小児の肝移植患者におけるワクチン接種の安全性・有効性に関する研究

文献情報

文献番号
201420032A
報告書区分
総括
研究課題名
小児の肝移植患者におけるワクチン接種の安全性・有効性に関する研究
課題番号
H25-新興-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 昭彦(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 笠原群生(成育医療研究センター臓器移植センター)
  • 竹田誠(国立感染研究所 ウイルス第3部)
  • 宮入烈(成育医療研究センター感染症科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
これまで世界最大の小児の生体肝移植センターである国立成育医療研究センターでは、肝移植患者に対してワクチン接種を積極的に行ってきた。しかしながら、その開始時期、適応に関しては、科学的根拠に乏しい。したがって、接種前後の液性免疫と細胞性免疫機能の評価を行うことによって、より客観的なデータに基づき、より効果的で、より安全なワクチン接種を行うことが期待できる。最終的には、肝移植後の患者に対して、テーラーメードのワクチン接種を実施することをその目的とする。
研究方法
① 肝移植前後のワクチンの効果、安全性の前方視的調査
1)肝移植前の患者の評価
患者の免疫能の評価として、接種前の各種抗体価と細胞性免疫機能を評価する。また、移植入院時、同様の検査を行い、既に接種したワクチンの効果を抗体価、細胞性免疫機能を用いて評価する。
2) 肝移植後の患者の評価
これまでと同様に、移植後6, 9, 12, 18, 24か月に同様の抗体価、細胞性免疫機能の評価を行う。特定のワクチン接種後は、その特定のウイルス、または細菌に対する抗体価を定量し、効果を判定する。
3) 研究開始時に既に生体肝移植が終了している患者
研究開始時に既に移植の終了した患者においては、研究に参加した時点で、同様の検査を行い、免疫状態を把握する。特定のワクチン接種後は、その特定の抗体価を定量し、効果を判定する。
4)生ワクチンを接種した健康児の評価
生ワクチンを接種した健康児に対して、それぞれの生ワクチンに対する抗体価を検査する際に、細胞性免疫の評価としての追加の検体を採取、ELISPOT法による検査を行い、抗体価との比較を行う。
5) 肝移植患者に対するワクチンスケジュールの作成
以上の研究の結果から得られたデータを基に、肝移植後の小児に効果があり、安全なワクチン接種が実施できるようにワクチンスケジュールを作成する。
② 免疫学的評価
1) 液性免疫能(B細胞機能)
生ワクチン(水痘、風疹、ムンプス、麻疹)に対する抗体価を、EIA法にて抗体価の測定を行う。
 2) 細胞性免疫能(T細胞機能)
麻疹、水痘、風疹抗原によるELISPOTを用いたCD8+細胞の反応を測定する。
結果と考察
①肝移植前の液性免疫の評価
 肝移植前の各ワクチンに対する抗体陽性率は麻疹(46.7%)、風疹(89.4%)、水痘(67.5%)、ムンプス(51.2%)であり、風疹を除くすべての生ワクチン接種によって、十分な抗体の上昇が得られていないことが分かった。これは、多くの患者が1歳未満での接種を余儀なくされていることが原因と考えられた。
②肝移植後の液性免疫の評価
肝移植後、約2年経過した後の抗体価のデータを発表し、抗体陽転率は、麻疹、風疹、水痘、ムンプスでそれぞれ、77.5% (31/40), 100% (40/40), 66.7% (20/30), and 60.7% (20/33)であり、移植後、2年を経過し、接種された水痘、ムンプスワクチンによって、抗体陽転率は60%程度であり、陽転しなかった患者においては、追加接種の必要性を示唆する所見が得られた。また、液性免疫の評価を行い、接種年齢などが重要な免疫原性を決定する因子であることを明らかにした(Funaki T, et al. Liver Transplantation 2015 in press)。これらの情報は、「小児臓器移植及び免疫不全状態児への予防接種ガイドライン」の肝移植患者に対する予防接種の作成に貢献した。
③肝移植後の細胞性免疫の評価
上記の患者を対象に、水痘、麻疹、風疹に対するELISPOTによる細胞性免疫の評価を行ったが、その比較では、その相関は認められなかった。 ELISPOTによる測定では、それぞれの検体における検査結果の差が大きく、その解釈が困難な検体が存在するため、生ワクチンを接種した健康児の検体を採取し、確立されたELISPOT法による検査を実施し、その検査を再評価し、また、抗体価との比較を行う必要がある。
結論
肝移植後のワクチン接種は、客観的データに乏しく、その接種に関する明確な基準は存在しない。したがって、現在行っている患者のデータを液性免疫、細胞性免疫の観点から評価することは極めて重要であり、更なるデータの蓄積と細胞性免疫の評価が待たれる。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

収支報告書

文献番号
201420032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,300,000円
(2)補助金確定額
8,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,828,765円
人件費・謝金 271,800円
旅費 867,849円
その他 416,586円
間接経費 1,915,000円
合計 8,300,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
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