生活習慣病予防のための運動を阻害する要因とその対策に関する研究

文献情報

文献番号
201412015A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病予防のための運動を阻害する要因とその対策に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
下川 宏明(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 坂田 泰彦(東北大学 大学院医学系研究科 )
  • 代田 浩之(順天堂大学大学院 医学研究科 循環器内科学)
  • 安田 聡(国立循環器病研究 センター心臓内科)
  • 門上 俊明(済生会二日市病院 循環器内科)
  • 矢野 雅文(山口大学大学院 器官制御医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、過去6年間の厚生労働省科研費研究(平成18~23年度)により、全国規模の大規模かつ詳細な生活習慣病患者データベースを確立し、既に生活習慣病に対する運動療法の介入研究を行い、様々な理由により十分な運動療法が行えない症例を多く認めることを明らかにしてきた。また、これに続いて身体活動レベルの年次変化が、慢性心不全(CHF)患者の主な心血管イベントの出現への影響を及ぼすかを検討し、ベースラインでの身体活動能と身体活動量の年次変化が、全死亡および心不全による入院治療と関係性があること、身体活動能がCHF患者の予後を改善するための重要な治療ターゲットになり得ることが示された。更に、この度の研究では、同コホート集団を対象に、日本人の生活習慣病予防に必要な運動を阻害する要因を明らかにし、その阻害要因と予後へ及ぼす影響と対策について検討した。
研究方法
本研究では、既に「健康づくりの運動指針2006」を基にした運動療法の指導を行っている20歳以上10,000例の生活習慣病コホート集団において、身体活動量と運動阻害要因を年次アンケートにて調査し、これらと個々の症例の基本データと前向き観察により得られた各種心血管イベント発生のデータを合わせた解析を行った。
結果と考察
StageA/B/C/DのCHF患者およびそのハイリスク群のうち、アンケートにより有効回答が得られた4,968例を対象とした。運動阻害要因項目の集計の結果、整形外科的疾患の存在や特別な運動の必要性を感じないなどの理由が運動阻害要因として特に挙げられる頻度が高く、その他、ソーシャルキャピタル関連の項目も運動阻害要因となりうることも示された。一方、経済的な理由や場所的な理由が阻害要因として挙げられる頻度が比較的低いのも特徴であった。また、調査した運動阻害要因に関して、追跡期間約1年間に発生した全死亡イベントに及ぼす影響について解析を行い、整形外科的疾患以外の疾患の保有やその他の理由が予後不良に関連する一方で、運動阻害要因として挙げられた普段十分に活動していることは良好な予後と関連すること等が示された。更に、これらのアンケート結果の身体活動量評価の項目を参照し、男女毎の身体活動量の中央値(男性; 4.8Ex、女性; 1.3Ex)にて対象を低い体活動量の群(Low-Ex群; 2,506例)と高い身体活動量の群(High-Ex群; 2,462例)の2群に分け、日常の身体活動量のレベルと運動阻害要因の関連性を検討した。High-Ex群に有意に多い阻害因子として特別運動をしなくても十分動いている、Low-Ex群に有意に多い阻害因子として意志が弱く長続きしない、習慣がない、おっくう、面倒くさい、整形外科の病気があるため、その他の病気のためが挙げられ、ベースとなる身体活動レベルの違いにより阻害要因として挙げられる項目に差を認めた。また、先述と同様の全死亡イベントに関する解析を身体活動量2群について行い、整形外科の病気があるため、その他の病気のための該当者はHigh-Ex群において予後不良と関連する一方、特別運動をしなくても十分動いているの項目該当者はLow-Ex群において予後良好と関連を認めた。これらより、身体活動量の高低の2群間で予後に関して差を認め、すなわち、同じ阻害要因を有していても活動量により予後に及ぼす影響にも差が出ることが示唆された。
結論
本研究では、生活習慣病症例における運動阻害因子は多種多様であること、経済的支援や運動場所の確保に比べて、運動意欲向上に向けた指導や、治療・リハビリを含む合併疾患との付き合い方の改善が運動習慣獲得に有効である可能性があることが示された。本研究は、より具体的な運動阻害要因を明らかにすること、効果的な運動療法介入の方策作りを目的に、現在もイベントデータの収集とデータの解析は進行中である。運動阻害要因の頻度や予後への影響に関して、性別による比較や年齢層による比較などを含めた解析を更に進め、運動介入などのターゲットとしてより有効な層などを、今後も検討していく方針である。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

文献情報

文献番号
201412015B
報告書区分
総合
研究課題名
生活習慣病予防のための運動を阻害する要因とその対策に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
下川 宏明(東北大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 坂田 泰彦(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 代田 浩之(順天堂大学大学院 医学研究科 循環器内科学)
  • 安田 聡(国立循環器病研究 センター心臓内科)
  • 門上 俊明(済生会二日市病院 循環器内科)
  • 矢野 雅文(山口大学大学院 器官制御医科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、過去6年間の厚生労働省科研費研究(平成18~23年度)により、全国規模の大規模かつ詳細な生活習慣病患者データベースを確立し、既に生活習慣病に対する運動療法の介入研究を行い、様々な理由により十分な運動療法が行えない症例を多く認めることを明らかにしてきた。本研究では、身体活動レベルの年次変化が、慢性心不全(CHF)患者の主な心血管イベントの出現への影響を及ぼすかを検討した。更に続く研究にて、同コホート集団を対象に、日本人の生活習慣病予防に必要な運動を阻害する要因を明らかにし、その対策について検討した。
研究方法
本研究では、既に「健康づくりの運動指針2006」を基にした運動療法の指導を行っている20歳以上10,000例の生活習慣病コホート集団において、身体活動量と運動阻害要因を年次アンケートにて調査し、これらと個々の症例の基本データと前向き観察により得られた各種心血管イベント発生のデータを合わせた解析を行った。
結果と考察
対象としたのは、アンケートによりベースラインで身体活動量(Ex)のデータが得られたStageA/B/C/DのCHF患者(n=7,292)であり、更に、4,353例の患者で3年間のフォローアップ期間にExの年次変化のデータを解析できた。これら対象を高運動量(高Ex)群と低運動量(低Ex)群に2群化し解析したところ、ベースラインにおける身体活動量は全死亡、心不全による入院治療、その他の心血管イベント発生と関連性が強いことを認めた。続いて、身体活動量の年次変化に関する解析を行い、これについても心不全による入院、心血管イベントに強い関連性を認めた。本研究により、身体活動量がCHF患者の長期予後を改善する治療ターゲットになりうることが示唆された。この結果を踏まえ、運動阻害要因の影響を含めた解析を進めた。対象症例のうち、アンケートにて運動阻害要因について4,968例の有効回答が得られ、整形外科的疾患の存在や特別な運動の必要性を感じないなどの理由が運動阻害要因として特に挙げられる頻度が高く、その他、ソーシャルキャピタル関連の項目も阻害要因となりうることも示された。一方、経済的な理由や場所的な理由が阻害要因として挙げられる頻度が比較的低いのも特徴であった。調査した運動阻害要因に関して、追跡期間約1年間に発生した全死亡イベントへの影響について解析を行い、整形外科的疾患以外の疾患の保有やその他の理由が予後不良に関連する一方で、運動阻害要因として挙げられた普段十分に活動していることはむしろ良好な予後と関連すること等が示された。更に、アンケート結果の身体活動量評価の項目を参照し、男女毎の身体活動量の中央値にて対象を低い体活動量の群(Low-Ex群; 2,506例) と高い身体活動量の群(High-Ex群; 2,462例) の2群に分け、日常の身体活動量のレベルと運動阻害要因の関連性を検討した。High-Ex群に有意に多い阻害因子として特別運動をしなくても十分動いている、Low-Ex群に有意に多い阻害因子として意志が弱く長続きしない、習慣がない、おっくう、面倒くさい、整形外科の病気があるため、その他の病気のためが挙げられ、ベースとなる身体活動レベルの違いにより阻害要因として挙げられる項目に差を認めた。また、先述と同様の全死亡イベントに関する解析を身体活動量2群について行い、整形外科の病気があるため、その他の病気のための該当者はHigh-Ex群において予後不良と関連する一方、特別運動をしなくても十分動いているの項目該当者はLow-Ex群において予後良好と関連を認めた。これらより、身体活動量の高低の2群間で予後に関して差が見られ、すなわち、同じ阻害要因を有していても活動量により予後に及ぼす影響にも差が出ることが示唆された。
結論
身体活動量の年次変化に関する研究では、生活習慣病患者では、経年的に身体活動量が低下していること、ベースラインでの身体活動能と身体活動量の年次変化が、全死亡および心不全による入院治療と関係性があることが示された。これは、身体活動能がCHF患者の予後を改善するための重要な治療ターゲットになり得ることを示唆すると思われる。これに加えて運動阻害要因調査を加えた研究では、生活習慣病症例における運動阻害因子は多種多様であること、経済的支援や運動場所の確保に比べて、運動意欲向上に向けた指導や、治療・リハビリを含む合併疾患との付き合い方の改善が運動習慣獲得に有効である可能性があることが示された。

公開日・更新日

公開日
2015-09-11
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201412015C

収支報告書

文献番号
201412015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,300,000円
(2)補助金確定額
4,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,186,463円
人件費・謝金 0円
旅費 235,330円
その他 1,888,879円
間接経費 990,000円
合計 4,300,672円

備考

備考
自己資金 672円

公開日・更新日

公開日
2015-10-16
更新日
-