乳がん検診における超音波検査の有効性検証に関する研究

文献情報

文献番号
201438015A
報告書区分
総括
研究課題名
乳がん検診における超音波検査の有効性検証に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
大内 憲明(東北大学 医学系研究科外科病態学講座腫瘍外科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 東野 英利子(公益財団法人筑波メディカルセンターつくば総合健診センター)
  • 斎藤 博(国立がん研究センター・がん予防・検診研究センター・検診研究部 )
  • 山本 精一郎(国立がん研究センター・がん予防・検診センター・保健政策研究部)
  • 遠藤 登喜子(国立病院機構東名古屋病院 乳腺科)
  • 石田 孝宣(東北大学大学院医学系研究科腫瘍外科学分野)
  • 深尾 彰(山形大学)
  • 栗山 進一(東北大学・災害科学国際研究所・災害公衆衛生学分野)
  • 山口 拓洋(東北大学大学院医学系研究科医学統計学分野)
  • 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科・薬剤疫学分野)
  • 河合 賢朗(地方独立行政法人宮城県立病院機構宮城県立がんセンター(研究所)がん薬物療法研究部)
  • 鈴木 昭彦(東北大学大学院医学系研究科・乳癌画像診断学寄附講座)
  • 鄭 迎芳(テイ ゲイホウ)(東北大学大学院医学系研究科・乳癌画像診断学寄附講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【委託費】 革新的がん医療実用化研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
114,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 マンモグラフィは検診における死亡率低減効果が科学的に証明された唯一の乳がん検診法であり、我が国においても40歳以上の女性に対する検診方法として導入されている。しかし年齢階層別にその有効性を検証すると、50歳以上の女性では明らかな有効性が証明されているが、40歳代の検診に関してはその発見率の低さや、偽陽性率の高さなどから、有用性と不利益とのバランスを問題視する意見もあり、欧米と比較して40歳代の乳がん罹患率の高い我が国においては、早急な対応が必要である。マンモグラフィは乳腺濃度の高い乳房では相対的に診断精度が低下する。一方超音波検査は、高濃度乳房での乳がん検出精度が高いことから任意型乳がん検診を中心に試験的に行われてきた。40歳代で、マンモグラフィに超音波検査を併用することによって、乳がんの発見率が高くなることが報告されているが、超音波検査機器の仕様や検査方法、及び読影技術、診断基準は標準化されておらず、超音波検査を用いた検診の精度及び有効性も検証されていない。
 
研究方法
 本研究では、40歳代女性を対象とする乳がん検診の方法として、超音波による検診の標準化を図った上で、マンモグラフィに超音波検査を併用する(介入)群と併用しない(非介入)群との間でランダム化比較試験を行い、2群間で検診精度と有効性を検証することを目的とする。研究成果として評価するプライマリ・エンドポイントを感度・特異度及び発見率とし、セカンダリ・エンドポイントを追跡期間中の累積進行乳がん罹患率とする。なお、がん検診の有効性評価の最も重要な指標はがん死亡率であるが、乳がんの自然史を考えるに、有意な群間差を観察するには研究期間は短すぎるため、終了後も追跡できる体制を整備することが必要となる。
 本研究はわが国で未曾有と云える大規模臨床試験を実施し、科学的根拠を創出、世界へ発信すること、新たな研究インフラ(3次元超音波機器開発等)を整備することが特色である。わが国では死亡率低下を目標としたがん検診法開発の前向き臨床試験(RCT)は前例がなく独創的である。研究成果は国民に広く活用されるものであり、極めて重要である。
結果と考察
 超音波乳がん検診の標準化に関しては、乳房超音波検診に関する教育プログラムを策定し、全国的に講習会を実施した。医師1,814名、技師2,084名が受講を終了しており、超音波による乳がん検診の標準化・普及に向けて大きな成果が得られた。
 ランダム化比較試験は、平成19年度から症例の登録を開始し、平成19年度から22年度までに介入群、非介入群の合計で76,196名の登録を得た。その後平成23年度以降は指定研究として研究を継続しており、症例の検診結果、がん罹患の把握率は97.9%である。定期的にデータモニタリング・統計解析委員会を開催しており、平成25年12月31日をもって、初回検診のキーオープンとすることを決定した。
 平成26年度は、固定されたデータのクリーニングを進め、乳がん罹患に関するデータ収集を行い、初回検診の感度、特異度、がん発見率(プライマリ・エンドポイント)のデータ集計と論文作成を行った。これと並行して、セカンダリ・エンドポイント算出に向けて、検診発見・中間期がんの病理データの把握につとめ、検診方法別の累積進行乳がん比率の解析のための準備を進めている。
結論
 乳がんの自然史に鑑みると、真の検診の有効性を議論するためには、今後長期にわたる経過観察の体制が不可欠である。平成25年度から「乳がんと健康に関するアンケート」による自記式調査票調査を2年毎に行う体制を構築し、受診者の予後や乳がんイベント発生の把握につとめている。平成25年度は平成19年度21年度の対象者34,795名に送付しの約60%にあたる20,957名、平成26年度は平成20年度と22年度の対象者37,613名に10月下旬に送付し、平成27年2月5日現在で56%にあたる20,953名から返信を得ている。しかしながら、本RCT参加者は転出および婚姻関係の変更による個人情報の変更による宛先不明が約5,000名・6.6%に達することが明らかになった。付け加えて現時点で我が国のナショナルデータベースの活用は十分とはいえない。そのため、返信率の向上のみならず、参加者と直接コンタクトを取り、健康状況や最新の個人情報を把握することも、セカンダリ・エンドポイントの算出に必要不可欠である。平成27年度はさらに精緻なデータの把握に努める予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201438015C

収支報告書

文献番号
201438015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
148,600,000円
(2)補助金確定額
148,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,174,598円
人件費・謝金 12,980,354円
旅費 2,932,290円
その他 97,241,938円
間接経費 34,292,000円
合計 149,621,180円

備考

備考
自己負担1,021,180円

公開日・更新日

公開日
2017-09-04
更新日
-