文献情報
文献番号
201411029A
報告書区分
総括
研究課題名
肺癌に対するWT1ペプチド免疫療法の開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H23-実用化(がん)-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
杉山 治夫(大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 奥村 明之進(大阪大学 大学院医学系研究科 )
- 坪井 正博(独立行政法人国立がん研究センター東病院 呼吸器外科)
- 池田 徳彦(東京医科大学 呼吸器外科)
- 鈴木 健司(順天堂大学 呼吸器外科)
- 中山 治彦(神奈川県立がんセンター 呼吸器外科)
- 高濱 誠(大阪市立総合医療センター 呼吸器外科)
- 東山 聖彦(大阪府立成人病センター 呼吸器外科)
- 松村 晃秀(国立病院機構 近畿中央胸部疾患センター 呼吸器外科)
- 前田 元(国立病院機構・ 刀根山病院 呼吸器外科)
- 吉村 雅裕(兵庫県立がんセンター 呼吸器外科)
- 山下 素弘(国立病院機構四国がんセンター 呼吸器外科)
- 竹之山 光広(国立病院機構・ 九州がんセンター 呼吸器外科)
- 吉田 純司(独立行政法人国立がん研究センター東病院 呼吸器外科)
- 熊ノ郷 淳(大阪大学 大学院医学系研究科 )
- 富山 憲幸(大阪大学 大学院医学系研究科 )
- 坂本 純一(東海中央病院)
- 森田 智視(京都大学 大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
26,570,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肺癌は、年々増加の一途をたどっており、手術が施行された患者においても、手術後多くの患者が再発し、死に至る代表的な難治癌であり、肺癌の治療成績の向上が切望されている。既存の治療法の改良のみでは治療成績の飛躍的な向上は望みにくい。このような状況において、既存の治療法とはその作用機序の異なる免疫療法への期待が高まっている。我々は、2001年からトランスレーショナルリサーチとして、WT1ペプチド免疫療法を770人以上の末期がん患者に実施し、本療法が、重篤な副作用を起こさず、末期癌に対して臨床効果を発揮しうる治療法であることを明らかにしてきた。これらの実績から、難治性の高い肺癌に対しても臨床効果が期待されるものと考え、本研究が立案、計画された。本研究は、第I相で安全性評価と推奨用量の決定を行い、ランダム化第II相試験では有用性を評価し、臨床第III相試験(治験)の実施可能性を検討することを目的とする。
研究方法
【研究形式】
第I相:多施設非盲検試験、第II相:盲検的ランダム化試験
主評価項目
第Ⅰ相:有害用量制限毒性(DLT)発現割合、最大耐用量(MTD)の事象発生割合、WT1特異的免疫反応(CTL頻度、DTH、WT1ペプチド抗体)
第Ⅱ相:2年無再発生存割合
副次的評価項目
1年無再発生存割合、無再発生存期間、全生存期間、有害事象発生割合
【対象症例】患者選択規準のうち主なものは、次の通り。1) 脈管侵襲を伴う病理病期IA期およびIB/II期非小細胞肺癌、2) 病理学的に完全切除が確認されている、3) 年齢:20歳以上、4) Performance status (ECOG) 0 ~1、5) 術後補助療法が未施行 6) HLA-A*24:02を有する、7) 肺癌細胞におけるWT1の発現、8) 患者本人からの文書による参加同意
【治療内容】
WT1ペプチドワクチンは、HLA-A*24:02用WT1ペプチドワクチン(WT4869)である。1回につき3mgまたは6mg / bodyを皮下注射する。プラセボ群で用いる製剤は、WT1ペプチドを含まないペプチド溶解液とアジュバントとのエマルジョン製剤である。
治療開始日をDay1とし、Day29まで週1回投与。その後、Day 85まで2週毎に投与を行い、以後、Day 365まで4週毎に投与し、合計19回の投与を行う。
【集積目標症例数】
第I相:WT1ペプチド(WT4869)3mg投与群6例、6mg投与群 6例
第II相: A群:WT1ペプチドワクチン群150例、B群:プラセボ対象群75例と設定した。
なお、症例集積期間2年、最小追跡観察期間2年を予定する。
第I相:多施設非盲検試験、第II相:盲検的ランダム化試験
主評価項目
第Ⅰ相:有害用量制限毒性(DLT)発現割合、最大耐用量(MTD)の事象発生割合、WT1特異的免疫反応(CTL頻度、DTH、WT1ペプチド抗体)
第Ⅱ相:2年無再発生存割合
副次的評価項目
1年無再発生存割合、無再発生存期間、全生存期間、有害事象発生割合
【対象症例】患者選択規準のうち主なものは、次の通り。1) 脈管侵襲を伴う病理病期IA期およびIB/II期非小細胞肺癌、2) 病理学的に完全切除が確認されている、3) 年齢:20歳以上、4) Performance status (ECOG) 0 ~1、5) 術後補助療法が未施行 6) HLA-A*24:02を有する、7) 肺癌細胞におけるWT1の発現、8) 患者本人からの文書による参加同意
【治療内容】
WT1ペプチドワクチンは、HLA-A*24:02用WT1ペプチドワクチン(WT4869)である。1回につき3mgまたは6mg / bodyを皮下注射する。プラセボ群で用いる製剤は、WT1ペプチドを含まないペプチド溶解液とアジュバントとのエマルジョン製剤である。
治療開始日をDay1とし、Day29まで週1回投与。その後、Day 85まで2週毎に投与を行い、以後、Day 365まで4週毎に投与し、合計19回の投与を行う。
【集積目標症例数】
第I相:WT1ペプチド(WT4869)3mg投与群6例、6mg投与群 6例
第II相: A群:WT1ペプチドワクチン群150例、B群:プラセボ対象群75例と設定した。
なお、症例集積期間2年、最小追跡観察期間2年を予定する。
結果と考察
研究結果
I.第I相医師主導治験 実施状況
肺癌に対するWT1ペプチドワクチン医師主導治験は「WT1抗原発現陽性の脈管侵襲を伴う病理病期IA期及びIB/II期非小細胞肺癌完全切除例に対するWT4869のペプチド免疫療法の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験」という実施計画のもと、平成24年8月9日のPMDA対面助言後、本医師主導治験が承認された。
医師主導治験実施のため、事務局、データセンター、モニタリング体制など治験実施体制の構築やSOP・手順書を作成した。第I相部は大阪大学医学部付属病院、国立病院機構近畿中央胸部疾患センターと大阪府立成人病センターで実施された。1例目の登録は平成25年5月27日で平成26年3月17日に目標症例数の12例目が登録され、平成26年5月26日に第I相部の主要評価項目である安全性の観察期間を終了し、目標症例集積数に達した。用量制限毒性の出現はなく、WT4869の安全性が確認された。また免疫反応については3mg投与群6例中4例、6mg投与群6例中3例でWT1特異的CD8+T細胞の増加が観察された。1年無再発生存割合は12例中10例(83%)であった。2015年5月時点で開始後14ヵ月から23ヵ月(中央値 18ヵ月)を経過するが、全例生存している。現在無再発生存期間、全生存期間を現在追跡中である。第II相部分は平成26年度の厚生労働科学研究費補助金に採択されなかったため第I相部のみ施行した。
考察
WT4869の皮下投与は安全でかつWT1特異的細胞傷害性T細胞の誘導ができる事が示された。全生存期間については同一病期を対象としたメタ解析と比較して良好で期待できる結果と思われた。
I.第I相医師主導治験 実施状況
肺癌に対するWT1ペプチドワクチン医師主導治験は「WT1抗原発現陽性の脈管侵襲を伴う病理病期IA期及びIB/II期非小細胞肺癌完全切除例に対するWT4869のペプチド免疫療法の第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験」という実施計画のもと、平成24年8月9日のPMDA対面助言後、本医師主導治験が承認された。
医師主導治験実施のため、事務局、データセンター、モニタリング体制など治験実施体制の構築やSOP・手順書を作成した。第I相部は大阪大学医学部付属病院、国立病院機構近畿中央胸部疾患センターと大阪府立成人病センターで実施された。1例目の登録は平成25年5月27日で平成26年3月17日に目標症例数の12例目が登録され、平成26年5月26日に第I相部の主要評価項目である安全性の観察期間を終了し、目標症例集積数に達した。用量制限毒性の出現はなく、WT4869の安全性が確認された。また免疫反応については3mg投与群6例中4例、6mg投与群6例中3例でWT1特異的CD8+T細胞の増加が観察された。1年無再発生存割合は12例中10例(83%)であった。2015年5月時点で開始後14ヵ月から23ヵ月(中央値 18ヵ月)を経過するが、全例生存している。現在無再発生存期間、全生存期間を現在追跡中である。第II相部分は平成26年度の厚生労働科学研究費補助金に採択されなかったため第I相部のみ施行した。
考察
WT4869の皮下投与は安全でかつWT1特異的細胞傷害性T細胞の誘導ができる事が示された。全生存期間については同一病期を対象としたメタ解析と比較して良好で期待できる結果と思われた。
結論
第I相医師主導治験により、WT4869は安全かつWT1特異的CTLの誘導ができる事が示された。今後の展開については効果増強法を含め計画を検討中である。
公開日・更新日
公開日
2015-09-08
更新日
-