培養細胞感染系の確立されていない病原体の実験技術の開発と予防診断法に関する研究

文献情報

文献番号
201420036A
報告書区分
総括
研究課題名
培養細胞感染系の確立されていない病原体の実験技術の開発と予防診断法に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-014
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石井 孝司(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究分担者(所属機関)
  • 鈴木 哲朗(浜松医科大学医学部)
  • 片山 和彦(国立感染症研究所 ウイルス第二部 )
  • 李 天成(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 柊元 巌(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
  • 勝二 郁夫(神戸大学大学院医学研究科)
  • 鈴木 亨((独)農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所)
  • 中西 章(国立長寿医療研究センター研究所)
  • 本村 和嗣(大阪大学微生物病研究所)
  • 染谷 雄一(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 遠矢 幸伸(日本大学生物資源科学部)
  • 佐藤 俊朗(慶応義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
24,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
すでにヒトにとって重要な疾患の原因であることが判明しているか、何らかのヒト疾患との関連性が強く示唆されているにも関わらず、培養細胞系が存在しないか、あるいは培養細胞系での増殖効率が非常に悪いために研究の進展が大きく制約されているウイルスによる疾患について、診断技術・実験モデルの開発、予防・治療法開発のための基盤研究等を包括的に行う。本研究で開発、確立されるウイルス増殖(モデル)系を利用することにより、これらのウイルスの感染増殖、病態発現の解析を進めることが可能になると考えられる。
上記のようなウイルスを増殖させることができる新規培養系の確立に取り組むことにより、特にヒトノロウイルスやサポウイルスを効率よく増殖させることが可能な培養細胞系を確立できれば、これらのウイルスの感染増殖、病態発現機構の研究を劇的に進展させることが可能になる。また、このような培養細胞系が確立できれば、ウイルス感染防止やウイルス増殖阻害物質の研究の進展も期待でき、ウイルス性下痢症、子宮癌、慢性肝疾患等の制圧に貢献し、医療、福祉の向上に繋がり医療費の低減に寄与することが期待される。
研究方法
食中毒、下痢症の原因であるヒトノロウイルス(NoV)、サポウイルス(SaV)、ロタウイルス、最近同定された新規ヒトポリオーマウイルス(MCV、KIV、WUVなど)、子宮頸癌の原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV)、ウイルス性肝炎の原因ウイルスであるE型肝炎ウイルス(HEV)を対象とし、診断技術・実験モデルの開発、予防・治療法開発のための基盤研究等を包括的に行った。各ウイルス材料よりcDNAを単離、組換え抗原発現系を構築し、ウイルス様粒子(VLP)等の作製を行った。
結果と考察
1)抗原抗体診断系の開発と血清疫学解析
 ウイルス様粒子を抗原に用いたELISA系を構築し、日本人でのHPV16抗体の保有状況を明らかにした。新規ヒトポリオーマウイルスTSVの抗体検出ELISAを確立し日本人健常者の抗体保有率を明らかにした。高感度ウイルス検出技術の開発:局在表面プラズモン共鳴原理を基盤とした、金フィルム/量子ドットを用いたインフルエンザウイルス検出系を開発し、イムノクロマト法より100倍程度の高感度で季節性インフルエンザウイルス株を検出しうることを明らかにした。

2)実験モデルの開発とウイルス生活環の解析
 ヒトおよびマウスNoVの感染性クローンにレポーター遺伝子を組み込むことに成功した。感受性細胞の探索や阻害剤のスクリーニングに有用であると考えられる。NoV非構造蛋白を発現するRNAレプリコン候補遺伝子を作成し、NoVにおいて複製欠損型ゲノムの機能的な補完に初めて成功した。Rat HEVが増殖できる細胞培養系を樹立し、また、rat HEVの感染性クローンを取得した。

3)宿主免疫応答の解析と予防・治療法開発のための基盤研究
 APOBECタンパク質がHPVゲノムにhypermutationを導入し、HPVゲノムの細胞DNAへの組込みを容易にすることで、子宮頸部発癌に関わる可能性が示唆された。脱ユビキチン化酵素USP15の脱ユビキチン化酵素活性を阻害する小分子のスクリーニングおよび特殊ペプチドの開発を行い、候補化合物を得た。
結論
1)抗原抗体診断系の開発と血清疫学解析
 日本人男性HIV患者での4価HPVワクチンの免疫賦与効果を検討したところ、ワクチン接種によりほぼ全ての被験者で抗体価の陽転が認められることが判明した。また、各VLPを蛍光標識することによりソーターを用いて同時にそれぞれに対する抗体を測定できる系を確立した。HPV16に対する日本人の抗体保有状況を明らかにした。

2)実験モデルの開発とウイルス生活環の解析
 ヒト、マウスNoVの感染性クローンにGFP、ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだウイルスの作成に成功した。内視鏡的に採取したヒト、ブタ小腸上皮幹細胞の安定的な培養法および遺伝子操作技術を確立した。幹細胞は生体内の腸管上皮組織を擬似した組織構造体(オルガノイド)を形成し、永続的な培養が可能である。Rat HEVの感染性クローンを取得した。E型肝炎のサロゲートモデルとして応用可能と思われる。

3)宿主免疫応答の解析と予防・治療法開発のための基盤研究
 APOBECタンパク質がHPVゲノムにhypermutationを導入し、HPVゲノムの細胞DNAへの組込みを容易にすることで、子宮頸部発癌に関わる可能性が示唆された。USP15の脱ユビキチン化酵素活性を阻害する候補化合物として5種類のヒット化合物を同定した。さらにUCHドメインに結合する特殊ペプチドの作製を行い、5種類の環状Nメチルペプチドと3種類の環状ペプチドを得た。

公開日・更新日

公開日
2015-04-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-04-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201420036Z