WHOのチェックリストを用いた日本版「手術安全簡易評価システム」の開発と適応に関する研究

文献情報

文献番号
201424005A
報告書区分
総括
研究課題名
WHOのチェックリストを用いた日本版「手術安全簡易評価システム」の開発と適応に関する研究
課題番号
H25-医療-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
兼児 敏浩(三重大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 相馬 孝博(榊原記念病院)
  • 富永 隆治(九州大学大学院)
  • 鈴木 明(浜松医科大学医学部附属病院)
  • 鳥谷部 真一(渋木 真一)(新潟大学)
  • 水野 信也(静岡理工科大学)
  • 藤澤 由和(静岡県立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の最終目的は、手術の安全を確保するための手段の確立であるが、まずは、わが国の周術期のノンテクニカルスキルの現状、WHO SSC遵守状況の現状を把握することをも目的とした。
具体的には、簡易にNOTSS Non Technical Skills for Surgeons)を評価できること、WHO SSC(The World Health Organization Surgical Safety Checklist)の遵守状況を評価できることを目標に、MENAS( Mie Easy NOTTS Assessment Scale)を開発した。
 これは、それぞれの場面でもっとも好ましい振る舞いを3点、もっとも好ましくない振る舞い(もっとも未熟なノンテクニカルスキル)を0点とする4段階で定量的に評価するものであり、当初、術中の清潔操作は術中の振る舞いに含まれ、実際に清潔操作が問題になるような場面はないのではないかとの意見を踏まえて、改訂版MENAS(r-MENAS)を開発することとした。
研究方法
 r-MENASを用いて、6施設において、外科系医師の周術期のノンテクニカルスキルとWHO SSCの遵守状況の評価を行った。6施設はWHO SSCが導入されていない2施設、導入前後で比較可能な3施設、導入後の施設で、評価宣言前後で比較可能な1施設からなるものとした。
 WHO SSCの導入が与える影響や評価されていることを認識することの影響に留意し評価を実施した。
また、r-MENASを実際に使用したスタッフにアンケート調査を行い、r-MENASそのものの評価も行った。さらに、WHO SSCについての最新の文献的考察に関しても合わせて実施した。
結果と考察
 本研究においては、「WHO SSC導入前の施設の現状」、「WHO SSC導入の効果(WHO SSC前後での比較)」、「評価宣言前後の変化(評価されていることを認識することによる影響)」を実施したのであるが、本研究における最も中心的な論点である、「WHO SSC導入の効果(WHO SSC前後での比較)に関しては、ノンテクニカルスキルは、①入室時の振る舞い、⑤術中の振る舞い、⑥術後の器械・針カウント、⑧術後のあいさつ の4項目で好ましい振る舞いが増加した。少数存在した破壊行為は皆無となった。また、導入後のWHO SSCの遵守状況は②自己紹介:79%、③ブリーフィング:47%、④タイムアウト:90%、⑦デブリーフィング:38%がMENASスコアーで3点であった。
 また、MENASの使用経験に関する評価に関しては、3施設、72名のスタッフから回答を得、MENASはそれほど負担感もなく医療安全の増進のために有用であるとの回答を得たが、自己紹介とデブリーフィングについては評価しにくいとの回答が目立った。
結論
 WHO SSCの導入は周術期のノンテクニカルスキルの向上に有用であった。しかしながら、ブリーフィング、デブリーフィングについては、向上はするがまだ十分ではない。タイムアウトのようなもっとも基本的なルールについても遵守率は高いとはいえない。一方、WHO SSC導入施設においては、評価宣言(評価されていることを意識すること)は、WHO SSC導入と類似の効果があった。さらに、WHO SSCが導入されているにも拘わらず残存している未熟なノンテクニカルスキルの集団に対して、何らかの効果があることが示唆された。
 したがってr-MENASは周術期のノンテクニカルスキルやWHO SSCの遵守状況の把握に有用なツールであると言える。また周術期のノンテクニカルスキルはWHO SSCを導入することによって好ましい方向にシフトする。また、評価されていることの認識もWHO SSCの導入と類似の効果を示すが、特に未熟なノンテクニカルスキルの集団に対しては効果的である可能性がある。破壊行為や終了時のカウントへの協力が十分でない点はさらなる検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

文献情報

文献番号
201424005B
報告書区分
総合
研究課題名
WHOのチェックリストを用いた日本版「手術安全簡易評価システム」の開発と適応に関する研究
課題番号
H25-医療-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
兼児 敏浩(三重大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 相馬 孝博(榊原記念病院)
  • 富永 隆治(九州大学大学院)
  • 鈴木 明(浜松医科大学医学部附属病院)
  • 鳥谷部 真一(渋木 真一)(新潟大学危機管理本部危機管理室)
  • 水野 信也(静岡理工科大学)
  • 藤澤 由和(静岡県立大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 【補助金】 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 WHO SSC(The World Health Organization Surgical Safety Checklist)は周術期に用いるチェックリストであり、その有用性については、多くの報告で立証され、WHO SSCの導入とその遵守がわが国の手術安全に求められている。一方、周術期のノンテクニカルスキルの重要性も多くの指摘があるが、簡易にノンテクニカルスキルの評価が可能なスケールが存在しなかった。こうした点を踏まえ、本研究の最終的な目的が、周術期における患者安全の確保のための具体的方策を導出する中で、具体的には、簡易にNOTSSを評価できること、WHO SSCの遵守状況を評価できること、を目標としたMENAS( Mie Easy NOTTS Assessment Scale)を開発し、その検証を行った。
 これは、8つの場面でもっとも好ましい振る舞いを点数化するものであり、当初の課題を踏まえて、改訂版r-MENASを開発した。本研究ではr-MENASの評価スケールとしての妥当性を評価しつつ、WHO SSCの導入に向けた取り組み、遵守状況の把握、ノンテクニカルスキルの評価等について支援を行うための方策を検討した。
研究方法
 WHO SSCについての最新の文献的考察を行なうことを通して、最新の知見を踏まえ、r-MENASを用いて、6施設において、外科系医師の周術期のノンテクニカルスキルとWHO SSCの遵守状況の評価を行った。
 6施設はWHO SSCが導入されていない2施設、導入前後で比較可能な3施設、導入後の施設で、評価宣言前後で比較可能な1施設からなるものとした。
 WHO SSCの導入が与える影響や評価されていることを認識することの影響に留意し評価を実施した。
 また、r-MENASを実際に使用したスタッフにアンケート調査を行い、r-MENASそのものの評価も行った。
結果と考察
 評価対象事例は7施設で、3900件以上であった。また主要な評価項目「WHO SSC導入前の施設の現状」、「WHO SSC導入の効果(WHO SSC前後での比較)」、「評価宣言前後の変化(評価されていることを認識することによる影響)」のそれぞれにおいて、評価を実際に行なうことができた。
 WHO SSC未導入の施設にWHO SSCを導入すると周術期のノンテクニカルスキルは全体に好ましい方向にシフトする。しかし、依然として、未熟なノンテクニカルスキルが残存する。それらは多くは自己紹介やタイムアウトといった、実施しようと思えば実施可能な確信犯的な未熟なノンテクニカルスキルであった。そこで、さらに評価宣言(評価されていることを意識させること)を行うとさらに好ましいノンテクニカルスキルが増加するだけでなく、確信犯的未熟なノンテクニカルスキルを減少させる効果もある。
結論
 WHO SSCの導入と評価宣言を行うことは周術期の患者安全に貢献すると言える。また、r-MENASはWHO SSCの遵守状況や周術期のノンテクニカルスキルの評価を行うスケールとして妥当である。WHO SSCを効果的に導入、活用していくためにはr-MENASなどで評価を行いつつ進めていくことが有用であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-10
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201424005C

収支報告書

文献番号
201424005Z