乳幼児突然死症候群(SIDS)および乳幼児突発性危急事態(ALTE)の病態解明等と死亡数減少のための研究

文献情報

文献番号
201410002A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児突然死症候群(SIDS)および乳幼児突発性危急事態(ALTE)の病態解明等と死亡数減少のための研究
課題番号
H26-健やか-一般-002
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 稲子(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 戸苅 創(名古屋市立西部医療センター 新生児医療センター)
  • 高嶋 幸男(学校法人国際医療福祉大学)
  • 中山 雅弘(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター 検査科)
  • 市川 光太郎(地方独立行政法人 北九州市立八幡病院 小児救急センター )
  • 中川 聡(立行政法人国立成育医療研究センター 教育研修部)
  • 山口 清次(国立大学法人島根大学 医学部)
  • 成田 正明(三重大学 医学系研究科)
  • 平野 慎也(大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科)
  • 岩崎 志穂(横浜市立大学附属市民総合医療センター)
  • 山本 琢磨(長崎大学 医学部)
  • 児玉 由紀(宮崎大学医学部不附属病院 総合周産期母子医療センター)
  • 吉永 正夫(国立病院機構 鹿児島医療センター 小児科)
  • 堀米 仁志(筑波大学医学医療系 小児内科)
  • 住友 直方(埼玉医科大学 医学部)
  • 長嶋 正實(あいち小児保健医療総合センター)
  • 清水 渉(日本医科大学 医学部)
  • 堀江 稔(滋賀医科大学)
  • 蒔田 直昌(長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 牛ノ濱 大也(福岡こども病院感染症センター)
  • 田内 宣生(大垣市民病院 小児科)
  • 佐藤 誠一(新潟市民病院 小児科総合周産期母子医療センター)
  • 高橋 秀人(福島県立医科大学 医学部)
  • 酒井 規夫(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 市田 蕗子(富山大学大学院 医学薬学研究部)
  • 岩本 眞理(横浜市立大学付属病院)
  • 野村 裕一(鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 太田 邦雄(金沢大学 医薬保健研究域医学系)
  • 畑 忠善(藤田保健衛生大学大学院 保健学研究科 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
9,091,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
SIDSおよびALTEの発症率軽減を目指して、SIDS, ALTEの病態解明、周産期リスク因子の検討、診断方法の確立、鑑別診断方法の確立、乳児の安全な睡眠環境の検討、有効な啓発方法の検討を目的としている。
研究方法
SIDSは素因的因子、年齢的因子、睡眠関連因子、環境因子などが複雑に絡み合って発症することが示唆されている。病態解明およびリスク因子の検討として、覚醒反応等に関与するセロトニン系神経への胎生期ウィルス感染の影響、胎児徐脈を呈した症例での周産期リスク因子の検討をおこなった。診断に関しては乳児の心肺停止症例に対する外来対応の現状、我が国の解剖診断の現状および倫理的・法的問題について検討した。またSIDS, ALTEの鑑別診断としては、タンデムマススクリーニングを用いた脂肪酸代謝異常症の診断指標の検討、病理標本からの代謝性疾患の鑑別法の検討、解剖症例でのミトコンドリア呼吸鎖異常症の検索方法の検討、遺伝性不整脈については1ヶ月健診時の心電図検査による早期診断法についての検討をおこなった。また保育施設等で問題となっているうつぶせ寝と寝返りの監視体制については、乳児突然死症例における睡眠体位の状況調査、欧州での乳児の安全な睡眠環境についての調査をおこなった。普及啓発方法については両親学級での効果的な情報提供の方法について検討した。
結果と考察
脳内セロトニン神経系は胎内ウィルス感染の時期により影響を受ける可能性があることがラットの実験から判明した。周産期リスク因子の検討では突然の胎児徐脈を呈する症例において子宮内感染の重要性が示唆された。
救急外来に搬送された乳児心肺停止症例では原因検索のための検査としてCTスキャンが最も多く、死後のautopsy imagingとして行われている症例も多かった。shaken baby syndromeなどの診断に有用であるとされる眼底検査は、蘇生により心拍が再開した症例では行われているものの、心拍が再開しなかった症例では頻度が低かった。SIDS診断に不可欠である剖検は医療費の問題、解剖医の不足などにより、地域により剖検率に差はあるものの十分に行われていないのが現状であった。
乳幼児に突然死を来たし得る代謝疾患であるCPT2欠損症はタンデムマスでは発見されない可能性が判明した。生後1ヶ月での心電図検査の結果QT延長症候群にて治療を行った症例を1例認めた。病理組織標本、剖検時の組織を用いた代謝疾患の鑑別では、肝組織標本から脂肪酸代謝異常症、剖検時の繊維芽細胞を用いてミトコンドリア病などの診断が可能であることが示唆された。
我が国の乳児突然死例35例の体位の検討からは生後3ヶ月を過ぎるとうつぶせで発見される症例が認められることが判明した。ベルギーにおいては乳児の睡眠に関してパンフレットが作成されており、室温、乳児ベッドの柵の幅、最初はあおむけに寝かせること、柔らかな寝具を使わないこと、毛布などを顔などにかからないようにすること、Sleeping Bagの使用など、安全な睡眠環境に関する記載がなされていた。保育施設においては、一定の基準はなく各施設が様々な対応をしているのが現状であった。SIDS発症が保育施設への通園開始初期に多いことから環境に慣れるプログラムなども考慮されていた。
SIDSの啓発については蘇生法を組み合わせた講習会を開催したが、過去にテレビ等の映像などで得られた知識が持続しやすい結果であった。
結論
SIDSの病態については、出生後のリスク因子だけでなく胎生期におけるリスク因子も関与する可能性が示唆された。胎生期のウィルス感染により覚醒反応の発達過程に関連すると考えられているセロトニン神経系に異常をきたす可能性があることは、SIDS発症リスクの予測にも繋がる可能性が考えられる。また突然の胎児死亡や神経学的後障害の症例における胎児心拍パターンの解析により、胎児期新生児期の急変あるいは突然死を防ぐことが可能かどうかについても検討していく。
SIDS、ALTEの診断については、特にALTEの定義が改訂され多岐に渡る原因が含まれることとなったこともあり、それぞれ症例における原因究明が必要である。SIDS診断に必要な剖検の頻度は低く、解剖制度の整備とともに代謝疾患、不整脈疾患などの鑑別を含め、SIDS/ALTEの検査診断方法の確立が重要である。
これまでに乳児の寝かせ方に関する欧米諸国の情報収集を行ってきた。各国の文化の違い、寝かせ方の歴史的な違いにより、各国の対応には少しずつ差が認められた。米国、豪州、欧州での調査結果と合わせて我が国における安全な寝かせ方について検討していく必要がある。
啓発方法については映像などを用いて情報が印象に残りやすい形での啓発が有効であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201410002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
9,981,000円
差引額 [(1)-(2)]
19,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,851,664円
人件費・謝金 1,116,366円
旅費 1,992,331円
その他 1,112,439円
間接経費 909,000円
合計 9,981,800円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-