文献情報
文献番号
201413007A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性腎臓病の進行を促進する薬剤等による腎障害の早期診断法と治療法の開発
課題番号
H25-難治等(腎)-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
成田 一衛(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
- 和田 隆志(金沢大学 医薬保健研究域)
- 寺田 典生(高知大学 医学部)
- 山縣 邦弘(筑波大学 医学医療系臨床医学域)
- 横山 仁(金沢医科大学 医学部)
- 斉藤 亮彦(新潟大学 医歯学総合研究科)
- 鶴岡 秀一(日本医科大学 医学研究科 )
- 各務 博(新潟大学 医歯学系 )
- 田邊 嘉也(新潟大学 医歯学総合病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 難治性疾患等克服研究(腎疾患対策研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
9,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本成人8人に1人が慢性腎臓病(CKD)である。CKD患者は、心血管疾患の高リスク群であることは良く知られているが、悪性腫瘍、炎症性疾患、感染症などの疾患も、一般人口と同様か、それ以上の頻度、発症する。
それらの疾患治療に使用される薬剤の多くは、腎排泄性あるいは腎障害性であり、腎機能に応じた投与量や投与間隔の調節、時には中止が必要である。CKD患者は、腎障害に加えて、複数の併発症、合併症を持つことが多いにもかかわらず、必ずしも充分な治療が行われないことが多い。特に、抗菌薬や抗腫瘍薬は、薬効を得るために十分量を使用する必要があるが、CKD患者ではそれが困難となることが多い。しかも、CKD症例で薬剤性腎障害が腎不全への進行を早めることは、腎不全の原疾患として統計の表面上に顕れてはこないが、日常臨床上、高頻度に経験される。
薬剤性腎障害をより早期に診断し、適切な予防・治療を行うことは、CKDの進行を抑制し腎不全の発生を減らすという観点で重要であり、また多様な合併症を有する多くのCKD患者に有効かつ安全な医療を提供するために、重要喫緊の課題である。
過去の調査では、全入院患者のうち、1%が薬剤性腎障害による入院であり、36.5%が非可逆性であったと報告されている。この数は主要診断に基づくものであり、潜在的薬剤性腎障害はさらに多いものと推定される。
薬剤性腎障害の多くが、新たに同定されたトランスポーター分子群やエンドサイトーシス受容体により尿細管細胞に取りこまれた薬剤分子が直接あるいは間接的に細胞障害を起こすことが原因であることが分かってきた。
本研究では、臨床的な実態を明らかにし、薬剤性腎障害に対する施策上の重点的な標的を明確にする。さらに、薬剤性腎障害を分子メカニズムに基づいて体系的に再定義し、その早期診断法と対策を確立し、広く日常臨床で利用できる薬剤性腎障害診療ガイドラインを作成することを目的とする。
それらの疾患治療に使用される薬剤の多くは、腎排泄性あるいは腎障害性であり、腎機能に応じた投与量や投与間隔の調節、時には中止が必要である。CKD患者は、腎障害に加えて、複数の併発症、合併症を持つことが多いにもかかわらず、必ずしも充分な治療が行われないことが多い。特に、抗菌薬や抗腫瘍薬は、薬効を得るために十分量を使用する必要があるが、CKD患者ではそれが困難となることが多い。しかも、CKD症例で薬剤性腎障害が腎不全への進行を早めることは、腎不全の原疾患として統計の表面上に顕れてはこないが、日常臨床上、高頻度に経験される。
薬剤性腎障害をより早期に診断し、適切な予防・治療を行うことは、CKDの進行を抑制し腎不全の発生を減らすという観点で重要であり、また多様な合併症を有する多くのCKD患者に有効かつ安全な医療を提供するために、重要喫緊の課題である。
過去の調査では、全入院患者のうち、1%が薬剤性腎障害による入院であり、36.5%が非可逆性であったと報告されている。この数は主要診断に基づくものであり、潜在的薬剤性腎障害はさらに多いものと推定される。
薬剤性腎障害の多くが、新たに同定されたトランスポーター分子群やエンドサイトーシス受容体により尿細管細胞に取りこまれた薬剤分子が直接あるいは間接的に細胞障害を起こすことが原因であることが分かってきた。
本研究では、臨床的な実態を明らかにし、薬剤性腎障害に対する施策上の重点的な標的を明確にする。さらに、薬剤性腎障害を分子メカニズムに基づいて体系的に再定義し、その早期診断法と対策を確立し、広く日常臨床で利用できる薬剤性腎障害診療ガイドラインを作成することを目的とする。
研究方法
本年度の研究方法は以下の4項目に分類される。
1.臨床的疫学研究
日本腎臓学会のレジストリーを利用して、薬剤性腎障害の発生について全国調査を実施した。正確な発生頻度と危険因子、予後(腎機能および生命)と、行われている治療法を把握した。過去約30年の金沢大学附属病院における薬剤性腎障害の腎生検例の特徴を解析した。
2.早期診断マーカー探索
薬剤性腎障害の早期発見、早期介入のために、腎障害が完成する以前(できれば発症前)に予測できる技術が必要である。個別にVNN-1、尿中メガリン、L-FABP等の有用性を検証した。
3.薬剤性腎障害の予防薬開発
薬剤性腎障害の予防薬の候補化合物として、ALA(5-Aminolevulinic acid)の保護作用を検討した。シスプラチン腎症などに対し、メガリン拮抗薬により薬剤取り込みを阻害すると、腎障害が軽減することを検討した。
4.ガイドライン作成
腎臓病における薬剤投与についての総合的なガイドラインの作成は、章立てとCQ設定を行い、文献検索とシステマティックレビューを開始した。
1.臨床的疫学研究
日本腎臓学会のレジストリーを利用して、薬剤性腎障害の発生について全国調査を実施した。正確な発生頻度と危険因子、予後(腎機能および生命)と、行われている治療法を把握した。過去約30年の金沢大学附属病院における薬剤性腎障害の腎生検例の特徴を解析した。
2.早期診断マーカー探索
薬剤性腎障害の早期発見、早期介入のために、腎障害が完成する以前(できれば発症前)に予測できる技術が必要である。個別にVNN-1、尿中メガリン、L-FABP等の有用性を検証した。
3.薬剤性腎障害の予防薬開発
薬剤性腎障害の予防薬の候補化合物として、ALA(5-Aminolevulinic acid)の保護作用を検討した。シスプラチン腎症などに対し、メガリン拮抗薬により薬剤取り込みを阻害すると、腎障害が軽減することを検討した。
4.ガイドライン作成
腎臓病における薬剤投与についての総合的なガイドラインの作成は、章立てとCQ設定を行い、文献検索とシステマティックレビューを開始した。
結果と考察
薬剤性腎障害の病理組織像を明らかにした。年代により好発する病理組織像が異なることを明らかにした。一施設30年間の腎生検データーベースから、糸球体障害の原因薬剤として抗リウマチ薬が最も多いことを明らかにした。その予後を調査中である。一方、本邦における急速に進む高齢化社会を考慮すると,疾病構造や使用薬剤などが大きく変化していることが示唆された。
新たな早期腎障害マーカーの有用性が示唆された。今後他の既報バイオマーカーも含めた包括的検討をすすめる。シスプラチンによる腎障害を予測するマーカーとして、尿中メガリンの有用性を明らかにした。さらに症例数を増やした前向き研究を開始した。
メガリン拮抗薬により尿細管細胞への薬剤取り込みを阻害すると、腎障害が軽減することを明らかにした。今後国際特許申請、臨床研究を行う。
腎機能に応じた薬剤使い分けや使用量の調節を公表する。章立てとクリニカルクエスチョンの設定ならびに文献検索が終了し、システマティックレビューを開始した。
新たな早期腎障害マーカーの有用性が示唆された。今後他の既報バイオマーカーも含めた包括的検討をすすめる。シスプラチンによる腎障害を予測するマーカーとして、尿中メガリンの有用性を明らかにした。さらに症例数を増やした前向き研究を開始した。
メガリン拮抗薬により尿細管細胞への薬剤取り込みを阻害すると、腎障害が軽減することを明らかにした。今後国際特許申請、臨床研究を行う。
腎機能に応じた薬剤使い分けや使用量の調節を公表する。章立てとクリニカルクエスチョンの設定ならびに文献検索が終了し、システマティックレビューを開始した。
結論
薬剤性腎障害の実態を明らかにした。 薬剤性腎障害の早期マーカーを同定し臨床応用することで、より早期の診断が可能となり、これによる腎不全の発生を未然に防ぐ可能性が高まる。
有効な候補化合物に関して、臨床応用可能なものについて前向き臨床試験を開始するための研究基盤を構築し、新たなエビデンスの発信に貢献する必要がある。
多くの合併症を併発することが多く、しかも十分な薬物治療が不可能なことが多いCKD患者に対して、有効で安全な医療を提供することが必要である。
最終目標に向けては、さらに継続的な大規模かつ包括的な取り組みが必要である。
有効な候補化合物に関して、臨床応用可能なものについて前向き臨床試験を開始するための研究基盤を構築し、新たなエビデンスの発信に貢献する必要がある。
多くの合併症を併発することが多く、しかも十分な薬物治療が不可能なことが多いCKD患者に対して、有効で安全な医療を提供することが必要である。
最終目標に向けては、さらに継続的な大規模かつ包括的な取り組みが必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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