
  • 金光 幸秀(独立行政法人国立がん研究センター中央病院  大腸外科)
  • 山田 康秀(独立行政法人国立がん研究センター中央病院  消化管内科)
  • 光永 眞人(東京慈恵会医科大学付属病院 内科学講座 消化器・肝臓内科)
  • 関根 茂樹(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 病理科)
  • 松田 尚久(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科 )
  • 小田 一郎(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科 )
  • 阿部 清一郎(独立行政法人 国立がん研究センター 中央病院 内視鏡科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特異的蛍光内視鏡技術を用いた消化管癌の早期発見の臨床評価を行うこと、同時に微小転移の術中診断や特異的治療への応用の可能性を検討することを目的としている。
研究方法
1)早期がんに特異的な膜タンパク抗原の探索
2)新規『蛍光プローブ』の開発
3)GGTなどの蛍光観察による早期発見
4)ALA内服蛍光観察による早期発見
5)特異的蛍光内視鏡技術を用いた特異的治療
6)消化管がんの病理組織診断および共焦点レーザー顕微内視鏡画像との対比
7)特異的蛍光内視鏡技術を用いた微小転移の術中診断
結果と考察
結果
1)早期がんに特異的な膜タンパク抗原の探索;大腸生検材料から2DICALを用いて、正常粘膜、腺腫、癌で変動するタンパク質を同定することが可能であった。
2)新規『蛍光プローブ』の開発;大腸がんESDサンプルへ各種プローブを適用したところ、67%の検体でがん部位を特定することが可能であった。適切なアミノペプチダーゼ活性検出蛍光プローブの適用により、大腸・胃がんの新鮮ESD検体中に存在するがん部位を検出可能であることが明らかとなった。
3)GGTなどの蛍光観察による早期発見;内視鏡的に切除した大腸上皮性腫瘍30病変を対象とした。蛍光陽性は20例(67%)、陰性は10例(33%)であった。gGlu-HMRGの局所撒布により、大腸上皮性腫瘍に対する短時間で選択的な蛍光イメージングが可能であった。
4)ALA内服蛍光観察による早期発見;大腸上皮性腫瘍23症例27病変を対象とし、5-ALA(20mg/kg)を内服投与し,病変を研究用内視鏡,VLD-EXを使用して赤色蛍光の有無を検討した。赤色蛍光陽性率は81.5%、組織型別では,腺腫62.5%,M癌77.8%,SM癌100%であった。
5)特異的蛍光内視鏡技術を用いた特異的治療; nu/nuマウスにNCI-N87細胞およびMKN-45細胞を皮下移植し、腫瘍モデルを作製したところ腫瘍が生着した。50μgTra-IR700を静注したところ、HER2特異的なIR700の局在をin vivoイメージングシステムにて24時間後より確認可能であった。Tra-IR700静注24時間後にIR700集積腫瘍に対して近赤外光を照射すると、対照群に比して腫瘍体積の増大を抑制することが可能であり更にその効果は5-FUの併用投与により増強された。
6)消化管がんの病理組織診断および共焦点レーザー顕微内視鏡画像との対比; ex vivoでの蛍光観察を行う試料の選定とそのサンプルを用いた免疫染色の手順について検討した。
7)特異的蛍光内視鏡技術を用いた微小転移の術中診断; ALAを取り込んだ原発巣と転移リンパ節の検出方法について測定手技を確立した後に研究実施計画書を作成した。

考察
1)新規臨床材料の解析を進め、改良された解析システムと新規に導入されたシステムを用い、大腸がん診断用抗体蛍光プローブを作成可能な大腸がん特有のタンパク質を探索する。
2)今回得られた大腸がんESD検体でのGGTイメージング結果は、がん細胞の特徴を生きている状態で蛍光可視化に成功したためであると考えている。
3)プローブライブラリーを活用してGGT以外のより感度・特異度の高いターゲットの探索を行い、最適化されたプローブのヒトがんESD検体への適用を予定している。
4)転移巣における5-ALA蛍光イメージングと原発巣イメージングとの相関を検討し、原発巣の蛍光イメージングから転移予測が可能か評価し、術中イメージングの臨床試験を計画する。
5)がん特異的モノクローナル抗体にIR700を結合させた化合物と抗がん剤を併用した治療法によって、分子標的特異的な蛍光診断および蛍光分子イメージングをガイドとした光線治療の効果を増強させることが可能であった。
6)プローブ型共焦点レーザー顕微内視鏡検査所見と病理所見の比較により消化管腫瘍性病変の診断に有用な所見を探索する。
7)大腸癌において、リンパ節転移は強力な予後予測因子である。術中にALAによる蛍光内視鏡診断にてリンパ節転移が高い精度で診断可能となれば、将来的に郭清領域を縮小した低侵襲手術や郭清範囲を個別化した手術が可能となる。
結論
がん特異的膜蛋白を同定し、特異的蛍光プローブを開発している。特異的蛍光プローブの内視鏡治療検体を用いた解析、早期大腸癌患者に於けるALA分子イメージング解析の結果から診断困難な早期癌の蛍光分子イメージングの可能性が示されたことは大きな成果である。今後、新規の蛍光プローブの探索を継続するとともに、外科領域における微小転移診断にも臨床応用することで、リンパ節転移の郭清範囲など患者QOLに大きく寄与することが可能である。さらには、診断と同時に特異的蛍光内視鏡技術を用いた特異的内視鏡治療への期待も大きい。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438024C

収支報告書

文献番号
201438024Z