脆弱な個体をも対象とした、経皮・吸入曝露後のナノ・サブナノ素材の挙動解析とハザード情報集積(ナノリスク解析基盤の構築)

文献情報

文献番号
201428009A
報告書区分
総括
研究課題名
脆弱な個体をも対象とした、経皮・吸入曝露後のナノ・サブナノ素材の挙動解析とハザード情報集積(ナノリスク解析基盤の構築)
課題番号
H25-化学-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
堤 康央(大阪大学 大学院薬学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 八木 清仁(大阪大学 大学院薬学研究科)
  • 松田 敏夫(大阪大学 大学院薬学研究科)
  • 齋藤 滋(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 宮川 剛(藤田保健衛生大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門)
  • 桑形 麻樹子((財)食品薬品安全センター 秦野研究所毒性部病理学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
24,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、ナノ素材(ナノマテリアル[NM]:粒子径100 nm以下)に加え、蛋白質と同等サイズ領域のサブナノ素材(サブナノマテリアル[sNM]:1〜10 nm範囲)が開発・実用化され、我々は、NM・sNMの意図的・非意図的な経皮・吸入曝露をもはや避け得ない。一方で未だ、NM・sNMの安全性については、ハザード情報でさえ不十分であり、リスク解析に必須の曝露実態(動態[ADME]:吸収性、その後の分布、代謝、蓄積・排泄といった細胞内・体内挙動)情報に至っては皆無に等しい。この点で申請者らは、種々NM・sNMの物性・品質を解析すると共に、リスク解析基盤となる細胞内・体内動態と一般毒性・特殊毒性を定性・定量解析し、物性-動態-安全性の連関評価に資するナノ安全科学(Nano-Safety Science)研究を推進してきた。特に、NM・sNMが流産や胎仔発育不全など、発生毒性を呈し得ることを先駆けて明らかとしており、妊婦・胎児・乳幼児といった化学物質に対して脆弱な個体を対象として、個々の感受性や種々相互作用を考慮した安全性評価が必須であることを提示してきた。そこで当該申請研究では、申請者らの独自かつ唯一の知見を基盤として、化粧品・食品などに含有されているNM・sNM、中でも世界的に観ても手つかずのsNMに着眼し、脆弱な個体をも対象とした、経皮・吸入曝露後の挙動解析とハザード情報の集積を図り、ナノリスク解析基盤の構築を図った。
研究方法
サブナノ~ナノスケールで、かつ分散性に優れた非晶質ナノシリカ、サブナノ金やサブナノ銀などをメインサンプルとして用いた。
結果と考察
H26年度研究では、動態情報に関して、①静脈内・経口投与といった母体への投与経路の違いや、授乳期の違いにより、NM・sNMの母体血中から母乳への移行率が大きく異なり、曝露経路毎や曝露時期毎のハザード解析が必須であること、②乳幼仔の肝臓ではサブナノ銀が排泄されるものの、脳では排泄されにくく蓄積されるなど、NM・sNMの蓄積・代謝・排泄・分解を臓器毎に解析する必要性を明らかとした。さらに、ハザード情報に関しては、
③ナノ・サブナノシリカの急性毒性について、致死毒性や血小板数の減少、肝障害などは、サイズの減少に伴い作用が強くなる一方で、体温低下は、50 nmがピークとなるなど、粒子サイズの違いにより誘発される急性毒性が異なること、④ナノシリカの雄親曝露により、次世代の仔の不安様行動が低下するなど、認知異常が誘発される可能性を先駆けて見出し、母親のみならず父親曝露における次世代影響評価の必要性を提唱した。また、⑤OECDテストガイドラインに関して、ドライスキンといった皮膚構造の崩壊した場合における皮膚透過性を精査する必要性を見出した。
結論
「こどものナノ安全科学」や「こころのナノ安全科学」における新規知見を多く見出し、とりわけ、動物実験でNM・sNMの未知影響を追跡した点での貢献が極めて大であるなど、当初予定を上回った成果が得られている。本研究の成果は、未だ世界的に理解されていないNM・sNMのリスク情報を他に先行して集積する必須の取組と位置づけられる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201428009Z