B型肝炎ウイルスの完全排除等、完治を目指した新規治療法の開発に関する包括的研究

文献情報

文献番号
201423039A
報告書区分
総括
研究課題名
B型肝炎ウイルスの完全排除等、完治を目指した新規治療法の開発に関する包括的研究
課題番号
H24-B創-肝炎-一般-012
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
森屋 恭爾(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 斎藤 泉(東京大学 医科学研究所・遺伝子治療学)
  • 小池 和彦(東京大学医学部附属病院・内科学)
  • 國土 典宏(東京大学医学部医学研究科外科学専攻臓器病態外科学 肝胆膵外科)
  • 鈴木 哲朗(浜松医科大学 医学部感染症学講座)
  • 北川 雅敏(浜松医科大学・医学部分子生物学講座・分子生物学)
  • 朝比奈 靖浩(東京医歯科大学・医歯学総合研究科分子肝炎制御学講座)
  • 森石 恆司(山梨大学大学院医学工学研究部医学学域・微生物学講座)
  • 田川 陽一(東京工業大学大学院生命理工学研究科・発生工学)
  • 福原 崇介(大阪大学微生物病研究所・分子ウイルス学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 肝炎等克服実用化研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
74,616,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HBV感染症に対する根治療法確立、特にHBV cccDNA排除可能な創薬目的について平①既存薬剤効果検討②HBV複製機構解析から創薬標的を探索③創薬に貢献する技術開発を目指しす
(1) 抗HBV薬スクリーニング、マウスモデルでの評価を通じて新規治療薬の候補化合物を取得する。
(2) HBV DNAの複製制御、遺伝子発現調節の分子機構、non-coding RNAによるHBV複製制御、HBV複製における肝細胞分化レベルの関与等を明らかにし新規創薬標的、戦略を見出す。
(3) HBVにより変動するnon-coding RNAの同定機能解析等を行い、病態発現機構解明へ繋げる。
(4) 高機能肝組織培養系を駆使し新たなHBV増殖モデルを作出する。
(5) HBV複製細胞選択的な遺伝子治療用ベクターを開発する。
(6) HBV関連症例、特にHBs抗原陰性HBc抗体陽性患者への肝切除等術後補助化学療法を確立する。
研究方法
1)HBV感染ヒト肝臓キメラマウス、HBxトランスジェニックマウスおよび培養細胞系へのへのstatin投与を行いHBV RNA,HBVタンパク量の変化を検討した。
2)コアプロモーター活性、粒子産生を指標とした探索系でHBV阻害剤スクリーニングを実施した。
3)HBVにより変動するnon-coding RNAの同定
4)プロテオミクス解析
5)ヒトiPS細胞由来分化誘導肝細胞様細胞の確立
6)肝細胞癌切除後statin投与症例の予後検討
結果と考察
(1a) HBV感染キメラマウスへのstatin投与により副作用なく肝臓HBV蛋白を減少させる事を見出した。(1b) 培養細胞系においてstatinがHBV RNA、抗原を減少させることを見出しcccDNAからmRNA転写段階でstatinが作用する可能性を見出した。
(1c) HBxトランスジェニックマウスへのstatin投与によって、CDK阻害因子1及びマイトファジー阻害因子の発現変化を見出した。statinが肝発がん抑制に働く可能性が示された。
(2) HBV阻害剤候補として、statinを含む3物質を同定した。
(3a) 肝癌細胞株でのstatinによる抗炎症因子誘導と抗HBV活性を明らかにした。既存の安全な薬剤によるHBV発癌抑制の可能性が基礎的に示された。
(3b) HBVプレゲノム発現を正また負に制御する因子2種類を同定しHBV調節機能を解析した。
(4a) HBV病態モデルとして、新たにlarge S遺伝子トランスジェニックマウスを樹立した。
(4b) 癌抑制関連miRNA let-7とPreS2遺伝子との結合性を示し、let-7の肝細胞導入法を確立した。
(5) プロテオミクス解析より、HBV増殖を正に制御するタンパクと負に制御するタンパクをを同定した。
(6) HBV複製により発現亢進するlncRNA7種低下するもの6種を同定した。
(6b) lncRNA UHG1はHBV複製の促進機能を持つ可能性が示された。
(7) ヒトiPS細胞から分化誘導した肝細胞様細胞にHBVを感染させることに成功した。
(8) ヒトiPS細胞由来肝細胞系譜細胞と内皮細胞の共培養系でin vitro 肝組織モデル(IVLiPS)を樹立した。IVLiPSではNTCP発現が亢進しており、HBV感染感受性が示された。
(9) 組換えアデノウイルスを利用した高効率HBV複製系を作出し、簡便なHBV定量技術を確立した。
(10) HBVポリメラーゼをトランスに供給できるHBV複製系を樹立した。
(11) 肝細胞癌切除後statin投与(高脂血症治療)群では、非投与群に比べ予後良好な傾向であった。
(12) HBcAb陽性ドナーからの肝移植後治療としてHBワクチン及び抗HBV抗体投与を検討した。予備的ながら、HBワクチンによるHBV再活性化抑制効果を見出した。
結論
既存薬statinによる抗HBV効果、肝発癌抑制作用に関するデータの蓄積が行われるとともに 阻害剤スクリーニングにより抗HBV活性を有する複数の候補を獲得した。
また今回までに獲得したHBV関連 miRNA、HBV複製調節宿主因子、 lncRNAによるHBV複製制御機構の解析を行い阻害剤の探索も可能となる。
あらたにiPS細胞由来分化誘導肝細胞様細胞またIVLiPSを活用したHBV感染モデルを樹立したことによりHBV増殖と阻害剤の探索がより迅速に行うことが可能となる。また 肝細胞癌手術後statin投与による再発抑制効果に関する後方視的調査をおこなう基盤が確立された。

公開日・更新日

公開日
2017-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201423039Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
97,000,000円
(2)補助金確定額
97,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 40,231,567円
人件費・謝金 15,855,970円
旅費 2,658,113円
その他 15,876,915円
間接経費 22,384,000円
合計 97,006,565円

備考

備考
自己資金として6565円を合算した

公開日・更新日

公開日
2016-05-23
更新日
-