文献情報
文献番号
201433008A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品・医療機器の実用化促進のための評価技術手法の戦略的開発
課題番号
-
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
斎藤 嘉朗(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
研究分担者(所属機関)
- 前川 京子(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部 )
- 小松 弘幸(株式会社シミックバイオリサーチセンター 研究本部)
- 上田 哲也(プレシジョン・システム・サイエンス株式会社 業務本部)
- 杉山 雄一(理化学研究所 社会知創成事業 イノベーション推進センター)
- 楠原 洋之(東京大学大学院薬学系研究科)
- 河原崎 正貴(株式会社マルハニチロホールディングス 中央研究所)
- 山田 雅巳(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
- 高木 久宜(日本エスエルシー株式会社)
- 松元 郷六(一般財団法人残留農薬研究所)
- 真田 尚和(科研製薬株式会社 総合研究所)
- 堀 妃佐子(サントリービジネスエキスパート株式会社 安全性科学センター)
- 中村 亮介(国立医薬品食品衛生研究所 医薬安全科学部)
- 森田 栄伸(島根大学医学部・皮膚科学講座)
- 内藤 幹彦(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子医薬部)
- 栗原 正明(国立医薬品食品衛生研究所 有機化学部)
- 奥平 桂一郎(徳島大学薬学部 製剤設計薬学)
- 西川 喜代孝(同志社大学 生命医科学部)
- 石田 誠一(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
- 最上 知子(国立医薬品食品衛生研究所 生化学部)
- 竹澤 俊明(独立行政法人農業生物資源研究所)
- 柿木 基治(エーザイ株式会社筑波研究所 薬物動態室)
- 青山 晋輔(積水メディカル株式会社 薬物動態研究所 試験研究部)
- 立野 知世(向谷 知世)(株式会社フェニックスバイオ 研究開発部)
- 田辺 宗平(興和株式会社 東京創薬研究所)
- 蓜島 由二(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
- 鄭 雄一(東京大学大学院工学系研究科、医学系研究科)
- 柚場 俊康(川澄化学工業株式会社)
- 坂口 圭介(テルモ株式会社 研究開発本部)
- 高柳 輝夫(公益財団法人ヒューマンサイエンス振興財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【委託費】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医薬品・医療機器における開発現場のニーズに基づいて、戦略的にテーマ設定された、非臨床段階における主として安全性に関する標準的評価法を、医薬品関係として5種、医療機器関係で2種、それぞれ新規開発し、本邦における医薬品・医療機器開発の効率化を行って、開発の幅広い底上げを図ると共に、試験系として広く実用化することを目的とする。
研究方法
全6テーマ毎に方法が異なるため、結果の欄に総合的に記載した。
結果と考察
以下にテーマ毎に記した。また公開で成果発表会を開催した。
1) 新規低分子安全性バイオマーカー探索における標準的評価法構築:非臨床試験段階で、医薬品候補化合物の安全性等を適切に評価しうるバイオマーカー(BM)は、医薬品開発の効率化をもたらす。内在性分子候補の探索・選定において、適格性に影響を及ぼす標準的BM評価法を構築する。モデル動物の血液を用いたメタボロミクス解析を行い、腎障害等の評価につながりうる複数のBM候補を見いだした。さらに絞り込む際には、多変量解析やクラスター解析が有用であり、また選定には、有意差の他、変動幅、再現性、背景としての個体差等が重要であると考えられた。
2)リスク評価のための信頼性の高いin vivo遺伝毒性評価スキームの確立:遺伝毒性試験の標準的組合せとして、Ames試験(in vitro)と、数種類のin vivo試験法から2つ以上を選択するオプションが、ICH S2(R1)に追加され、その標準的評価スキームの構築が求められている。特徴的な遺伝毒性物質を対象に、化合物のリスクを勘案した最適な試験法の組合せを確立する。2-ニトロアニソール等を対象に組合せ試験を実施した。結果を総合的に考察し、『未知化合物について実施する試験の組合せの第一選択は、エンドポイントと標的臓器が異なる、小核試験(末梢血もしくは骨髄)とTG試験(肝臓)が高い感度を示す』という仮説を得た。
3) 新規培養細胞株を用いたインフュージョン反応惹起性の評価法開発:インフュージョン(IF)反応を医薬品開発段階で予測する適切なin vitro試験系はない。その発症機序の一部はIgE依存的であり、食物中構造との交差反応が知られている。独自の試験法(EXiLE法)等と牛肉アレルギー患者血清中IgEを用い、セツキシマブ等による架橋に基づくIgE依存的なIF反応のin vitro予測系等を確立する。牛肉アレルギー患者血清中IgEがセツキシマブ重鎖のα-Galと結合することを示すと共に、EXiLE法の条件検討を行ない、IgEの結合性と架橋活性とは必ずしも一致しないことを示した。
4) 分子標的薬のオフターゲット効果の評価法開発:分子標的薬においても様々な副作用が認められるが、その一部は標的分子と異なる生体分子に作用するオフターゲット効果であるが、このうち発現レベル変化の評価法を確立する。SNIPER法によるプロテインノックダウンをモデル実験系として用い、網羅的プロテオーム解析より、ユビキチン化の網羅的解析が、感度良く選択的に解析できることが示された。また陽性対照用に、標的タンパク質の分解を誘導できる膜透過性複合ペプチドを開発した。さらに、オフターゲット効果機序を解明するための基盤技術を確立した。
5) 新規培養基材等を用いた肝代謝・動態等評価系の開発:肝臓での動態、代謝、毒性試験のための新たな肝細胞資源と培養基材等とを組み合わせ、よりヒト肝に近い培養環境での評価に汎用しうる肝細胞培養系の供給を目指す。コラーゲンビトリゲル薄膜チャンバーを用いた培養法は、肝代謝評価へ応用しうることが示唆された。また、ヒトキメラマウス由来肝細胞は、長期間にわたり肝機能を維持し、個体間差も保持していると考えられ、有用なヒト肝細胞源となり得ることが示された。またHDL産生トランスポーターABCA1の肝型発現誘導についても評価を行った。
6) プラスチック製医療機器の化学物質影響評価法2種の開発:溶血性試験は血液接触型医療機器に要求されるが、国際試験において、日本の方法は諸外国の公定法に比して感度的に劣ることが判明した。また、可塑剤の炎症誘導能を評価するin vitro試験法はない。感度及び操作性を向上させた簡易溶血性試験法と新たな炎症誘導能評価法の開発・普及を目指す。開発した簡易溶血性試験法は各公定法と同等以上の感度で各検体の溶血能を探知できると共に、新規血液バックの素材候補配合シートの溶血特性も評価可能であった。また、可塑剤の炎症誘導能はヒト細胞に対するIL-6産生誘導能を指標として評価できることを示した。
1) 新規低分子安全性バイオマーカー探索における標準的評価法構築:非臨床試験段階で、医薬品候補化合物の安全性等を適切に評価しうるバイオマーカー(BM)は、医薬品開発の効率化をもたらす。内在性分子候補の探索・選定において、適格性に影響を及ぼす標準的BM評価法を構築する。モデル動物の血液を用いたメタボロミクス解析を行い、腎障害等の評価につながりうる複数のBM候補を見いだした。さらに絞り込む際には、多変量解析やクラスター解析が有用であり、また選定には、有意差の他、変動幅、再現性、背景としての個体差等が重要であると考えられた。
2)リスク評価のための信頼性の高いin vivo遺伝毒性評価スキームの確立:遺伝毒性試験の標準的組合せとして、Ames試験(in vitro)と、数種類のin vivo試験法から2つ以上を選択するオプションが、ICH S2(R1)に追加され、その標準的評価スキームの構築が求められている。特徴的な遺伝毒性物質を対象に、化合物のリスクを勘案した最適な試験法の組合せを確立する。2-ニトロアニソール等を対象に組合せ試験を実施した。結果を総合的に考察し、『未知化合物について実施する試験の組合せの第一選択は、エンドポイントと標的臓器が異なる、小核試験(末梢血もしくは骨髄)とTG試験(肝臓)が高い感度を示す』という仮説を得た。
3) 新規培養細胞株を用いたインフュージョン反応惹起性の評価法開発:インフュージョン(IF)反応を医薬品開発段階で予測する適切なin vitro試験系はない。その発症機序の一部はIgE依存的であり、食物中構造との交差反応が知られている。独自の試験法(EXiLE法)等と牛肉アレルギー患者血清中IgEを用い、セツキシマブ等による架橋に基づくIgE依存的なIF反応のin vitro予測系等を確立する。牛肉アレルギー患者血清中IgEがセツキシマブ重鎖のα-Galと結合することを示すと共に、EXiLE法の条件検討を行ない、IgEの結合性と架橋活性とは必ずしも一致しないことを示した。
4) 分子標的薬のオフターゲット効果の評価法開発:分子標的薬においても様々な副作用が認められるが、その一部は標的分子と異なる生体分子に作用するオフターゲット効果であるが、このうち発現レベル変化の評価法を確立する。SNIPER法によるプロテインノックダウンをモデル実験系として用い、網羅的プロテオーム解析より、ユビキチン化の網羅的解析が、感度良く選択的に解析できることが示された。また陽性対照用に、標的タンパク質の分解を誘導できる膜透過性複合ペプチドを開発した。さらに、オフターゲット効果機序を解明するための基盤技術を確立した。
5) 新規培養基材等を用いた肝代謝・動態等評価系の開発:肝臓での動態、代謝、毒性試験のための新たな肝細胞資源と培養基材等とを組み合わせ、よりヒト肝に近い培養環境での評価に汎用しうる肝細胞培養系の供給を目指す。コラーゲンビトリゲル薄膜チャンバーを用いた培養法は、肝代謝評価へ応用しうることが示唆された。また、ヒトキメラマウス由来肝細胞は、長期間にわたり肝機能を維持し、個体間差も保持していると考えられ、有用なヒト肝細胞源となり得ることが示された。またHDL産生トランスポーターABCA1の肝型発現誘導についても評価を行った。
6) プラスチック製医療機器の化学物質影響評価法2種の開発:溶血性試験は血液接触型医療機器に要求されるが、国際試験において、日本の方法は諸外国の公定法に比して感度的に劣ることが判明した。また、可塑剤の炎症誘導能を評価するin vitro試験法はない。感度及び操作性を向上させた簡易溶血性試験法と新たな炎症誘導能評価法の開発・普及を目指す。開発した簡易溶血性試験法は各公定法と同等以上の感度で各検体の溶血能を探知できると共に、新規血液バックの素材候補配合シートの溶血特性も評価可能であった。また、可塑剤の炎症誘導能はヒト細胞に対するIL-6産生誘導能を指標として評価できることを示した。
結論
非臨床段階で重要な6種のテーマに関し、平成26年度は評価系の構築を主として行った。今後は評価系の検証を行い、さらに施設間差の検討等を行って標準的評価法として確立する。
公開日・更新日
公開日
2016-01-28
更新日
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