フグ等の安全性確保に関する総括的研究

文献情報

文献番号
201426026A
報告書区分
総括
研究課題名
フグ等の安全性確保に関する総括的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-食品-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
長島 裕二(東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 修(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
  • 佐藤 繁(北里大学海洋生命科学部)
  • 大城 直雅(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 松浦 啓一(国立科学博物館)
  • 石崎 松一郎(東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
6,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フグ食中毒の発生件数と患者数は食中毒全体の2%以下だが、死者数は全体の1/3を占め、致死率が高い危険な食中毒である。フグ食中毒防止のため、わが国では厚生労働省通知で食用可能なフグの種類、部位、漁獲地域を定め、都道府県条例等でフグ取り扱いの場所と人を制限してフグの安全性確保を担保している。しかしながら、これまでの報告を上回る毒力が散見され、麻痺性貝毒(PSP)やパリトキシン様毒によるフグ食中毒や巻貝によるフグ毒中毒も発生し、フグ食中毒およびフグ毒中毒は複雑化しており、フグ等の安全性確保における新たな問題点となっている。その上、南方産フグの出現や自然交雑フグが各地で確認されるようになり、正確なフグの判別がますます困難になっている。そこで本研究では、フグ等の安全性確保のため、1)フグの毒性に関する調査研究と2)フグの分類に関する研究を実施した。
研究方法
1)フグの毒性に関する調査研究では、高い毒性が報告されている東北地方と、熱帯・亜熱帯海域フグが出現する九州・沖縄地方のフグ類と、交雑種フグについて毒性を調べた。フグ食中毒事例の調査では、厚生労働科学研究費補助金 食品の安全確保推進研究事業「食品中の自然毒のリスク管理に関する研究」の成果として得られた、昭和35年~平成22年に発生した食中毒事件例のリストを基に、自治体別の食中毒事件一覧表を作成し、全国の地方衛生研究所にフグの毒性に関する調査研究の実施状況等についての調査票を送付し、回答された調査票に基づきデータを集計し分析した。2)フグの分類に関する研究では、日本産フグ類標本(約300個体)を調査するとともに、フィールド調査も行い、形態学的調査を行った。遺伝子解析では、今年度は、人工交配フグ種(トラフグ(♀)×マフグ(♂)およびトラフグ(♂)×マフグ(♀))各3個体を入手し、筋肉から全ゲノムDNAを抽出、精製した。これら全ゲノムDNAを用いて、ミトコンドリアDNA中の16S rRNAおよびシトクロームb領域の塩基配列から母系種の同定を行った後、マイクロサテライト領域を含むプライマーを設計し、DNAを鋳型としてPCRを行い、父系種判別法を検討した。
結果と考察
1)フグの毒性に関する調査研究では、東北地方で漁獲されたコモンフグとヒガンフグは現在でも毒性は高いこと、沖縄県産モヨウフグ属7種のなかでコクテンフグが「強毒」レベルの毒性を示すことがわかった。外部形態がトラフグと類似するものの交雑種と判断されたフグ119個体の毒性を調べたところ、10個体から毒性が検出されたが、毒性はトラフグと同程度またはそれ以下のものがほとんどであったが、一部でトラフグでは食用可能とされている精巣と皮から毒性が検出された。過去50年間(昭和35年~平成22年)に発生したフグによる食中毒事件2401件のフグ食中毒について、全国の地方衛生研究所に照会したところ、21機関から中毒原因食品の検査情報を得ることができ、魚種ではマフグ>コモンフグ>ヒガンフグの順で多く、部位別では筋肉>肝臓>皮、卵巣で中毒が起こり、わが国のフグ食中毒の特徴が明らかにされた。2)フグの分類に関する研究では、日本の沿岸と排他的経済水域に7属54種のフグ類が分布することを明らかにし、各属は体表面の側線の数や走り方、鼻器官の形態、体表面の小棘の分布、鰭条数および色彩によって識別できることを確認した。奄美大島から得られた標本に基づいてシッポウフグ属の新種アマミホシゾラフグTorquigener albomaculosus Matsuura, 2014を発表した。遺伝子解析による種判別法の開発では、核DNAマイクロサテライト領域を対象にした父系種同定が有効で、人工交配フグ種(トラフグ(♀)×マフグ(♂)およびトラフグ(♂)×マフグ(♀))について、核DNAマイクロサテライトマーカー(GAAAG repeat)解析を行ったところ、トラフグおよびマフグで顕著な差が確認できたことから、父系種同定に使用可能であると判断された。
結論
フグ食の安全性確保を目的として、1)フグの毒性に関する調査研究と2)フグの分類に関する研究を行った。毒性調査において、東北地区のコモンフグとヒガンフグは現在でも毒性は高く、沖縄県産モヨウフグ属のコクテンフグの毒性が高かった。トラフグと形態が類似する交雑種フグ119個体の毒性を調べたところ、10個体から毒性が検出されたが、毒性はトラフグと同程度またはそれ以下のものがほとんどであった。日本の沿岸と排他的経済水域に7属54種のフグ類が分布することが明らかになり、父系種同定に核DNAマイクロサテライト領域が有効であることがわかった。

公開日・更新日

公開日
2015-05-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201426026B
報告書区分
総合
研究課題名
フグ等の安全性確保に関する総括的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-食品-一般-013
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
長島 裕二(東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒川 修(長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科)
  • 佐藤 繁(北里大学海洋生命科学部)
  • 大城 直雅(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 松浦 啓一(国立科学博物館)
  • 石崎 松一郎(東京海洋大学大学院 海洋科学技術研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フグ食中毒の発生件数と患者数は食中毒全体の2%以下だが、死者数は全体の1/3を占め、致死率が高い危険な食中毒である。フグ食中毒防止のため、わが国では厚生労働省通知で食用可能なフグの種類、部位、漁獲地域を定め、都道府県条例等でフグ取り扱いの場所と人を制限してフグの安全性確保を担保している。しかしながら、これまでの報告を上回る毒力が散見され、麻痺性貝毒(PSP)やパリトキシン様毒によるフグ食中毒や巻貝によるフグ毒中毒も発生し、フグ食中毒およびフグ毒中毒は複雑化しており、フグ等の安全性確保における新たな問題点となっている。その上、南方産フグの出現や自然交雑フグが各地で確認されるようになり、正確なフグの判別がますます困難になっている。そこで本研究では、フグ等の安全性確保のため、1)フグの毒性に関する調査研究と2)フグの分類に関する研究を実施した。
研究方法
1)フグの毒性に関する調査研究では、各地からフグを集め、部位ごとに抽出液を調製し、毒性試験を行った。 フグの毒蓄積能の検討は、in vitro肝組織培養実験と、フグにテトロドトキシン(TTX)またはPSPを添加した飼料を経口経管投与実験で行った。 フグ食中毒事例の調査では、過去50年間(昭和35年~平成22年)に発生した食中毒事件例のリストを基に、自治体別の食中毒事件一覧表を作成し、全国の地方衛生研究所にフグの毒性に関する調査研究の実施状況等についての調査票を送付し、回答された調査票に基づきデータを集計し分析した。2)フグの分類に関する研究では、日本産フグ類標本(約300個体)とフィールド調査で得た標本について形態学的調査を行った。遺伝子解析では、交雑フグ種計7種10個体と人工交配フグ種(トラフグ(♀)×マフグ(♂)およびトラフグ(♂)×マフグ(♀)、各3個体)を試料として、筋肉から全ゲノムDNAを抽出・精製した。これらの全ゲノムDNAを用いて、ミトコンドリアDNA中の16S rRNAおよびシトクロームb領域の塩基配列から母系種の同定を行い、マイクロサテライト領域から父系種同定法を検討した。
結果と考察
1)フグの毒性に関する調査研究では、日本沿岸で漁獲される各種フグ類の毒性を既存のデータを取りまとめるとともに、実態調査を行ったところ、概ね谷の「日本産フグの毒力表」の範囲内で、トラフグと類似する交雑種フグ119個体中、10個体から毒性が検出されたが、毒性はトラフグと同程度またはそれ以下のものがほとんどであった。フグの毒蓄積能については、シロサバフグとクロサバフグの肝臓はトラフグと同等のTTX蓄積能をもち、トラフグとヒガンフグのPSP蓄積能は種や成熟段階により異なるものの、総じてTTX蓄積能より低いことが示唆された。過去50年間のフグ食中毒事件において、魚種ではマフグ>コモンフグ>ヒガンフグの順で多く、部位別では筋肉>肝臓>皮、卵巣で中毒が起こった。2)フグの分類に関する研究では、日本の沿岸と排他的経済水域に7属54種のフグ類が分布することを明らかにし、各属は外部形態で識別できることを確認した。サバフグ属の分類学的研究を行った結果、クロサバフグの学名を変更すべきことが明らかとなった。シッポウフグ属の新種アマミホシゾラフグを発表した。遺伝子解析による種判別法の開発では、核DNAマイクロサテライト領域を対象にした父系種同定が有効であることがわかった。
結論
フグ食の安全性確保を目的として、1)フグの毒性に関する調査研究と2)フグの分類に関する研究を行った。毒性調査において、東北地区のコモンフグとヒガンフグは現在でも毒性は高かったが、概ねこれまでの報告の範囲内であった。トラフグと形態が類似する交雑種フグの毒性はトラフグと同程度またはそれ以下のものがほとんどであった。日本の沿岸と排他的経済水域に7属54種のフグ類が分布することが明らかになり、父系種同定に核DNAマイクロサテライト領域が有効であることがわかった。 

公開日・更新日

公開日
2015-05-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

総合研究報告書
総合研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201426026C

成果

専門的・学術的観点からの成果
トラフグに形態が類似した交雑種フグの毒性調査を行い、有毒個体の割合は10%以下で、毒性はトラフグと同程度またはそれ以下のものがほとんどであったが、一部でトラフグでは食用可とされている精巣と皮から毒性が検出された。シロサバフグとクロサバフグの肝臓はトラフグと同等のフグ毒蓄積能をもつこと、トラフグは麻痺性貝毒をほとんど蓄積しないことが明らかになった。サバフグ属の分類学的研究を行った結果、クロサバフグの学名を変更すべきことが明らかとなった。シッポウフグ属の新種アマミホシゾラフグを発表した。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
佐賀県トラフグ肝第三者評価委員会で、トラフグ肝臓の毒蓄積能の結果が参考にされた。フグ食の安全性に関する行政への貢献として、平成26年度神奈川県ふぐ包丁師衛生講習会でフグの安全性に関する講演、ならびに東京都市場衛生検査所、岐阜県保健環境研究所、静環検査センターでフグの種判別法および交雑フグ種判別法に関する研修、指導を行った。
その他のインパクト
フグ食中毒防止啓蒙のため、「毒魚の自然史」を出版、月刊誌「食と健康」に “フグを知って中毒防止”を12回連載、食品衛生検査指針改定版に一部執筆し、平成27年度日本水産学会秋季大会(平成27年9月予定)でミニシンポジウム「フグ食の安全確保―日本沿岸フグ類の分類と毒性の見直し」を開催する。アマミホシゾラフグが、国際生物種探査研究所が選ぶ2015年世界の新種トップ10に選ばれた。2014年10月6日産経新聞でフグ稚魚が混入したしらす、2015年4月9日神奈川新聞でフグについての記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
46件
学会発表(国際学会等)
6件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
11件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
辰野竜平、反町太樹、谷山茂人他
腐肉食性小型巻貝2種に対するフグ毒給餌実験
食品衛生学雑誌 , 55 (3) , 152-156  (2014)
原著論文2
K. Matsuura
Taxonomy and systematics of tetraodontiform fishes: a review focusing primarily on progress in the period from 1980 to 2014
Ichthyol. Res. , 62 , 72-113  (2015)
10.1007/s10228-014-0444-5
原著論文3
K. Matsuura
A new pufferfish of the genus Torquigener that builds "mystery circles" on sandy bottoms in the Ryukyu Islands, Japan (Actinopterygii: Tetraodontiformes: Tetraodontidae)
Ichthyol. Res. , 62 , 207-212  (2015)
10.1007/s10228-014-0428-5

公開日・更新日

公開日
2015-06-26
更新日
2020-06-23

収支報告書

文献番号
201426026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,900,000円
(2)補助金確定額
8,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,328,837円
人件費・謝金 547,883円
旅費 855,708円
その他 114,618円
間接経費 2,053,000円
合計 8,900,046円

備考

備考
銀行預金による利息が生じたため

公開日・更新日

公開日
2015-05-18
更新日
-