文献情報
文献番号
201419009A
報告書区分
総括
研究課題名
難病のある人の福祉サービス活用による就労支援についての研究
課題番号
H25-身体・知的-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
- 中島 八十一(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
- 糸山 泰人(学校法人国際医療福祉大学)
- 野田 龍也(奈良県立医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,930,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、難病当事者、就労系福祉サービス機関、就労支援機関等を対象として、難病のある人の就労系福祉サービスの利用実態および就労支援ニーズの調査、就労支援事例の収集を行うことにより、医療を受けながら、福祉サービスを活用して、福祉就労を含む就業生活を送るために必要な地域連携のあり方と支援手法を提言することを目的とする。
研究方法
1)難病当事者3000名に対して就労支援ニーズに関する質問紙調査、加えて2)難病患者を含む重度障害者の在宅における就労移行支援に関する研究、を行った。なお当研究では調査時(平成26年12月)に障害者総合支援法の対象である130疾患を難病と定義した。
結果と考察
1)有効回収は1023通であった。男性29%、女性71%、平均年齢52歳で、難病疾患は68種。障害者手帳は所持38.3%、未所持57.1%であり、所持する手帳の障害種別は身体377、精神21、療育8名(複数回答有り)である。手帳未所持の理由として「必要がない」(56%)のほかに、「取得したくてもとれなかった」(21%)、「制度を知らなかった」(7%)、「取得をすすめられなかった」(7%)があった。また障害者手帳の所持の要因を分析したところ、疾患群による所持率の差が目立ち、視覚系疾患では9割近くが所持していたのに対し、皮膚・結合器疾患や免疫系疾患、消化器系疾患では3割前後の所持率となっている。所持率の差は、疾患の特性による面と、その疾患に関与する主治医やその他の関係者の制度理解の差による面の合成であると考えられ、今後の施策や対応が望まれる。16~64歳の回答者889名の就労状況は、「就労している」52%、「就労していない」47%である。就労していないと回答した415名中「就労したいと思わない」は19%であり、それ以外は「就活中」あるいは「就労したいが難しい」と回答した。就労系福祉サービスの制度について「知っていた」と回答した人は29%にとどまり、69%は知らなかったと回答。「知っていた」と回答した人の制度を知ったきっかけは、当事者団体や難病相談・支援センターが半数を占め、保健所、健康福祉センター、医療機関はあわせて1割程度にとどまった。サービスを知らなかった人の半数が「知りたい」と回答していることからも、診断治療の過程で保健・医療機関において福祉サービスの情報が得られるしくみが必要と考えられる。就労系福祉サービス利用経験者は62名(6%)であり、そのうち半数は難病が障害者総合支援法の対象になった平成25年度以降に利用開始していた。このことは就労系福祉サービスの周知が未だ不十分であるものの、ここ数年で広がりつつある展開期であることを示唆する。未利用者の約3割が利用を検討したいと回答しており、潜在的利用ニーズがあることが明らかとなった。
2)在宅就労移行支援に知見のある専門家で構成した検討委員会を計4回開催し、先進的な実践事例を収集し、既存の在宅支援制度の課題を収集した。その結果在宅における就労移行支援事業では、就労までの全課程を支援し一般就労を果たすという目的を明確とした。また事業対象者は、就労や訓練を阻害する因子が通所困難であること、訓練基本プロセスを、在宅で効果的に実施できること、の2点を満たすものとした。訓練環境に必要なICT環境の整備に付いては事業者負担とした。実施事業所の要件は、就労継続支援事業A型B型の在宅利用に準じ、また設備基準は通所の就労移行支援事業所の基準と同様とした。これらをもとに「在宅における就労移行支援事業ハンドブック」を作成した。
2)在宅就労移行支援に知見のある専門家で構成した検討委員会を計4回開催し、先進的な実践事例を収集し、既存の在宅支援制度の課題を収集した。その結果在宅における就労移行支援事業では、就労までの全課程を支援し一般就労を果たすという目的を明確とした。また事業対象者は、就労や訓練を阻害する因子が通所困難であること、訓練基本プロセスを、在宅で効果的に実施できること、の2点を満たすものとした。訓練環境に必要なICT環境の整備に付いては事業者負担とした。実施事業所の要件は、就労継続支援事業A型B型の在宅利用に準じ、また設備基準は通所の就労移行支援事業所の基準と同様とした。これらをもとに「在宅における就労移行支援事業ハンドブック」を作成した。
結論
1)難病のある人の就労系福祉サービスについて、利用実態とニーズを明らかにした。難病当事者の同サービス認知度は3割未満であり、制度の周知が不十分であると考えられる。また当事者のみならず難病支援者にも制度理解を普及し、特に診断治療の過程で保健・医療機関において福祉サービスの情報が得られるしくみが必要と考えられる。現時点でサービス利用者は少数であるが、利用を検討したいと回答したものは多く、潜在的利用ニーズがあることが明らかとなった。2)難病を含めた重度障害者に対する在宅就労移行支援について検討し、既存の就労移行支援事業実施マニュアル等を参考にして、難病も含めた重度障害者のための「在宅における就労移行支援事業ハンドブック」を刊行した。
公開日・更新日
公開日
2015-06-03
更新日
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