受精卵培養液中のフタル酸類の受精卵及び出生児に対する影響評価研究

文献情報

文献番号
201428022A
報告書区分
総括
研究課題名
受精卵培養液中のフタル酸類の受精卵及び出生児に対する影響評価研究
課題番号
H26-化学-指定-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
相崎 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 安彦 行人(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター毒性部 )
  • 種村 健太郎(東北大学大学院農学研究科 動物生殖科学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ヒト体外受精で用いられる培養液中から、正常妊娠の妊婦の血清中平均濃度の10倍以上のフタル酸類(DEHP及びMEHP)が検出されたが、同濃度域における暴露実験が充分に実施されておらず、また生物学的に予想されるエピゲノムや情動認知行動への影響などに関する科学的情報が不足しており、文献情報からは確実な安全性評価が行えないことが判明した。これを受け、体外受精操作中に用いる培養液中に混入したフタル酸類(DEHP及びMEHP)が、受精卵及び出生児に及ぼす影響の安全性評価に資する科学的情報を、マウスを用いた各種の実験により取得すると共に、それらの方法を基に初期胚の化学物質暴露に対する短期間且つ高感受性の安全性評価手法を開発する。
研究方法
本研究に於いては、一般的な病理学的検査に加え、高感度系として情動認知行動試験、フタル酸類が結合する核内受容体の存在が知られていることを踏まえたPercellomeトキシコゲノミクス技術による網羅的遺伝子発現解析やエピゲノム解析を行う。
マウス体外受精はヒト体外受精に準じて行い、受精卵が胚盤胞を形成するまで培養し、その間にDEHP, MEHPを暴露する。得られた胚盤胞は直接、遺伝子発現解析やDNAメチル化解析に供する(in vitro実験)ほか、偽妊娠雌マウスへの移植により個体を得るまで成長させる。産仔マウスは情動認知行動解析に供すると共に、その組織について遺伝子発現解析やDNAメチル化解析を実施する(in vivo実験)。
これと並行して、ヒトES細胞の代用として用いられるマウスES細胞と、ヒトES細胞と同様の発生ステージと考えられているマウスEpiS細胞(胚盤葉上層由来幹細胞)とを、DEHPやMEHPを含む化学物質に対する反応などについて分子機序レベルで比較検討する実験を行う。この結果により、発生ステージに差異があるヒトES細胞とマウスES細胞に、発生ステージを合わせたマウスEpiS細胞の知見を加えることで、安全性評価法の改良の一助とする。
結果と考察
本年度は基盤となる実験プロトコルの最適化を集中的に行い、サンプルや実験環境中に既に存在するDEHP、MEHPの高感度測定系を準備した上で、(i)マウス体外受精から胚盤胞までの培養条件の最適化、(ii)胚移植による個体の安定作出、(iii)微量サンプルからの高品質DNA、RNAの同時抽出法の最適化、(iv)微量サンプルの網羅的遺伝子発現のための定量プロトコル開発(Percellome法*の改良)、(v)微量サンプルのDNAメチル化解析を実現するPost-bisulfite adaptor-tagging(PBAT)法の導入と最適化、の研究を実施した。さらにコントロール実験として、交配時のフタル酸類飲水投与によるin vivo経胎盤初期胚暴露を実施し、その影響をマウスの情動認知行動解析(オープンフィールド試験、明暗往来試験、条件付け学習記憶試験)を含めて解析した。また暫定的な実験結果ながら、マウス未成熟卵母細胞の体外成熟培養(ヒト生殖補助医療で導入が始まっている卵子の体外成熟培養(IVM)を模した実験)の過程で、培養液へのMEHP添加(5μM)により、成熟率の低下と減数分裂時の紡錘体形成異常を検出した。
結論
本年度は、微量の混入化学物質による暴露影響を厳密に実施するためのブレイクスルー達成に加え、一部の暴露実験を開始した。引き続き、研究計画に則ったDEHP/MEHPの暴露実験を実施し、分子機序の解析に基づく安全性評価研究を行う。

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2016-02-01
更新日
-

収支報告書

文献番号
201428022Z