男性同性間のHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究

文献情報

文献番号
201421026A
報告書区分
総括
研究課題名
男性同性間のHIV感染予防対策とその介入効果の評価に関する研究
課題番号
H26-エイズ-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
市川 誠一(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 健山 正男(国立大学法人琉球大学 大学院医学研究科)
  • 金子 典代(公立大学法人名古屋市立大学 看護学部 )
  • 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部 )
  • 鬼塚 哲郎(京都産業大学 文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,698,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
MSM(男性と性行為をする男性)への啓発介入とその評価を目的に以下の4研究を実施した。研究1:CBOの予防啓発活動と商業施設および自治体との連携に関する研究、研究2:男性同性間性的接触によるHIV陽性者における予防啓発との接点と感染リスク行動に関する調査、研究3:MSM及びゲイ・バイセクシュアル男性を対象とした地域間比較(本年度は以下の2地域、3-1.東海地域のゲイ・バイセクシュアル男性を対象とする無料HIV検査会の受検者質問紙調査、3-2. Community-Based OrganizationによるHIV予防啓発活動のプログラム評価~aktaアウトリーチ活動のプロセス評価)、研究4:商業施設を利用しはじめる若年層MSMを対象とした予防啓発介入の開発と効果評価。
研究方法
研究1(分担/市川):7地域のCBOを対象にMSMが利用する商業施設との連携、啓発資材配布等の活動、自治体・保健所との連携に関する調査票を配布した。
研究2(分担/健山):HIV陽性者の感染判明前の予防啓発や行政施策との接点および早期検査・受診に関連する要因を把握する質問項目について予備調査を行い、本調査の準備を進めた。
研究3-1(分担/金子):2001年から毎年6月頃に実施してきた無料HIV検査会の受検者(481人)に質問紙調査を行った。
研究3-2(分担/本間):新宿地域のゲイバー顧客を対象に、検査行動、予防行動、地域間移動と性行動、啓発プログラム認知、コミュニティへの感覚等に関するインターネット質問紙調査(GCQアンケート)を実施した。
研究4(分担/鬼塚):初めて性行為を行う時期に商業施設を利用しはじめる若年層MSMへの新たな啓発介入をCBO・MASH大阪と協働で開発し、その効果をMSM対象のインターネット質問紙調査(GCQアンケート)と大阪市・大阪府の保健所等のHIV抗体検査受検者対象の質問紙調査で評価するデザインとした。
結果と考察
研究1:7地域のCBOのゲイバーとの連携率は東北93%、東京42%、東海88%、大阪66%、福岡97%、沖縄100%、中・四国100%で、全620店舗のバーに加え商業系ハッテン場やゲイナイト等にも啓発資材等を配布していた。また自治体・保健所と連携しMSM向けの検査促進の広報やHIV検査担当者研修会に協力していた。厚生労働省コミュニティセンター事業の6地域のセンターは前年度並みの利用状況であった。
研究2:急性HIV感染症の時期に受診している者があり、早期発見にはこれらの症状に対する医療機関への啓蒙の必要性が示唆された。
研究3-1:無料HIV検査会の受検者の生涯受検経験率はMSM受検者(445件)が80.2%で、非MSM受検者53.8%に比して高かった(p<0.001)。MSM受検者でコンドーム使用ステージが行動・維持期にあるものの割合は、特定相手とでは39.4%で、その場限りの相手の50.4%に比して低かった。
研究3-2:CBO・aktaのアウトリーチ実施店舗のMSMは未実施店舗の回答者に比べて啓発資材の認知割合、友達や知り合いにHIVに感染している人がいると回答する割合、コミュニティに安心感や愛着を有する回答割合が有意に高かった。
研究4:初年度は啓発介入プロジェクトを発足し、従来型の紙媒体による啓発を行い、次年度の新型啓発介入を評価する基礎資料を得るための調査を実施した。初めて話したゲイ男性との性交割合は78.4%-86.7%と極めて高く、初性交時周辺に焦点をあてた介入は妥当であった。最近の性交時のコンドーム使用意図(4.68倍、95%CI:2.10-10.44)、初めての性交時のコンドーム使用意図(4.06倍、95%CI:1.97-8.37)が予防行動に関連しており、使用意図を醸成することが有用であることが示唆された。MASH大阪、HaaTえひめと協働して「ヤる!プロジェクト」を企画し、紙媒体による介入を実施した。介入後は介入資材認知割合が2.7%から10.2%に上昇した(p<0.01)。先行研究に比べてやや浸透度が低く、介入規模が小さかった可能性もあるが、次年度の啓発介入のベースラインとなった。
結論
7地域のCBOによる啓発活動と自治体との協働を把握し、その評価となる予防行動、検査行動、資材認知とコミュニティでの変化等を研究3、4で調査し、前身の研究班で得てきた情報と比較できるように計画した。研究1、3、4はCBOの活動状況にあわせて計画・実施した。研究2は、HIV陽性者への調査の負担を考慮しつつ取り組む予定である。研究4の商業施設を利用し始める若年層MSMへの取り組みはHIV感染がシフトしている年齢層へのHIV感染対策として社会的意義が高い。初年度の研究計画はほぼ達成された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201421026Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,037,000円
(2)補助金確定額
8,037,106円
差引額 [(1)-(2)]
-106円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 181,633円
人件費・謝金 1,159,428円
旅費 2,139,800円
その他 3,217,245円
間接経費 1,339,000円
合計 8,037,106円

備考

備考
自己資金106 円

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-