白杖歩行・盲導犬歩行・同行援護歩行に対応したマルチモーダル情報処理技術に基づく訓練と評価の循環支援

文献情報

文献番号
201419064A
報告書区分
総括
研究課題名
白杖歩行・盲導犬歩行・同行援護歩行に対応したマルチモーダル情報処理技術に基づく訓練と評価の循環支援
課題番号
H24-感覚-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
蔵田 武志(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関 喜一(独立行政法人産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門)
  • 興梠 正克(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)
  • 石川 准(静岡県立大学 国際関係学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,937,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スマートフォンの普及により健常者の歩行者ナビ利用が一般的になりつつあるが、視覚障害者に適したインタフェースが搭載されれば、その視覚障害者への普及も現実味を帯び、視覚障害者の外出歩行を取り巻く環境が大きく変化することが想定される。無論、歩行訓練カリキュラムや訓練現場もこの変化に適応していく必要がある。このような背景を踏まえ、本研究では、視覚障害者の多様な歩行形態に対応したナビシステムの開発、それによる歩行評価とその歩行訓練への活用、さらには、訓練と評価との間の情報循環支援の将来的な実現への寄与をその目的とする。
研究方法
H26年度はまず、安全性指標の定量化のために音声ガイド中の突発的歩行動作の自動抽出を進める。音声ガイドの構造や構成、提供タイミングの検討を国際動向や実証に基づいて進める。さらに触軌跡の作成システムの自動化を進め、即時性の高いフィードバックを可能とする。
結果と考察
まず、安全性指標の定量化のための音声ガイド中の突発的歩行動作の自動抽出については、PDRの処理結果から得られる進行方向に沿った加速度を用いた抽出手法を開発した。112か所の突発的歩行動作を含む歩行データによって性能評価を行った結果、検出率、誤検出率、未検出率はそれぞれ87.5 %、16.2%、12.5%であった。急に歩行の向きを変える・立ち止まる・歩行速度が変化するといった突発的歩行動作は検出しやすいが、ふらつきについては向きの変化等を用いる必要あり、今後抽出手法改良を進める。
音声ナビについては、GPS、PDR、及びBLEを用いたハイブリッド測位による屋内外シームレスナビゲーションを実現し、2月の被験者実験に適用する。また、音声ガイドの構造や構成については、フランスINRIAやEO Guidage社での国際動向調査に基づき、従来のPOI(Point of Interest)とは異なる歩行経路特徴(POR: Point of Reference)の考え方を導入した。具体的には、POR確認インタラクションを音声ガイドに追加し、モビリティスキルの確認及びモビリティスキルを用いた手動測位に活用した。また、白杖歩行と盲導犬歩行の特性の違いの1つである歩行速度に応じて音声ガイド提供タイミングを変更した。
さらに触軌跡の作成システムの自動化を進め、歩行終了から触軌跡提供までの時間を短縮し、即時性の高いフィードバックを可能とした。
結論
白杖歩行と盲導犬歩行の相違を考慮したPDRを用いたスマートフォンベースの屋内外シームレス音声ナビの開発と実証、触地図・触軌跡の作成システムの自動化、及び歩行の質の評価指標設計とその自動計測を進めることができた。POR確認インタラクションを音声ガイドに導入し、モビリティスキルの確認及びモビリティスキルを用いた手動測位に活用した。これらの研究成果は、歩行訓練と評価との間の情報循環支援の将来的な実現に寄与することが期待できるため、日常生活や訓練現場にどのように本研究成果を導入するかといった今後の課題について引き続き取り組んでいきたい。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201419064B
報告書区分
総合
研究課題名
白杖歩行・盲導犬歩行・同行援護歩行に対応したマルチモーダル情報処理技術に基づく訓練と評価の循環支援
課題番号
H24-感覚-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
蔵田 武志(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 関 喜一(独立行政法人産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門)
  • 興梠 正克(独立行政法人産業技術総合研究所 サービス工学研究センター )
  • 石川 准(静岡県立大学 国際関係学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
スマートフォンの普及により健常者の歩行者ナビアプリ利用が国内外で一般的になりつつあるが、視覚障害者に適したインタフェースが搭載されれば、その視覚障害者への普及も現実味を帯びる。そのため、視覚障害者の外出歩行を取り巻く環境が大きく変化することが想定されるが、無論、歩行訓練カリキュラムや訓練現場もこの変化に適応していく必要がある。
このような背景を踏まえ、本研究では、視覚障害者の多様な歩行形態に対応したナビシステムの開発、それによる歩行評価とその歩行訓練への活用、さらには、訓練と評価との間の情報循環支援の将来的な実現への寄与をその目的とする。
研究方法
音声ナビを用いた白杖歩行や盲導犬歩行がどのように行われるのか、訓練効果の定量評価や訓練と評価との間での情報循環支援につながるようなデータが、音声ナビから歩行中にどの程度得られるのか、といったことは十分に把握されていなかった。そこで、H24年度は、音声ナビや心拍計、脳波計等を用いた歩行実験を白杖歩行、盲導犬歩行の2つの歩行形態に対して実施した。ただし、音声ナビには専用機を用い、歩行状況の計測やその履歴記録のためにも別途複数の機材を装着・携帯する必要があった。H25年度は、それら集約可能な機能を有する低コストで普及させやすい既製品(Android端末)ベースの音声ナビを開発した。また、その利用者(主には訓練生を想定)が歩行ルートを事前に把握すると共に、歩行履歴を振り返って偏軌やルートからの逸脱等を確認するための触地図、触軌跡の作成システムの開発も行った。各システム開発には、ソフトウェア配布や普及促進を考慮し、可能な限りFOSS4G(Free Open Source Software for Geospatial)を活用し、また、触地図はOpenStreetMap(OSM)に基づいて記述することとした。
H26年度は、まず、音声ガイドの構造や構成、提供タイミングに関する検討を進めることを目的とし、POR(Point Of Reference)の導入にも取り組むこととした。H25年度に実施した突発的歩行動作と音声ガイドの分析結果に基づいて、音声ガイド中の突発的歩行動作の自動抽出を進め、安全性指標の定量化を行った。
また、H26年度は、音声ナビ利用者への即時性の高いフィードバックを可能とすることを目的として、H25年度に開発した触軌跡作成システムの自動化を進めた。音声ナビの統合測位エンジンについては、屋内外シームレス測位を実現するために、BLE(Bluetooth Low Energy)によるアンカーポイント測位とPOR確認による手動位置補正を含めた統合測位エンジンの開発を行った。さらに、本研究での各提案や開発システムの有効性や今後の課題を明らかにするため、再度被験者実験を実施し、インタビュー等を通じて議論を深めた。
結果と考察
Android端末ベースの音声ナビと骨伝導ヘッドフォンの組み合わせについては、比較的良い評価を得られた。特に専用機を使わないことによる低コスト化、屋内外利用、さらに歩行指標の自動抽出や歩行評価のための履歴記録が可能になったことはH24年度と比較してH26年度までに改良された点である。屋内外シームレス測位を実現するための統合測位エンジンを実装することにより、800mに及ぶ屋内外ルートでの歩行実験を実現することができた。音声ガイド自体については、自動的な音声ガイドについてはおおむね妥当に機能していた。自動ガイドではなく、聞き直す(リピートする)状況でのガイドの内容には大幅な改善が必要とされた。インタビュー等から示唆されたのは、単に自動ガイドと同様の内容のリピートではなく、自動ガイドよりも情報量を増やしてミクロとマクロ、相対方位と絶対方位といったより構造立てられたガイドの提供の必要性であった。PORについては、白杖歩行か、盲導犬歩行かなどの歩行形態に応じたPOR選択ができるようにしていく必要がある。これは、ルートを案内する音声ガイドでも同様である。触軌跡の評価も高かったと言える。
結論
本研究では、白杖歩行と盲導犬歩行の歩行速度の違いを考慮した屋内外シームレス音声ナビシステムをAndroid端末上に実装することで低コスト化すると共に、履歴記録とその履歴処理の効率化による触軌跡の短時間での提供を実現した。各システムの歩行訓練への導入に必要な普及のしやすさを考慮して、FOSS4GやOSMを活用した。また、音声ガイドの構造を含む音声ガイドの設計や議論だけではなく、POR確認モードの導入も進めた。さらに、歩行評価のための安全性指標と能率性指標の自動抽出について検討し一定の成果を得た。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201419064C

成果

専門的・学術的観点からの成果
後継プロジェクト(JST RISTEX 持続可能な多世代共創社会のデザイン「多世代共創による視覚障害者移動支援システムの開発」、代表:産業技術総合研究所 関 喜一、平成26年11月~平成29年11月)において、継続して視覚障碍者移動支援の研究を推進している。

https://ristex.jst.go.jp/i-gene/projects/h26/project_h26_2.html
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし(後継プロジェクトでの成果あり)

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

収支報告書

文献番号
201419064Z