医薬品の微生物学的品質確保のための高度試験法導入に関する研究

文献情報

文献番号
201427027A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品の微生物学的品質確保のための高度試験法導入に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-022
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
棚元 憲一(武蔵野大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山口  進康(大阪大学大学院 薬学研究科)
  • 片山  博仁(バイエル薬品株式会社 プロダクトサプライジャパン本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方には医薬品の微生物学的品質確保のためいくつかの微生物試験法が規定されているが、これらの試験法は随時科学の進歩、国際的な変化に歩調を合わせて改善もしくは新規試験法の導入を図らなければならない。そのような観点から本研究では、①遺伝子組換え体を用いた新規エンドトキシン測定用試薬の開発、②細菌数迅速測定法のバリデーションにかかる基盤データの構築、③無菌医薬品品質確保のための製造と管理の技術に関する研究、の3研究を行うことを目的とした。
研究方法
①では、開発品につき、各種エンドトキシン及び類縁物質との反応性を既存リムルス試薬と比較検討し、さらに薬局方収載注射剤、生物学的製剤、医療機器に対する適用性を標準エンドトキシンの添加回収率を指標に評価した。②では、日本薬局方微生物関連試験(微生物限度試験および無菌試験)に用いる溶解剤や中和剤が難染色性の緑膿菌の蛍光染色に与える影響を検討した。③では無菌医薬品の品質を確保するための消毒剤の有効性を評価する方法として「硬質表面キャリアー法」が実用可能であることを確認することを目的に、実施する基礎実験で使用する回収液の組成を検討した。
結果と考察
本年度は組換えエンドトキシン比色試薬を分析法バリデーションに従い、既存エンドトキシン測定試薬との間での同等性を評価し、組換え試薬が薬局方エンドトキシン試験法に適用可能であることを確認した。また、非無菌医薬品の微生物管理における生菌数迅速測定プロトコールの作成のために、代表的な非無菌製剤原料(水溶性基剤、油脂製基剤、乳剤性基剤)への細菌数迅速測定法の適用を検討した。また、検討を行った各前処理条件を用いて、非無菌製剤原料の生菌数を蛍光活性染色法により測定し、従来の培養法により得られた生菌数と比較することにより、蛍光活性染色法の有用性を確認した。さらに、製薬関連企業15社における共同実験により、「硬質表面キャリアー法」が消毒剤の有効性を的確に評価する方法として実用可能な方法であることが確認し、日本薬局方参考情報「微生物殺滅法」の改訂案を作成した。
結論
組換え試薬の各種Et のUSPRSEに対する相対活性はライセート試薬のそれと良く相関した。また、第十六改正日本薬局方の医薬品各条にEt規格値が記載される医薬品は組換え試薬で全て測定が可能であった。よって組換え技術を用いて作製された原料から調製された組換え試薬は、カブトガニ由来の原料から調製されたライセート試薬と同様、薬局方のエンドトキシン試験に使用可能である。
今回の研究では、非無菌医薬品の微生物管理における生菌数迅速測定プロトコールの作成のために、代表的な非無菌製剤原料(水溶性基剤、油脂製基剤、乳剤性基剤)への細菌数迅速測定法の適用を検討し、プロトコールを作成した。また、検討を行った各前処理条件を用いて、非無菌製剤原料の生菌数を蛍光活性染色法により測定し、従来の培養法により得られた生菌数と比較することにより、蛍光活性染色法の有用性を確認した。
本研究で得られた蛍光活性染色による各種非無菌製剤原料中の生菌数測定法を、今後、様々な医薬品原料や原薬、医薬品添加物、製剤に対して行うことにより、医薬品に対する迅速かつ高精度な生菌数測定が可能になり、ヨーロッパ薬局方、米国薬局方に対して、日本からの新たな微生物試験法に関する情報発信を行うことが可能になるものと考えられる。
日本薬局方 参考情報 「微生物殺滅法」の改訂案に消毒剤の有効性を評価する方法として掲載される予定の「硬質表面キャリアー法」が実用可能であることを確認するために製薬関連企業15社にて共同実験を実施した。その結果、「硬質表面キャリアー法」は実用可能な方法であることが確認できた。また本書において、実施時における懸念事項も紹介し,注意点も含めた対応策を明確にしたことで、更に各社における実施を容易にする材料となることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-01
更新日
-

文献情報

文献番号
201427027B
報告書区分
総合
研究課題名
医薬品の微生物学的品質確保のための高度試験法導入に関する研究
課題番号
H24-医薬-指定-022
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
棚元 憲一(武蔵野大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山口  進康(大阪大学大学院 薬学研究科)
  • 片山  博仁(バイエル薬品株式会社 プロダクトサプライジャパン本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本薬局方には医薬品の微生物学的品質確保のためいくつかの微生物試験法が規定されているが、これらの試験法は随時科学の進歩、国際的な変化に歩調を合わせて改善もしくは新規試験法の導入を図らなければならない。そのような観点から本研究では、①遺伝子組換え体を用いた新規エンドトキシン測定用試薬の開発、②細菌数迅速測定法のバリデーションにかかる基盤データの構築、③無菌医薬品品質確保のための製造と管理の技術に関する研究、の3研究を行うことを目的とした。
研究方法
①では、遺伝子組換えにより作成したエンドトキシン活性化経路3因子のカスケード反応を用いた高感度・高精度なエンドトキシン測定試薬の開発を行う。②では、まず種々の試料につき培養法と新手法で微生物数を比較し、培養法でのバリデーション条件(菌種、添加量等)をもとに、新手法のバリデーション法を考察するための基盤的データを得る。③では、日本PDA製薬学会無菌製品GMP委員会において医薬品製造工場の情報収集、海外の製造所情報、海外のレギュレーション情報を収集し、分析した結果をもとに、日局参考情報の改定案を作成する。
結果と考察
エンドトキシン測定用ライセート試薬のカスケード反応に関与する3種類の酵素因子を遺伝子組換え技術を利用して作製し、これが日本薬局方収載の分析法バリデーションで求められる全ての分析能パラメータで判定基準に適合することを検証した。また、組換え試薬が、第十六改正日本薬局方の医薬品各条にエンドトキシン規格値が記載され、かつ入手できた注射剤中に添加したエンドトキシンを試料の最大有効希釈倍数以内で測定が可能であることを明らかにした。さらに米国薬局方エンドトキシン標準品とその他13種のエンドトキシンの活性が、組換え試薬とライセート試薬とで良好な相関を示すことを明らかにし、組換え試薬が薬局方エンドトキシン試験法に適用可能であることを確認した。
非無菌医薬品の微生物管理における生菌数迅速測定プロトコールの作成のために、代表的な非無菌製剤原料への細菌数迅速測定法の適用を検討し、前処理条件を決定した。さらに、検討を行った各前処理条件を用いて、非無菌製剤原料の生菌数を蛍光活性染色法により測定し、従来の培養法により得られた生菌数と比較することにより、非無菌医薬品の微生物管理における蛍光活性染色法の有用性を確認した。
日局参考情報の「無菌医薬品製造管理区域の環境モニタリング」と「滅菌および滅菌指標体」について、無菌医薬品の製造と管理の技術に関する最新の情報およびPIC/Sとの整合性もよく考慮し、意見公募を経て、これら改定案を作成し、日局第16改正案に反映された。また、製薬関連企業15社における共同実験により、「硬質表面キャリアー法」が消毒剤の有効性を的確に評価する方法として実用可能な方法であることが確認し、日本薬局方参考情報「微生物殺滅法」の改訂案を作成した。
結論
組換え因子を使いEt定量反応の再構成に成功し、組換え試薬を作製した。組換え試薬は、分析法バリデーションに記載の全ての分析能パラメータにおいて判定基準に適合したことから、Etの測定に必要な基本性能を有していることが検証できた。また、組換え試薬は第十六改正日本薬局方の医薬品各条にEt規格値が記載され、入手可能であった注射剤全ての測定が可能であった。さらに、組換え試薬の各種Et のUSPRSEに対する相対活性はライセート試薬のそれと良く相関した。これらのことから組換え試薬はライセート試薬と同等の性能を有しており、組換え技術を用いて作製した原料で調製した組換え試薬はカブトガニ由来の原料から調製されたライセート試薬と同様、日本薬局方のエンドトキシン試験に使用可能であると言える。
非無菌医薬品の微生物管理における生菌数迅速測定プロトコールの作成のために、代表的な非無菌製剤原料への細菌数迅速測定法の適用を検討し、プロトコールを作成した。また、検討を行った各前処理条件を用いて、非無菌製剤原料の生菌数を蛍光活性染色法により測定し、従来の培養法により得られた生菌数と比較することにより、蛍光活性染色法の有用性を確認した。
国内の無菌医薬品製造において必要な情報の再整理を、最新の情報を取り入れ、PIC/Sとの整合性もよく考慮して2編の参考情報の改定案を作成した。
日本薬局方 参考情報 「微生物殺滅法」の改訂案に消毒剤の有効性を評価する方法として掲載される予定の「硬質表面キャリアー法」が実用可能であることを確認するために製薬関連企業15社にて共同実験を実施し、「硬質表面キャリアー法」は実用可能な方法であることが確認できた。また本書において、実施時における懸念事項も紹介し,注意点も含めた対応策を明確にしたことで、更に各社における実施を容易にする材料となることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-24
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201427027C

収支報告書

文献番号
201427027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,800,000円
(2)補助金確定額
2,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,750,014円
人件費・謝金 0円
旅費 31,260円
その他 18,726円
間接経費 0円
合計 2,800,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-06-24
更新日
-