災害時における知的・発達障害を中心とした障害者の福祉サービス・障害福祉施設等の活用と役割に関する研究

文献情報

文献番号
201419005A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時における知的・発達障害を中心とした障害者の福祉サービス・障害福祉施設等の活用と役割に関する研究
課題番号
H24-身体・知的-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金子 健(公益社団法人日本発達障害者連盟)
研究分担者(所属機関)
  • 内山登紀夫(福島大学大学院人間発達文化研究科・児童青年精神医学)
  • 柄谷友香(名城大学都市情報学部都市情報学科都市防災計画学)
  • 吉川かおり(明星大学人文学部障害学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,184,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災は多くの被害をもたらしたが、とりわけ障害のある人々とその家族にとって発災時の被害とその後の影響は、一般の人々を上回る多大なものであった。その詳細を明らかにし、今後予想される災害に向けて、減災を可能にする手立てを講ずるのが本研究の目的である。
3年目である本年度は、これまでの手法を継承し、医療的側面からの調査と分析(研究1)、本人・家族と支援者の現状とニーズの分析(研究2)、障害者施設の事業継続計画策定(研究3)に分けて研究を進め、最終的に支援のためのリーフレットの作成とシンポジウムの開催に取り組んだ。
研究方法
1.研究1(内山班)
震災後の福島県事業において県発達障害者支援センターが実施した被災障害児医療支援事業を利用した知的・発達障害児とその家族を対象に、支援サービスの満足度と放射線不安等による影響について、調査、検討した。
2.研究2(吉川班)
被災した知的障害者とその家族へのヒアリングおよびアンケート調査を行い、支援の在り方を検討した。
3.研究3(柄谷班)
 被災した障害福祉施設職員からのヒアリングとワークショップを蓄積することによって、今後の事業継続計画(BCP)作成の内容について検討した。初年度、次年度の被災地でのヒアリング、ワールドカフェ方式によるワークショップに加え、本年度は東京、神奈川、大阪等でも、研修を行った。
 
結果と考察
1.研究1(内山班)
 震災後に福島県が実施した医療支援事業の満足度は高く、保護者のニーズに応じた支援が提供されていることが伺えた。
また、自閉的特性と震災前後の変化との間には相関がみられ、情緒・行動面での問題や、自閉的行動特性の強い者ほど、震災の影響を受けている様子が見られた。
被災時の体験や車内での避難生活の経験は、障害児とその家族に長期的に強いストレスを生じさせており、発災直後の避難場所等への事前の準備が重要であることが示唆された。
震災後の子どもの状態の改善と保護者のQOLの高さは、社会的関係の満足度と相関しており、そうしたサポート体制の構築と維持が有効といえる。

2.研究2(吉川班)
障害当事者へのグループワークでは、絵カードや写真を使うことの有効性が示された。アンケート調査では、被災した人々の状況と、心的耐性としてのレジリエンス尺度やストレス尺度との関係を分析した。 避難所や車中避難を経験した者は、避難を経験していない者よりレジリエンスが低く、ストレスは高い傾向にある。住居のめどが立っていない者はレジリエンスが低くストレスが高い。また、相談する相手がいないとレジリエンスは低く、ストレスは高くなっており、相談支援の重要性が確認できた。

3.研究3(柄谷班)
 職員の負担感を減ずるため、既に施設等に用意されている消防計画や自衛消防隊を活用し、消防、防災、BCPを統合することが有効であること、疑似体験などを通して災害イメージを職員間で共有することが不可欠であることなどが明らかになった。
 これらを踏まえて、人材育成とBCP作成を融合した研修計画を提案した。
結論
 知的障害、発達障害を有する者とその家族の震災による心理的・精神的影響について、アンケート調査、面接調査をした結果、障害の程度、発災前の相談支援体制の整備状況等と関係することがうかがえた。それぞれの障害に応じた、日常的な相談支援体制の整備が求められる。
 障害児・者の支援施設においては、消防計画などを活用した事業継続計画(BCP)の作成と、災害イメージを共有するための研修が必要である。
 当事者を中心として、地域や学校・施設において、個別の支援計画の整備・充実を図るとともに、それに基づき事業所においては事業継続計画の策定と研修が不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201419005B
報告書区分
総合
研究課題名
災害時における知的・発達障害を中心とした障害者の福祉サービス・障害福祉施設等の活用と役割に関する研究
課題番号
H24-身体・知的-一般-009
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金子 健(公益社団法人日本発達障害者連盟)
研究分担者(所属機関)
  • 内山登紀夫(福島大学大学院人間発達文化研究科・児童青年精神医学)
  • 柄谷友香(名城大学都市情報学部都市情報学科都市防災計画学)
  • 吉川かおり(明星大学人文学部障害学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
東日本大震災は多くの被害をもたらしたが、とりわけ障害のある人々とその家族にとって発災時の被害とその後の影響は、一般の人々を上回る多大なものであった。その詳細を明らかにし、今後予想される災害に向けて、減災を可能にする手立てを講ずるのが本研究の目的である。
 知的障害、発達障害のある当事者とその家族を対象にした面接調査、グループワーク、アンケート調査、さらに福祉施設職員を対象にしたワークショップなどを通して、発災時の困難な状況、ニーズと支援のあるべき姿を明らかにするため、医療的側面からの調査と分析(研究1)、本人・家族と支援者の現状とニーズの分析(研究2)、障害者施設の事業継続計画策定(研究3)に分けて研究を進め、最終的に支援のためのリーフレットの作成とシンポジウムの開催に取り組んだ。
研究方法
1.研究1(内山班)
震災後の福島県事業において県発達障害者支援センターが実施した被災障害児医療支援事業を利用した知的・発達障害児とその家族を対象に、支援サービスの満足度と放射線不安等による影響について、調査、検討した。
2.研究2(吉川班)
被災した知的障害者とその家族へのヒアリングおよびアンケート調査を行い、支援の在り方を検討した。
3.研究3(柄谷班)
 被災地域の障害福祉施設を対象として、発災直後から再建に至る災害対応プロセスをエスノグラフィ調査により把握し、今後の事業継続計画(BCP)作成の内容について検討した。初年度、次年度の被災地でのヒアリング、ワールドカフェ方式によるワークショップに加え、最終年度は東京、神奈川、大阪等でも、研修を行った。
結果と考察
1.研究1(内山班)
 震災後に福島県が実施した医療支援事業の満足度は高く、保護者のニーズに応じた支援が提供されていることが伺えた。自閉的特性と震災前後の変化との間には相関がみられ、情緒・行動面での問題や、自閉的行動特性の強い者ほど、震災の影響を受けている様子が見られた。
 被災時の体験や車内での避難生活の経験は、障害児とその家族に長期的に強いストレスを生じさせており、発災直後の避難場所等への事前の準備が重要であることが示唆された。
 震災後の子どもの状態の改善と保護者のQOLの高さは、社会的関係の満足度と相関しており、そうしたサポート体制の構築と維持が有効といえる。

2.研究2(吉川班)
 障害当事者へのグループワークでは、絵カードや写真を使うことの有効性が示された。アンケート調査では、被災した人々の状況と、心的耐性としてのレジリエンス尺度やストレス尺度との関係を分析した。避難所や車中非難を経験した者は、避難を経験していないものよりレジリエンスが低く、ストレスは高い傾向にある。住居のめどが立っていない者はレジリエンスが低くストレスが高い。また、相談する相手がいないとレジリエンスは低く、ストレスは高くなっており、相談支援の重要性が確認できた。
 日頃からの親の会や行政による相談支援のネットワークの構築、それを活用した普段からの高い自己肯定感とレジリエンスの維持、ストレスマネジメントの形成などが災害時に重要な意味を持つといえる。

3.研究3(柄谷班)
 BCPの作成に当たっては、職員の負担感を減ずるため、既に施設等に用意されている消防計画や自衛消防隊を活用し、消防、防災、BCPを統合することが有効であること、疑似体験などを通して災害イメージを職員間で共有することが不可欠であることなどが明らかになった。
 これらを踏まえて、人材育成とBCP作成を融合した研修計画を提案した。
結論
 3年度にわたる本研究では、知的障害・発達障害の当事者とその家族に対する相談システムなど、社会的支援のネットワークの有効性が改めて示唆された。
 また、BCP作成に当たっては、既存の消防計画などの活用と、災害イメージの共有を含む研修が必要であることが確認された。
 これらの知見を含めた啓発冊子を作成したが、それを活用したワークショップを開催して、普及に努めること、そして何よりも、地域社会における日頃からの障害者とその家族を含めた相互支援ネットワークの構築が、今後の課題である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201419005C

収支報告書

文献番号
201419005Z