HIV Gag蛋白質と関連因子の治療標的構造の解明に向けた統合的研究

文献情報

文献番号
201421016A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV Gag蛋白質と関連因子の治療標的構造の解明に向けた統合的研究
課題番号
H25-エイズ-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 裕徳(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 塩田 達雄(大阪大学 微生物病研究所)
  • 増田 貴夫(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 梁 明秀(横浜市立大学 医学部)
  • 櫻木 淳一(大阪大学 微生物病研究所)
  • 間 陽子(理化学研究所 分子ウイルス学特別研究ユニット)
  • 野間口 雅子(徳島大学大学院 ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 蝦名 博貴(京都大学 ウイルス研究所)
  • 村上 努(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
  • 玉村 啓和(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 エイズ対策研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
14,281,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV Gag蛋白質は、ウイルスの増殖と伝播に不可欠の構造蛋白質である。抗HIV薬・ワクチン開発の標的分子となりうるが、GagをターゲットとするHIV制御法は確立していない。そこで本研究では、Gagの構造、機能、進化の特性を重点的に研究し、HIV制御法開発の土台となる新たな技術・情報基盤を構築し、次世代の抗HIV薬・ワクチン開発の道を開く。学術的、国際的、社会的な貢献が期待される。
研究方法
(1)研究体制の構築:分子シミュレーション等の計算科学の技術を基軸にウイルス研究者と有機合成化学の専門家が連携し、予測と実験の双方向性の解析を進める。これにより、Gag研究のスピードを加速し、新たな突破口を開く。さらに、成果を速やかに医薬品のシード探索につなげることを可能とする。
(2)Gag研究: Gagの構造・機能・進化の未解決課題の解明に重点をおく。上で構築した連携研究ネットワークを活用する。
(3)シード探索:Gagの構造・機能・変化能の観点から、Gagの急所を総合的に検討する。急所候補を標的とする分子を設計・合成し、抗HIV活性を評価する。
結果と考察
(1) Gagの急所候補の同定:Gagカプシド蛋白質のαヘリックス9(CA h9)の重要な役割を明らかにした。(a)霊長類レンチウイルス(HIV、SIV)のCA h9に、高度に保存されるトリプトファン/メチオニン残基(W184/M185)が存在し、疎水性相互作用ネットワークを形成してCA二量体安定性を維持する。(b)CA h9近傍の変異は、CA二量体の不安定化、自然免疫エフェクターTRIM5αへの感受性亢進、感染者ウイルス量の低下につながる。(c)CA h9由来のペプチド誘導体は、抗HIV活性をもつ。以上の発見は、CA h9が介在する疎水性相互作用が霊長類レンチウイルスの存続に必須であり、分岐進化の過程においても高度に保存される必要があることを強く示唆する。この相互作用の破綻を招く分子を設計・合成できれば、ウイルスの増殖を阻害するリード化合物が得られると期待される。
(2) Gag機能とHIV複製機構の新知見:Gagの新たな解析法を立ち上げ、機能を調べることでHIVの複製制御機構について種々の新知見を得た。(a)HIVコア脱殻の動態を定量的に追跡するin situ脱殻アッセイ系を立ち上げ、抗HIV蛋白質TRIM5αは侵入してきたHIVコアを細胞質内で認識して破壊することで感染を阻害すること、Gagマトリクス蛋白質のN末に、コア脱殻とゲノム逆転写の制御部位が存在すること、などを見つけた。(b)HIVゲノム逆転写反応の新たな解析法を立ち上げ、反応の律速段階がストランド転移過程であること、Gagヌクレオカプシドは1stストランド転移効率を上昇させることを見つけた。(c)細胞内のGag前駆体とHIV RNAを観測するライブイメージングを立ち上げ、Gag CA蛋白質にGag前駆体の細胞質輸送、並びに細胞質膜集合を制御するアミノ酸残基が存在することを見つけた。(d)HIVゲノムパッケージングの独自解析系を構築し、LTR SL1領域は未報告のバルジ・ループ・ステム構造をとって機能する可能性を示唆した。(e)Gag p6 Ser487がaPKCによりリン酸化されること、aPKC阻害剤がp6リン酸化の減弱を介してウイルス粒子感染性の低下に結びつくことを見つけた。
(3)シード探索: (a)Tsg101-Gag p6結合を阻害し、マクロファージにおけるHIV複製を阻害する化合物を同定した。(b)Gag部分ペプチドライブラリーの中から抗HIV活性をもつものを同定した。
結論
計算科学、HIV複製、有機化学の研究者が連携し、予測と実験でGag研究と創薬シード探索を効率的に進める研究組織を構築した。これを用いてGagとその相互作用因子の構造・機能に関わる種々の新知見を得た。いずれも、ウイルスのより良い理解に貢献し、創薬シード探索の重要な技術・情報基盤となる。特にCA h9の発見は、構造・機能・進化のいずれの観点からもシード探索研究に展開させる価値がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

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公開日
2015-06-09
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-

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文献番号
201421016Z