文献情報
文献番号
201426024A
報告書区分
総括
研究課題名
畜産食品の安全性確保に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-食品-一般-011
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
- 五十君 静信(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
- 山崎 伸二(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 )
- 等々力 節子(農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所)
- 鎌田 洋一(岩手大学 農学部)
- 荻原 博和(日本大学 生物資源科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
7,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在わが国の畜産食品は、これまで生食されなかったものが生食されるなど、食文化が多様化してきているが、畜産物の生食は腸管内の微生物や寄生虫等による食中毒の危険性が高い。近年、食中毒事例が頻発していることから、畜産物の生食による食中毒を未然に防止するための畜産物中の食中毒菌の検査手法や除去方法を提供する必要がある。本研究では、食肉及び内臓肉を生で食することによるリスクを明らかにすることを目的として、腸管出血性大腸菌などの細菌と生食で問題となる寄生虫対象とした生食による危害と、その低減手法を検討した。
研究方法
食肉の生食実態及び製造上の衛生管理について情報収集を行い、食肉を生食することのリスクの危害分析を行った。牛の消化器については、大腸菌群等の汚染実態及び季節変動を明らかにした。また、我が国における馬肉中の住肉胞子虫試験方法の検討及びシカ肉中の住肉胞子虫汚染実態を明らかにした。牛肝臓及び挽肉に人工的に接種したカンピロバクターにγ線を照射し、菌数低減の有効性が認められる条件を明らかにすると共に、副生成物について解析した。高圧処理による殺菌方法について、牛肝臓の硬化及び変色を起こしにくい条件での各種食品媒介細菌の低減について検討した。
結果と考察
昨年度スーパー等で市販されていることが明らかとなったドイツのメットについて、国内での畜産食品の衛生管理等の参考とする目的で、衛生管理及び規格基準について情報収集したところ、メット独自の公的微生物規格基準はなく、ひき肉製品の製造加工要件が定められ、州による監視・モニタリングが行われていることが明らかとなった。エゾシカにおける住肉胞子虫の汚染状況を調査した結果、96%から住肉胞子虫遺伝子が検出され、その汚染が蔓延している危険性が推察された。牛肝臓内の大腸菌の分布は、胆汁中の大腸菌群細菌と肝臓内で検出された大腸菌群細菌とは相関性が見られなかった。胆汁からstx遺伝子は全く検出されず、肝臓内でstx遺伝子が検出された場合は、生食としての非可食部位からであった。生食部位からは大腸菌群細菌が検出され、その割合は夏場に多く、冬場に少ない傾向にあった。牛肝臓および牛挽肉にカンピロバクターを接種し、γ線照射を行い、D10 値として氷冷脱気条件で0.33kGy、凍結脱気条件で0.69 kGy,を得た。これはサルモネラより低く、照射による食中毒菌低減はサルモネラの殺菌を達成出来る条件で十分制御が可能になると判断された。脂質の放射線分解物である2-アルキルシクロブタノン類(2-ACBs)として、2-dDCB、2-tDCB、2-tDeCBが、冷凍6 kGy, 凍結10kGy までの照射によって線量依存的に生成することを確認した。2-ACBsの生成量は包装条件の違いによる影響は少なく、前躯脂肪酸1mmoleから1kGy の照射で生成する2-ACBsの量は、牛肉での報告より小さかった。また、照射によるトランス型脂肪酸の僅かな増加が認められたが、これも、包装条件による影響は少なかった。一方、脂質酸化の指標であるTBA値は、含気包装,0℃での照射では増加が認められたが、脱気包装下や凍結下の照射では、ほとんど変化が無かった。フランについては、冷蔵、冷凍の照射で、それぞれ6kGy 、10 kGy照射をしても、検出されないことを確認した。培養菌液を用いて250MPaで180分高圧処理を行った結果、サルモネラ等で5 D以上の低減効果が見られた。牛肝臓に接種したE.coliの高圧による死滅効果の検討では、2 Dの低減効果が認められ、肉質変化は顕著ではなかった。
結論
ドイツで市販されている豚肉生食製品メットの衛生管理及び規格基準についての情報を収集した結果、メットを対象とした微生物規格基準は存在せず、連邦政府による挽肉の加工要件と、州による監視が定められていた。シカ肉の住肉胞子虫の汚染率を調査したところ、50検体中48検体から住肉胞子虫遺伝子が検出された。牛肝臓内の大腸菌群汚染は、季節性が見られる傾向にあった。牛肝臓内部に接種したカンピロバクターのD10 値は、氷冷脱気条件で0.33 kGy、凍結脱気条件で0.69 kGyであった。冷蔵6kGy 、冷凍10kGy までの照射で、不飽和脂肪酸の有意な減少は無かったが、照射によるトランス異性化が認められ、トランス酸含量は僅かに増加した。2-アルキルシクロブタノン類の生成は、これまでに牛肉で報告されている効率と同程度かそれ以下であった。250MPaで180分の高圧処理は、培養菌液に対しては食品媒介病原細菌の5D以上の菌数低減に有効であったが、肝臓に接種した菌に対しては2Dの低減であった。
公開日・更新日
公開日
2018-07-04
更新日
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