がんワクチン等の品質及び有効性評価手法の検討に関するレギュラトリーサイエンス研究

文献情報

文献番号
201427042A
報告書区分
総括
研究課題名
がんワクチン等の品質及び有効性評価手法の検討に関するレギュラトリーサイエンス研究
課題番号
H25-医薬-指定-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 多田 稔(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腫瘍免疫を活性化することによるがんの新たな治療法(がんワクチン)が開発されようとしているが、臨床試験にはペプチドから細胞製品、さらには組換えウイルスなど非常に多様な製品が用いられている。がんワクチンによって引き起こされる免疫反応は細胞性免疫が主として機能すると考えられており、薬力学的マーカー(PD)としてがん抗原特異的細胞障害性T細胞やヘルパーT細胞の測定などいくつかの評価指標が提案され、かつ臨床試験でこれらのPDマーカーの消長が測定されている。その一方で、がんによる免疫抑制反応が腫瘍免疫を抑制することにより必ずしもこれらのPDマーカーが有効な指標とはならないとの報告もされており、PDマーカーと長期延命効果等の臨床的効果に明確な相関性が見出せていないのも事実である。抑制性T細胞や他のがん特有の免疫抑制が作用することにより、がんワクチンの有効性を減弱させているのであれば、免疫抑制の解除をどのように評価するかが今後の課題となる。
本研究では、当該ワクチンのがん免疫治療における品質、非臨床試験、臨床試験において考慮すべき事項について解析し、安全性や有効性の評価指標を明らかにすることを目指す。さらに得られた成果を基に、がん免疫治療薬のガイドライン作成に寄与することを目的とする。
研究方法
がんワクチンの臨床試験結果についての報告が相次いでおり、またこれらの臨床試験のレビューも出されていることから、がんワクチン開発における課題や臨床試験と免疫応答との関連などについて得られた情報について総説を含めて解析してみた。
各種文献情報等を参考に抗イディオタイプ抗体を有効成分とするがんワクチン開発の現状について調査した。がんワクチンの有効成分としての抗イディオタイプ抗体の品質管理手法について考察した。
結果と考察
がんワクチンの免疫応答としては、液性免疫を誘導することよりも主として細胞性免疫を誘導することを目指した検討が行われてきている。またがんワクチンについてこれまで、非常に多様な抗原を対象として臨床試験が実施されており、投与したがん抗原に対する免疫応答をどのように評価するかが重要なポイントとなってきている。しかし、目的とするがん抗原のみならず場合によってはがんワクチンを発現しているがん細胞が溶解することなどを通じてがん細胞が発現している他の抗原に対する免疫応答も起こりうることが示される場合がある。
抗原提示に関しては樹状細胞が重要な役割を果たしており、抗原特異的な樹状細胞の分化誘導や活性化ががん免疫において重要とされてきており、特にクロスプレゼンテーションが起こることにより高い免疫誘導が期待されるとしている。
がん細胞が発現する様々な免疫抑制因子ががんワクチンの効果を阻害している可能性が指摘されており、がんによる免疫抑制からの解除が重要とされている。特に抗免疫チェックポイント抗体による顕著な臨床効果が確認されたことからがんによる免疫抑制からの解除が非常に重要と考えられる。
がんワクチンの被験者の絞り込みをするための免疫応答性に基づいた患者分類の重要性が指摘されている。より応答性の高い患者を絞り込むための免疫応答の評価法も重要であり、遅延型アレルギー反応の評価もその一つとされている。
がんワクチンの有効成分として用いられる抗イディオタイプ抗体の品質管理の上では、ヒトでの免疫応答性を予測・評価可能な実験動物モデルを用いた評価系を活用し、Fc領域を介した作用や凝集体の影響等を含めた、品質特性と有効性の関連について十分な検討が必要であると考えられた。
結論
がんワクチンの品質管理においては組換えタンパク質を有効成分とする従来のバイオ医薬品の品質管理の考え方が参考に出来る一方で、がんワクチンに固有の特性を踏まえた品質管理手法の構築が重要であると考えられる。抗イディオタイプ抗体を有効成分とするがんワクチンの現状について調査するとともに、従来の抗体医薬品との比較を踏まえて、抗イディオタイプ抗体の品質管理を考える上で重要となる事項について考察した。
がんワクチンの臨床試験や免疫応答性についての最新の論文や総説からいくつかの課題が浮かび上がってきている。免疫応答性をより最適化するための方法の重要性やがんによる免疫抑制からの解除の重要性が明らかになりつつある。
また抗免疫チェックポイント抗体を用いた臨床試験成績から免疫抑制の解除の重要性のみならず、がんワクチンの投与方法や製剤化の重要性が指摘されつつある。さらに、がんワクチンに応答性ある患者と相違でない患者の絞り込みが、今度重要となってくる可能性が指摘された。
これらの要素を追記してがんワクチンガイドラインの最終案を提示した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201427042B
報告書区分
総合
研究課題名
がんワクチン等の品質及び有効性評価手法の検討に関するレギュラトリーサイエンス研究
課題番号
H25-医薬-指定-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
山口 照英(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部)
研究分担者(所属機関)
  • 多田 稔(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
腫瘍免疫を活性化することによるがんの新たな治療法(がんワクチン)が開発されようとしているが、臨床試験にはペプチドから細胞製品、さらには組換えウイルスなど非常に多様な製品が用いられている。がんワクチンによって引き起こされる免疫反応は細胞性免疫が主として機能すると考えられており、薬力学的マーカー(PD)としてがん抗原特異的細胞障害性T細胞やヘルパーT細胞の測定などいくつかの評価指標が提案され、かつ臨床試験でこれらのPDマーカーの消長が測定されている。その一方で、がんによる免疫抑制反応が腫瘍免疫を抑制することにより必ずしもこれらのPDマーカーが有効な指標とはならないとの報告もされており、PDマーカーと長期延命効果等の臨床的効果に明確な相関性が見出せていないのも事実である。抑制性T細胞や他のがん特有の免疫抑制が作用することにより、がんワクチンの有効性を減弱させているのであれば、免疫抑制の解除をどのように評価するかが今後の課題となる。
本研究では、当該ワクチンのがん免疫治療における品質、非臨床試験、臨床試験において考慮すべき事項について解析し、安全性や有効性の評価指標を明らかにすることを目指す。さらに得られた成果を基に、がん免疫治療薬のガイドライン作成に寄与することを目的とする。
研究方法
がんワクチンの臨床試験結果についての報告が相次いでおり、またこれらの臨床試験のレビューも出されていることから、がんワクチン開発における課題や臨床試験と免疫応答との関連などについて得られた情報について総説を含めて解析してみた。
がんワクチンに用いれているペプチド・タンパク質の品質評価に関する要件について調査検討を行った。各種文献情報等を参考に抗イディオタイプ抗体を有効成分とするがんワクチン開発の現状について調査し、抗イディオタイプ抗体の品質管理手法について考察した。
結果と考察
がんワクチンの免疫応答としては、液性免疫を誘導することよりも主として細胞性免疫を誘導することを目指した検討が行われてきている。またがんワクチンについてこれまで、非常に多様な抗原を対象として臨床試験が実施されており、投与したがん抗原に対する免疫応答をどのように評価するかが重要なポイントとなってきている。
抗原提示に関しては樹状細胞が重要な役割を果たしており、抗原特異的な樹状細胞の分化誘導や活性化ががん免疫において重要とされてきており、特にクロスプレゼンテーションが起こることにより高い免疫誘導が期待されるとしている。
がん細胞が発現する様々な免疫抑制因子ががんワクチンの効果を阻害している可能性が指摘されており、がんによる免疫抑制からの解除が重要とされている。特に抗免疫チェックポイント抗体による顕著な臨床効果が確認されたことからがんによる免疫抑制からの解除が非常に重要と考えられる。
がんワクチンの被験者の絞り込みをするための免疫応答性に基づいた患者分類の重要性が指摘されている。より応答性の高い患者を絞り込むための免疫応答の評価法も重要であり、遅延型アレルギー反応の評価もその一つとされている。
がんワクチンに用いられているペプチド・タンパク質製品の特性解析や品質管理についてはICH Q5Bに準じて行う必要があると考えられる。がんワクチンの有効成分として用いられる抗イディオタイプ抗体の品質管理の上では、ヒトでの免疫応答性を予測・評価可能な実験動物モデルを用いた評価系を活用し、Fc領域を介した作用や凝集体の影響等を含めた、品質特性と有効性の関連について十分な検討が必要であると考えられた。
結論
がんワクチンの品質管理においては組換えタンパク質を有効成分とする従来のバイオ医薬品の品質管理の考え方が参考に出来る一方で、がんワクチンに固有の特性を踏まえた品質管理手法の構築が重要であると考えられる。抗イディオタイプ抗体を有効成分とするがんワクチンの現状について調査するとともに、従来の抗体医薬品との比較を踏まえて、抗イディオタイプ抗体の品質管理を考える上で重要となる事項について考察した。
がんワクチンの臨床試験や免疫応答性についての最新の論文や総説からいくつかの課題が浮かび上がってきている。免疫応答性をより最適化するための方法の重要性やがんによる免疫抑制からの解除の重要性が明らかになりつつある。
また抗免疫チェックポイント抗体を用いた臨床試験成績から免疫抑制の解除の重要性のみならず、がんワクチンの投与方法や製剤化の重要性が指摘されつつある。さらに、がんワクチンに応答性ある患者と相違でない患者の絞り込みが、今度重要となってくる可能性が指摘された。
これらの要素を追記してがんワクチンガイドラインの最終案を提示した。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201427042C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究はがんワクチン開発において求められるデータについてレギュラトリーサイエンス的観点からとりくんだものである。純粋な学術的成果よりも評価手法のまだ定まっていない免疫評価技術などついての考え方を示すことに重点が置かれた。
臨床的観点からの成果
本研究ではがんワクチンの臨床開発初期における考慮事項を中心のガイドラインの素案をまとめることとした。すなわちがんワクチンは従来の細胞傷害性のある抗ガン剤とことなり、患者の免疫能を活性化して抗腫瘍効果を発揮すると考えられていることからその臨床効果が発揮されるまで一定の時間が必要とされ、患者の免疫応答性の評価などの特殊性についてまとめることができた。
ガイドライン等の開発
本研究ではガイドライン作成が大き目的であり、最終案ではがんワクチンの臨床開発初期における考慮事項についてまとめることができた。
その他行政的観点からの成果
審議会等で取り上げるまでにはいたっていないが、この考え方についてはPMDAにおけるがんワクチン等の開発についての対面助言等に利用されている。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
5件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201427042Z