文献情報
文献番号
201412014A
報告書区分
総括
研究課題名
生活習慣病予防のための運動を阻害する要因としてのロコモティブシンドロームの評価と対策に関する研究
課題番号
H24-循環器等(生習)-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
- 宮地 元彦(国立健康・栄養研究所)
- 樋口 満(早稲田大学スポーツ科学学術院)
- 村永 信吾(亀田メディカルセンター)
- 竹下 克志(東京大学医学部附属病院 整形外科)
- 松平 浩(東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター)
- 坂口 志朗(佐久総合病院 人間ドック科)
- 緒方 徹(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究者の異動に伴い、
平成26年4月で竹下氏が分担研究者を外れた。分担していた研究および分担研究費は松平氏が引き継いだ。
また、前年度末まで分担研究者であった出浦氏を引き継ぐかたちで、平成26年8月より坂口氏が新たに参加した。
研究報告書(概要版)
研究目的
健康日本21の中で健康寿命の延伸が目標として掲げられ、疾患による死亡率の低減とともに転倒・骨折、認知症による社会生活機能低下の低減が健康政策の中で重要となっている。その具体的なアプローチとしてメタボリックシンドローム(メタボ)を中心とする生活習慣病、ロコモティブシンドローム(ロコモ:運動器症候群)、低体力への対策が考えられる。生活習慣病の予防については、メタボの名称は広く国民に浸透しており、同時に適切な食生活と運動習慣の重要性について一定の認識が得られていると考えられる。しかし、実際に運動習慣を取り入れることが必ずしも容易でない場合が多い。生活習慣病予防のための身体活動・運動を阻害する要因として、社会的要因と身体的要因があげられる。本研究では特定保健指導のフィールドならびに既存の疫学コホートを活用し、生活習慣病予防のための身体活動・運動の実施と運動器の痛みの発現や緩和に関するデータを収集すると同時に、生活習慣病予防を阻害する要因としてのロコモに対する、具体的な対策の確立を目的とする。
研究方法
本研究は都市部と佐久市の二か所に大規模なコホートフィールドを持ち、そこから得られる横断・縦断データをもとにメタボとロコモの関連性についての知見が得られるよう整備されている。また、ロコモとメタボにかかわる複数の専門家を研究班に含み、健康管理における両者の関わりをフィールドデータに基づき議論し、同時にそれをフィールドへの還元を行った。
結果と考察
・ロコモの評価尺度として設定したロコモ度テストについて、その値が介護度や機能的自立度を反映することを確認する臨床データが得られた。要介護に移行する境界領域にある高齢者では歩行機能と立ち上がり機能が低下しており、その程度はそれぞれ2ステップテスト1.1未満、立ち上がりテストで両足20cm立ち上がり不可、ロコモ25質問票で16点で示されることが示された。
・運動習慣のない人に活動量計を提供することで身体活動の増加が得られ、さらにその群における腰痛の発生リスクが運動習慣のある人と同等程度まで軽減したことを見出した。このことから、身体活動・運動の不足が手足や腰の痛みの独立した危険因子であることが示された。
・肥満の背景因子については、中年男性と高齢男性を対象として、肥満に及ぼす遺伝素因、ライフスタイルおよび加齢の影響を検討した。中年男性においては遺伝的リスクよりも、高強度身体活動量時間や三大栄養素のエネルギー比率などのライフスタイル要因が、各肥満指標と強く関連した。
・運動習慣のない人に活動量計を提供することで身体活動の増加が得られ、さらにその群における腰痛の発生リスクが運動習慣のある人と同等程度まで軽減したことを見出した。このことから、身体活動・運動の不足が手足や腰の痛みの独立した危険因子であることが示された。
・肥満の背景因子については、中年男性と高齢男性を対象として、肥満に及ぼす遺伝素因、ライフスタイルおよび加齢の影響を検討した。中年男性においては遺伝的リスクよりも、高強度身体活動量時間や三大栄養素のエネルギー比率などのライフスタイル要因が、各肥満指標と強く関連した。
結論
ロコモを評価する尺度として2013年に日本整形外科学会が発表した「ロコモ度テスト」において一定の基準の値を設定することで、要介護のハイリスク群を同定することができると考えられた。こうして同定された群に対し、さらなる移動機能低下を予防するための介入策を講じることが健康寿命の延伸につながると考えられる。
研究成果を通じて、活動度、肥満、運動器の痛みの三者についての関係が臨床データを通じて明確に示されたと考える。すなわち、活動量の低下は直接、あるいは肥満を介して、運動器の痛みのリスク因子となることが明らかとなった。この結果は運動器の健康維持とメタボ対策を連動させながら進めることが重要である事を裏付けるものである。
今後、本研究を通じて提唱された、ロコモの評価ツール「ロコモ度テスト」の普及によって壮年期から老年期に至るまで、運動器の健康維持に対する意識を高め、活動量を維持することで、メタボと運動器の疼痛をコントロールしていくことが、健康寿命の延伸につながると考えられる。
研究成果を通じて、活動度、肥満、運動器の痛みの三者についての関係が臨床データを通じて明確に示されたと考える。すなわち、活動量の低下は直接、あるいは肥満を介して、運動器の痛みのリスク因子となることが明らかとなった。この結果は運動器の健康維持とメタボ対策を連動させながら進めることが重要である事を裏付けるものである。
今後、本研究を通じて提唱された、ロコモの評価ツール「ロコモ度テスト」の普及によって壮年期から老年期に至るまで、運動器の健康維持に対する意識を高め、活動量を維持することで、メタボと運動器の疼痛をコントロールしていくことが、健康寿命の延伸につながると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2015-09-11
更新日
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