障害者のスポーツにおける障害と種目特性に関連した競技力向上等に関わる研究

文献情報

文献番号
201419001A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者のスポーツにおける障害と種目特性に関連した競技力向上等に関わる研究
課題番号
H24-身体・知的-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 緒方 徹(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 冨安 幸志(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 樋口 幸治(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 岩渕 典仁(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 山下 文弥(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 徳井 亜加根(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 星野 元訓(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中村 喜彦(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中澤 公孝(東京大学 大学院)
  • 木下 裕光(筑波技術大学 保健科学部)
  • 石塚 和重(筑波技術大学 保健科学部)
  • 香田 泰子(筑波技術大学 保健科学部)
  • 福永 克己(筑波技術大学 保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
5,789,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者の競技スポーツにおける競技力等の向上の問題点を明らかにし、障害や種目特性に配慮した介入方法を検討することを目的とした研究である。
本年度は、障害・競技特性に配慮した介入研究に基づくプログラムの試行、安全確保と競技力向上に関する実態調査、スポーツ用装具の適合と有効性に関する取り組みを行った。
研究方法
障害および種目特性を考慮したトレーニング・プログラムの試行:対象は、車いす陸上競技選手男性5名、車いすバスケットボール選手女性1名、ウィルチェアーラグビー選手男性1名、脳性麻痺7人制サッカー選手男性1名、視覚障害陸上競技選手女性1名の計9名であった。介入期間は、それぞれの種目の1~2シーズン(3ヶ月~24ヶ月)であった。測定は、総合的メディカル・チェック項目および運動負荷テストを介入前後に行った。トレーニングおよびコンディショニング・プログラムの試行は、対象選手の種目および障害特性を勘案し、運動負荷テスト時の血中乳酸濃度の変化を用いた全身持久力向上、コンディショニングおよびスポーツ障害予防、瞬発力向上とした。
安全確保と競技力向上に関する実態調査:視覚障害者5人制サッカー日本代表候補選手に対して、体力・運動機能に関する調査を行った。調査項目は、体力テスト、最大酸素摂取量、下肢筋力、バランス能力、全身反応時間、キック動作解析であった。
スポーツ用装具の適合:褥瘡既往歴を持つ脊髄損傷完全麻痺者2名を対象に接触圧力分布を基に被験者に合わせてクッションを製作、模擬競技動作を行い、接触圧力を分散するように加工し、本人の主観的評価も交えて調整を行った。アイスレッジホッケー選手で脊髄損傷者1名に、従来型に対して身体支持形状と材料剛性を向上させた試作型を製作し、模擬動作にて検証、変形量の減少から、剛性の向上を確認した。チェアスキー用バケットシートの適合を、運動制御性に関して定量的手法を用いて、C7頚髄損傷者1名、健常者1名を対象にバケットシートに求められる最適条件の抽出を行った。
片側上腕切断者に、義手装着の有無と義手の種類(重量)の違いによる静止立位や歩行時の姿勢変化について3次元動作解析を行った。
結果と考察
本年度は、障害・競技特性に配慮した介入研究に基づくプログラムの試行、安全確保と競技力向上に関する実態調査、スポーツ用装具の適合と有効性に関する取り組みを行った。障害および種目特性を考慮したトレーニング・プログラムの試行では、障害特性や受傷要因に基づく、何らかの異状を障害者スポーツ選手は抱えていることが明らかとなった。また、競技以外の生活行動への支援も競技成績へ影響を与えた。これらのことから、一般的に用いられているトレーニング指標は、障害者スポーツ選手にも活用できる可能性はあるが、種目・障害特性を勘案した場合、活用困難な項目があることが明らかとなった。つまり、障害者スポーツ選手には、種目特性に基づいた要素に、障害特性を十分に加味したオーダー・プログラムが必要不可欠な選手が存在することが考えられた。
安全確保と競技力向上に関する実態調査では、各種データが選手の体力・運動機能評価,タレント発掘等を行う上で参考となる基礎資料となりうること、また、各種の測定に際しては,障害特性に配慮し、効率的な評価方法について更に検討を要すること、さらに、キック動作については、選手の競技力向上に寄与できる研究を推進する必要があることが示唆された.今後,障害者スポーツ選手の競技力向上、障害者スポーツの普及・発展ためには、医・科支援により、障害特性や競技特性に配慮しつつ,効率的な体力・運動機能の測定方法を導入し、タレント発掘を含む選手育成・強化システムを構築することが課題であり、継続して調査・研究を行う必要があると考えられた。
スポーツ用装具の適合では、バケットシートの運動制御性に関して定量的手法を用いて検討しバケットシート製作における指標のひとつを提示することができた。また、スポーツ用義肢の有効性に関しては、片側上腕切断者において、義手の装着が静止立位や歩行時の姿勢への影響を3次元動作解析で分析し、これまで義肢を装着せずに行われていた競技においても、義肢を装着することにより左右の非対称性が改善され、効率の良い運動が行えることが期待できることを明らかにした。
結論
障害者スポーツ選手の競技力向上には、トレーニングやコンディショニングの支援環境および競技環境に加え、スポーツ用具とのバランスが競技力に深く関連していることが考えられた。
これらのことから、障害と種目特性に関連した競技力向上等には、総合的な医科学支援システムの早急な構築と各専門分野の連携が必須であることが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201419001B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者のスポーツにおける障害と種目特性に関連した競技力向上等に関わる研究
課題番号
H24-身体・知的-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 緒方 徹(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 冨安 幸志(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 樋口 幸治(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 岩渕 典仁(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 山下 文弥(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 徳井 亜加根(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 星野 元訓(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中村 喜彦(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 中澤 公孝(東京大学 大学院)
  • 木下 裕光(筑波技術大学 保健科学部)
  • 石塚 和重(筑波技術大学 保健科学部)
  • 香田 泰子(筑波技術大学 保健科学部)
  • 福永 克己(筑波技術大学 保健科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 障害者対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害者の競技スポーツにおける競技力等の向上の問題点を明らかにし、障害や種目特性に配慮した介入方法を検討することを目的とした。
研究方法
(1)スポーツ競技者の競技力向上に関する実態調査(1年目)
一定レベルの競技力を有するスポーツ選手の現状を総合的メディカルチェック及び問診・アンケート調査を実施した。
(2)障害・競技特性に基づく運動生理学的手法を活用したトレーニングやコンディショニング法及び二次障害予防法の提示(1~2年目)
障害特有の運動生理学的反応を明確にし、トレーニングやコンディショニング方法および二次障害予防プログラムの提示を行った。
(3)障害・競技特性に基づく競技力向上等に関わる介入研究による検証(2~3年目)
得られたデータから、障害や競技特性に基づいたプログラムを提案・介入した。
結果と考察
障害者スポーツ・アスリートのメディカルチェックでは、障害、種目や性別による特性があった。スポーツ外傷・障害では、オーバーワークを主要とするスポーツ傷害が多く、予防や装具の認知・装着率も不十分であった。また、健常者と同様なスポーツ種目では、要因が異なる外傷が発生し、スポーツ競技歴、競技環境の未整備が現状であった。トレーニングでは、選手の練習環境や外的環境要因の変化が大きく影響していた。また、到達体力レベルの不十分さ、障害特性に添った測定評価方法の開発、医科学サポート体制の整備が必要であることが考えられた。
トレーニング・プログラムの試行では、障害者スポーツ選手には、種目特性および障害特性を十分に加味したオーダー・プログラムが必要不可欠な選手が存在することが考えられた。
安全確保と競技力向上に関する実態調査では、医・科支援により、障害特性や競技特性に配慮しつつ、効率的な体力・運動機能の測定方法を導入し、タレント発掘を含む選手育成・強化システムを構築することが検討課題であると考えられた。
スポーツ用具では、種目特性に基づいた衝撃吸収性、低反発性、快適性に優れたプロテクターを開発し、バケットシート適合では、背シート高と体幹可動域との相関関係を明らかにした。障害特有の合併症への影響をクッションから検討し、特定の部位への圧力集中が確認でき、障害に起因する身体形状の特徴を可視化・定量化し有用な評価指標を得た。このように競技力向上には、強化支援環境に加え、スポーツ用具とのバランスが深く関連していることが考えられた。スポーツ用装具適合では、バケットシートの運動制御性に関して定量的手法を用いて検討しバケットシート製作における指標のひとつを提示することができた。スポーツ用具の有効性では、片側上腕切断者で、義肢を装着することにより左右の非対称性が改善され、効率の良い運動が行えることが期待できることを明らかにした。
つまり、障害者スポーツ選手の競技力向上には、トレーニングやコンディショニングの支援環境および競技環境に加え、スポーツ用具とのバランスが競技力に深く関連していることが考えられた。
これらのことから、障害と種目特性に関連した競技力向上等には、総合的な医科学支援システムの早急な構築と各専門分野の連携が必須であることが明らかとなった。
結論
本研究は、3年間の期間で、①各競技種目を行っている選手のメディカルチェック、②それに基づくトレーニング・コンディショニングへの試行、種目特性に特化したスポーツ障害アンケート、③種目特性に基づいたスポーツ用具の開発に取り組んだ。
メディカルチェックでは、障害、種目および性別による特性が認められ、トレーニング・コンディショニング場面では、選手の練習環境や外的環境要因の変化が大きく影響していた。また、健常者の同様なスポーツ種目では、要因が異なる外傷が発生し、スポーツ競技歴、競技環境の未整備が現状であった。その一方で、種目特性に関する動作解析やフィールドテストでは、より効率の良い測定方法を導入し、十分な解析が今後の課題である。
スポーツ用具関連では、力学的、生理学的、主観的評価に基づいたプロテクター開発、バケットシート適合、障害特有の合併症への影響を加味したクッションなど、障害に起因する身体形状の特徴を可視化と定量化により有用な評価指標を得た。
このように競技力向上には、トレーニングやコンディショニングおよび環境に加え、スポーツ用具とのバランスが深く関連していることが考えられた。
これらのことから、総合的な医科学支援システムの構築と各専門分野の連携が、障害と種目特性に関連した競技力向上等を推し進め、更に、多くの障害者にとってスポーツを一般化することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-09-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201419001C

収支報告書

文献番号
201419001Z