異常タンパク伝播仮説に基づく神経疾患の画期的治療法の開発

文献情報

文献番号
201419085A
報告書区分
総括
研究課題名
異常タンパク伝播仮説に基づく神経疾患の画期的治療法の開発
課題番号
H25-神経・筋-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 成人(東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 野中 隆(東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野)
  • 亀谷 富由樹(東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野)
  • 秋山 治彦(東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野 )
  • 細川 雅人(東京都医学総合研究所 認知症・高次脳機能研究分野 )
  • 新井 哲明(筑波大学 医学医療系)
  • 高橋 均(新潟大学脳研究所)
  • 藤田 行雄(群馬大学 脳神経内科学)
  • 村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター 神経内科)
  • 吉田 眞理(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
  • 久永 眞市(首都大学東京 理工学研究科)
  • 横田 隆徳(東京医科歯科大学医歯学総合研究科)
  • 小野寺 理(新潟大学脳研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
25,044,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は、アルツハイマー病(AD)におけるタウ、レビー小体型認知症(DLB)におけるαシヌクレイン(αSyn)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や前頭側頭葉変性症(FTLD)におけるTDP-43などの病気の進行と密接に関係する細胞内異常タンパク質が、どのように正常分子を異常型に変換、増殖し、どのように細胞から細胞へ伝播するかなどについて、神経病理学、細胞生物学、神経化学、薬学を専門とする研究者が詳細な検討を行うことにより、動物モデルの構築、病変進展メカニズムの解明、治療薬、治療法の開発を行うことを目的とする。
研究方法
組織標本については,種々の特異的抗体の免疫組織化学染色を行い,神経病理学的解析を行った。生化学は、凍結組織からサルコシル不溶性画分を調製し、イムノブロット解析を行った。細胞実験は、全長あるいは部分欠損体を一過性に発現し、その局在や凝集を観察した。また凝集核シードを添加する実験では、目的のタンパク質を発現した細胞に,患者脳より調製した不溶性画分、合成線維化タンパク質をトランスフェクション試薬と共に、あるいは試薬無しで導入し、数日間培養した後,異常を認識する抗体を用いた免疫組織化学的解析やイムノブロット解析を行った。また動物実験は、野生型マウスの脳に線維化αSyn、可溶性αSynを接種し、一定期間の後、免疫組織染色染色と生化学解析を行った。
結果と考察
αSynについては、線維化αSynをマウスの中脳、線条体、嗅内野に接種し、1ヶ月後の病変の広がりを解析した。その結果、それぞれのマウスで全く異なる病変分布を示し、接種部位を変えると全く異なる部位に病変の広がりを示すことが明らかとなり、病変は神経回路に沿って広がることが強く示唆された。TDP-43については、培養細胞に全長、及び欠損変異体を発現し、毒性が生じる機序を調べた結果、全長TDP-43は過剰発現によりアポトーシスを誘導すること、C末端断片は凝集体を形成し、様々な転写因子を巻き込むことにより弱い毒性を示すことが明らかとなった。タウについては、剖検脳の神経病理学解析から、特徴的な形態(globular)の封入体をオリゴデンドロサイトやアストロサイト胞体内に有する新しいタウオパチーの概念の提示や、PSPとCBDの鑑別に関する検討が示された。またPGRNノックアウトマウスとP301Lタウマウスを掛け合わせて、タウの蓄積を検討した結果、GRNの減少によりタウ蓄積が増悪することが示された。またADの原因遺伝子であるAPPが細胞外のタウ線維と相互作用し、タウ線維の細胞内への取り込みと細胞内正常タウの線維化、蓄積を引き起こすことが示された。
結論
αSynの病変は神経回路を介して伝播することが示された。また多くの場合、正常分子は異常型分子と同じ異常構造に変換される場合が多いことも示された。TDP-43に関して、その毒性は過剰発現によるものと、凝集体を介した二つの機序があることが示された。過剰発現によるものでは、細胞周期に異常をおこし、凝集体によるものは転写因子などの機能障害が原因と考えられた。タウに関しては、様々な認知症疾患の神経変性に関わり、その病型も多様である。その蓄積を悪化させる因子として、APPやプログラニュリンが示された。異常タンパク分子の解析手法として、レーザーマイクロダイセクションと質量分析のくみあわせは有用と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2015-06-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201419085Z