BPSDの予防法と発現機序に基づいた治療法・対応法の開発研究

文献情報

文献番号
201418005A
報告書区分
総括
研究課題名
BPSDの予防法と発現機序に基づいた治療法・対応法の開発研究
課題番号
H25-認知症-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
数井 裕光(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田中 稔久(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 池田 学(国立大学法人熊本大学大学院 神経精神医学科)
  • 森 悦朗(国立大学法人東北大学大学院 行動神経学)
  • 谷向 知(国立大学法人愛媛大学大学院 老年精神医学)
  • 横山 和正(社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団兵庫県立西播磨総合リハビリテーションセンター 神経内科学)
  • 足立 浩祥(大阪大学医学部附属病院・睡眠医療センター )
  • 遠藤 英俊(独立行政法人国立長寿医療研究センター 老年医学)
  • 山本 泰司(国立大学法人神戸大学大学院 老年精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
6,708,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症患者に認められる心理行動症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)は認知症とその家族の生活の質を脅かす重要な症状である。一度出現したBPSDを対処することは困難なことが多い。またBPSDに対する対応法は介護する人の個人的な経験に基づいて選択されているのが現状であるため効果が浮動的である。そこで本研究では、BPSDの予防法を開発する。またBPSDの発現機序を解明し、その知見に基づいた有効性の高いBPSD対応法を開発する。
研究方法
(1)BPSD予防法の開発
1.介護サービスによるBPSD予防(数井、遠藤):大阪府社会福祉協議会に属する介護事業所452とその他1施設を対象にNPIの下位項目別に有効と考えられる介護サービスをアンケート調査で明らかにした。
2.MCI患者のBPSDの脳内基盤の検討(田中):MCIでもっとも高頻度のアパシーの脳内基盤を84例のMCI患者で検討した。
3.睡眠障害と他のBPSDとの関係の検討(足立):初年度に収集したデータから、848名のAD患者データを抽出して睡眠障害と他のBPSDとの関連を検討した。
(2)対応困難なBPSDの発現機序の解明と発現機序に基づいた治療法、対応法の開発
各分担研究者が治療・対応困難なBPSDに対する対応法、マニュアルを原因疾患別に作成した。
4.ADの妄想(池田):嫉妬妄想をとりあげ、初年度に熊本県で実施した調査結果ならびに認知症患者の嫉妬妄想に関する過去の研究の結果から、嫉妬妄想の危険因子、臨床特徴を抽出した。
5.VaDの無為、うつ(横山):通院リハビリテーション療法の、精神症状、日常生活動作、家族の介護負担に対する効果と介入が有効な症例の特徴を明らかにした。
6.DLBの幻視、誤認(森):ノイズ版パレイドリア誘発テストを作成し標準化した。
7.FTLDの脱抑制、食行動異常(谷向):縦断的に観察できた10症例のデータからそれぞれの症状がいつどのように出現するか明らかにした。
8.鑑別診断を促進するための方法の検討(山本)
結果と考察
(1)BPSD予防法の開発
1.調査の結果、妄想、幻覚に対しては通所介護、不安に対しては訪問介護や訪問看護、無為に対しては訪問介護と通所介護が有用であることが明らかになった。この結果を、初年度に作成したBPSD出現予測マップに併記する予定である。
2.MCIの段階からアパシーは器質的脳損傷に由来していることが明らかになり、薬物治療が必要である可能性が示唆された。
3.CDR0.5の段階で、妄想、幻覚、興奮、不安、無為、脱抑制、易怒性、および異常行動の得点が、睡眠障害を有する群の方が、有意に高かった。そしてこの傾向は認知症が重症になるとともに小さくなった。このことより認知症が軽い段階にこそ睡眠障害を治療し、他のBPSDを軽減させることが重要と考えられた。
(2)対応困難なBPSDの発現機序の解明と発現機序に基づいた治療法、対応法の開発
4.抽出された危険因子、臨床特徴を基に嫉妬妄想治療ガイドラインを作成した。
5.治療前に興奮、脱抑制、易刺激性が強いVaD患者では、治療により介護負担が増大する傾向を認め、本治療に適した患者にのみ実施することが重要と考えられた。
6.ノイズ版パレイドリア誘発テストを認知症専門医に広く配布した。また幻視などの異常体験の発現機序を説明して、不安を軽減させる教育的精神療法を開発した。
7.FTLDの脱抑制、食行動異常の症例について、平均9年後にはKluver-Bucy症候群と考えられる異食を高頻度に認められることが明らかになり、マニュアルに加えるべきと考えた。
8.物忘れ質問票を元に、認知症の早期診断のための問診票を開発し試験的に使用したが、実用に足りるレベルには至っていなかった。

結論
今年度(2年目)までの成果物としては、1.BPSD出現予測マップ、2.BPSD別の有用な介護サービス一覧、3.嫉妬妄想に対する治療ガイドライン、4.ノイズ版パレイドリアテストがあげられる。この中で3と4については欧文論文としても発表した。また4.は認知症専門医が使用できるように配布した。そして1、2、および5.睡眠障害の他のBPSDに対する影響と6.MCIのアパシーの脳内基盤の解明研究に関しては、現在欧文論文執筆中である。その他、DLBに対する教育的精神療法、VaDに対する通院リハビリテーション療法、FTLDに対するルーチン化療法の最適な方法や制限に関する知見を今年度は集積できた。以上のように、本研究の成果は研究計画通り得られており、順調に進捗している。

公開日・更新日

公開日
2016-03-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2016-03-22
更新日
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収支報告書

文献番号
201418005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,720,000円
(2)補助金確定額
8,720,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,636,257円
人件費・謝金 2,948,736円
旅費 1,633,991円
その他 489,016円
間接経費 2,012,000円
合計 8,720,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-03-22
更新日
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