要介護高齢者等の口腔機能および口腔の健康状態の改善ならびに食生活の質の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201417012A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護高齢者等の口腔機能および口腔の健康状態の改善ならびに食生活の質の向上に関する研究
課題番号
H25-長寿-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
平野 浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 飯島勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
  • 大渕修一(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所 )
  • 田中弥生(駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科)
  • 河相安彦(日本大学松戸歯学部歯科補綴学)
  • 弘中祥司(昭和大学歯学部スペシャルニーズ口腔医学講座口腔衛生学部門)
  • 渡邊 裕(国立長寿医療研究センター口腔医療開発室)
  • 恒石美登里(公益社団法人日本歯科医師会・日本歯科総合研究機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
17,114,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班で「包括的口腔機能低下モデル」を考案した。本モデルは口腔機能低下を,高齢者の日常生活,運動器等も包含した包括的な視点(生活環境,老化,疾患など)からとらえ,「食生活の自立の崩れ」に至る様々な問題が顕在化する前段階からのモデルである。本モデルを基軸として、課題1:効果的なサービス提供に資する口腔に関する評価法の提示が不十分、課題2:対象の特性に基づいた効果的でかつ効果が実感し得る口腔関連プログラムの提示が不十分、以上2課題に対する解決策を提示することを目的に以下2研究を行う。
研究方法
研究1:虚弱(フレイル)から要支援・介護高齢者口腔に関する評価法の考案
対象:地域在住高齢者(要支援・要介護高齢者含む),施設入所高齢者,約3500人(地域在住高齢者約2000人,要介護高齢者約1500人)
調査内容:基礎情報,身体計測,体力測定,認知機能,栄養状態,食事環境,口腔機能など)を用い,年齢、介護度,認知症重症度,性差
研究2:複合プログラム(口腔・栄養・運動)の効果的な提供方法に関する研究
二次予防対象者124名、通所介護事業所利用高齢者124名を対象に,口腔機能向上,栄養改善(単独群)およびそれらサービスの複合(複合群)の検討を行った。
結果と考察
研究1:虚弱(フレイル)から要支援・介護高齢者口腔に関する評価法の考案
(地域在住高齢者)
75歳以降の後期高齢者健診においては、咀嚼機能や発音機能および嚥下機能等を総合的に診断できる項目を歯科健診として取り入れる必要があると思われた.
現在歯を20歯以上有する場合には,歯周疾患の簡易的なスクリーニング方法として,前歯部の歯肉炎症状態を把握するPMA Indexは有用ではないかと考えらえる.
サルコぺニアの重度化と咀嚼機能との間には歯数や咬合力よりも強い関連性があることが示された.
客観的口腔機能と主観的口腔機能との乖離に抑うつが関連していた.
四肢SMI低下と関連する因子として, 男女ともに主に後期高齢者への移行とオーラルディアドコキネシスの低下が挙げられた.
多変量解析の結果、四肢SMI低下群が維持群に比べ安静時の咬筋厚が有意に少ない傾向があることが判明した.
サルコペニアの関連因子として後期高齢者,BMI <20.0kg/m2,貧血,低認知機能,低咀嚼機能,SNAQ < 14 pointsに有意差を認めた.
エネルギー消費量の評価指標:REEを測定することにより、著しく代謝が低い対象者や病的レベルで代謝が高い対象者をスクリーニングできる可能性が占めされた。
(要介護高齢者)
性別,年齢で調整したオッズ比を求めた結果,「舌運動」,「リンシング」,「骨格筋量」が有意に嚥下機能と関連していた.
AD高齢者を対象に,現在臨床応用されている複数の栄養指標・体組成指標を比較検討し,全ての指標において重症度と共に有意に低下を示した。
AD高齢者の骨格筋量低下にはADの重度化のほか,嚥下機能低下も関連することが示唆された.
2年間の追跡データにて嚥下機能低下の背景因子の検討を行い、性別,体格指数(BMI),ガーグリングの可否,プラークの付着状況に有意な相関を認めた.
FASTを基軸に,口腔機能,摂食嚥下機能,栄養状態の1年間の追跡機関での経年比較を行った.認知症の原因疾患によって,また認知症のステージによって同じ一年間でも機能低下の様相は異なるということが示唆された.
地域在住高齢者と要介護高齢者を対象に栄養状態の検討を行った.1)全体の比較では, BMI,SMI,FFMIおよびアルブミン値において要介護高齢者に比べて地域在住高齢者で有意に高値を示した.2)男性では前期後期高齢者ともにBMI,SMI,FFMI,アルブミン値が地域在住高齢者で有意に高値を示し,女性では前期高齢者においてアルブミン値が,後期高齢者はSMI,アルブミン値が地域在住高齢者で有意に高値を示した.
研究2:複合プログラム(口腔・栄養・運動)の効果的な提供方法に関する研究
二次予防高齢者を対象とした、運動,口腔,栄養の介護予防を目的とした複合プログラムにより、食欲向上と食事摂取量の増加において一定の効果が認められた.
通所介護事業所利用高齢者を対象とした複合プログラムによる介入効果検討を行い、QOLの維持向上に効果がある可能性が示唆された.実施体制面において,複合的にサービスを提供した場合は,歯科衛生士と管理栄養士が関わり,互いに情報を共有し,指導内容の調整を行うことで,利用者の抱える問題の解決に向けた多面的なアプローチが可能となることが示唆された.


結論
1、「包括的口腔機能低下モデル」の妥当性の知見を蓄積した(詳細は結果参照)。
2、複合プログラム(口腔・栄養・運動)の有効性を確認し、効果的な提供方法に関しても知見を得た。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-23
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201417012Z