乳幼児用食品におけるカビ毒汚染のリスク評価に関する研究

文献情報

文献番号
201426051A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児用食品におけるカビ毒汚染のリスク評価に関する研究
課題番号
H26-食品-若手-010
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
吉成 知也(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第四室)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、国内に流通する乳児用食品中に含まれるカビ毒について、「1.一斉同時定量分析法の開発」及び「2.汚染実態の調査」の2項目を実施する。カビ毒について、我が国では2014年現在、全食品中のアフラトキシンに10ug/kg、小麦玄麦中のデオキシニバレノール(DON)に1.1mg/kg、リンゴ果汁中のパツリンに50ug/kgといった規制値又は基準値が定められている。一方、近年の世界的な動向としては食品の種類や摂取対象を勘案し、食品ごとに個別の規制値を設定する動きが活発となっている。特に乳幼児用食品については、体重による影響を勘案し、厳しい規制値が設定される傾向にある。例えば、EUにおけるDONの最大基準値は、トウモロコシでは1750ug/kgであるのに対し、乳幼児用穀類加工品では200ug/kgと約1/10に設定されている。また、2013年6月には米国において、カビ毒HT-2トキシンが混入した乳児用シリアル製品により被害が生じたことが報告された。このような国際的な動向や被害実態を踏まえ、我が国においても乳児用食品に含まれるカビ毒について別枠の基準値設定の必要性についての議論が求められている。上述した本研究の実施事項1.と2.は、基準値の必要性の有無を判断するために必須の科学的根拠を得る目的で実施される。
研究方法
本研究課題は、平成26年~27年度の2年間にわたって、①「乳幼児用食品を対象としたカビ毒一斉同時分析法の開発」、②「①の方法を用いたカビ毒汚染実態調査」の2項目の達成を目標とする。乳幼児食品には、米を原料とした離乳食、小麦を原料としたせんべい、スナック菓子、飲料、さらにコーンを原料としたスープなど、多様な種類のものが市販されている。それら一種類ごとに一斉同時分析法を開発することは困難であるため、第一段階としてカビ毒の混入が認められる乳幼児用食品のスクリーニングを26年度に行う。原料を参考に乳児用食品を6種のカテゴリー(米菓子、小麦菓子、コーン菓子、コーンスープ、飲料、レトルト食品)に分け、それぞれのカテゴリーに属する食品中のカビ毒を分析し、どのカテゴリーに属する食品がカビ毒の汚染を受けているのか調べる。汚染が認められたカテゴリーの食品について、27年度にカビ毒一斉同時分析法の開発を行う。実態調査については、2年にわたって計120検体の調査を行う。
結果と考察
食品を汚染することが報告されているカビ毒12種について、乳幼児用食品における汚染実態の調査を
行った。それぞれのカビ毒について、イムノアフィニティーカラムを用いて精製し、LC-MS/MSを用
いて定量する分析法を開発し、添加回収試験を行うことによって妥当性を検証した。開発した分析法
を用いて、乳幼児用食品計90検体(米菓子11件、小麦菓子30件、コーン菓子13件、コーンスープ12件、飲料9件、レトルト食品15件)について、12種類のカビ毒を定量した。アフラトキシン類4種については、コーン加工品2検体からB1が微量であるが検出された。オクラトキシンAについては、いずれの検体においても検出されなかった。フモニシンB類3種については、コーンスープとコーン菓子といったコーンを原料とした製品において検出率が50%を超え、他の製品では検出されなかった。DONについては、飲料以外の5種のカテゴリーの食品で検出され、特にコーン菓子では検出率が70%を超えた。T-2トキシンとHT-2トキシンについては、コーン菓子において検出率が40%を上回った。ゼアラレノンはコーンスープとコーン菓子で30%の検出率であったが、汚染濃度は低かった。以上の結果より、乳幼児用食品を汚染する主要なカビ毒はフザリウム菌由来のフモニシンとトリコテセン系カビ毒であり、またコーンと小麦を原料とする食品において検出頻度・濃度が高い傾向にあることが明らかになった。
結論
計90検体の乳幼児用食品について12種のカビ毒の汚染実態を調査した。その結果、主にコーン加工品において、フモニシン類やトリコテセン類といったフザリウム属真菌により生産されるカビ毒汚染が生じている実態が明らかとなった。EUにおいて乳幼児用食品中のカビ毒に対して設定されている規制値を上回る検体は認められなかったものの、規制値に近い濃度のフモニシンやDONの共汚染が生じている検体があり、毒性の相乗作用により未知の健康被害を引き起こす懸念が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-07-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201426051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,500,000円
(2)補助金確定額
2,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,935,540円
人件費・謝金 0円
旅費 166,342円
その他 398,118円
間接経費 0円
合計 2,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-07-23
更新日
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