中高度難聴者への超磁歪素子を用いた埋め込み型骨導人工中耳の開発

文献情報

文献番号
201419066A
報告書区分
総括
研究課題名
中高度難聴者への超磁歪素子を用いた埋め込み型骨導人工中耳の開発
課題番号
H25-感覚-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
羽藤 直人(愛媛大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 小池 卓二(電気通信大学 電気通信学部 知能機械工学科 )
  • 神崎 晶(慶應義塾大学医学部 耳鼻咽喉科)
  • 立入 哉(愛媛大学教育学部 聴覚障害児教育 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,158,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、先進性の高い超磁歪素子を用いた埋め込み型骨導人工中耳(GMM-BAHA)を開発することが目的である。システムは体外ユニットで集音プロセッシング後、コイルで音情報を体内ユニットに送信し、磁力で超磁歪振動子を駆動させる。新型人工中耳の鍵は、圧電素子の約1000倍の駆動力を有する超磁歪素子にある。超磁歪素子は近年日本のメーカーが量産化に成功した磁力で高速に伸縮する合金で、骨振動に十分なパワーと広い周波数応答性を有する。本デバイスは聴覚障害による障害者への就労支援や雇用対策の画期的ツールと成り得ると考える。
研究方法
1)GMM-BAHAプロトタイプのご遺体での評価
超磁歪素子はその大きさや形状にて振動特性が異なるため、どのような形状の超磁歪素子が側頭骨駆動に最も適しているかをご遺体に埋め込み、レーザードップラー振動測定装置を用いて検討した。
2)GMM-BAHAプロトタイプのモルモットでの評価
モルモットで安全性試験、聴覚特性試験を行った。聴性脳幹反応(ABR)にて各周波数の閾値、経時変化を測定し評価した。
3)GMM-BAHAプロトタイプのBAHA埋め込み患者での評価
GMM-BAHAプロトタイプの振動特性を、BAHA埋め込み手術後の症例で倫理委員会の承認を得て行った。試験は騒音下および非騒音下での語音明瞭度の比較と、時間分解能の比較を行った。
4)最終GMM-BAHAデバイスの設計、作製
これまでの研究で得られた成果を基に、最終形のデバイス設計を行い製造を委託した。
結果と考察
1)GMM-BAHAプロトタイプのご遺体での評価
骨振動に十分なパワーと広い周波数応答性を有し、既存デバイスより高音域で良好な振動特性を示した。
2)GMM-BAHAプロトタイプのモルモットでの評価
モルモットに振動子と受信コイルを埋め込み、本補聴器で骨導音を与えた結果、聴性脳幹反応が確認でき,実際に補聴が可能であることが示された。また明らかな有害事象は認めなかった。
3)GMM-BAHAプロトタイプのBAHA埋め込み患者での評価
高周波帯域、特に8kHzにおいて既存のBAHAより良好な聴覚特性が得られた。
4)最終GMM-BAHAデバイスの設計、作製
体外から体内への音響信号伝送方法の改良を行った。磁界共鳴方式を信号伝送に導入し、さらに高周波数のキャリア信号を音声信号で振幅変調したAM信号を用いた。結果として、特に1kHz以下の低音域の電流伝送効率を約40dB向上させることに成功した。下図の最終体内ユニット、対外ユニット送電部はコイル、外部コイル固定用磁石、共振用コンデンサから成り、樹脂ケースに封入される。H26年度末には完成予定である。
結論
高性能な超磁歪素子を用いた埋め込み型骨導人工中耳(GMM-BAHA)は、平成27年度末までに完成見込みである。高音域で十分な利得を持つ超磁歪素子の特性からは、従来の気導補聴器では十分な聴覚補聴が困難な、高度感音難聴患者にも適応拡大できると考えている。実用化については、愛媛大学においてリオン社製人工中耳を実用化したノウハウを有しており,本申請研究によるデバイスの完成により、製品化へ向けて邁進する予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419066Z