小児摂食障害におけるアウトカム尺度の開発に関する研究 -学校保健における思春期やせの早期発見システム構築、および発症要因と予後因子の抽出に向けて-

文献情報

文献番号
201410001A
報告書区分
総括
研究課題名
小児摂食障害におけるアウトカム尺度の開発に関する研究 -学校保健における思春期やせの早期発見システム構築、および発症要因と予後因子の抽出に向けて-
課題番号
H26-健やか-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
内田 創(東京都立小児総合医療センター 心療小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 深井 善光(東京都立小児総合医療センター 心療小児科)
  • 永光 信一郎(久留米大学医学部 小児科)
  • 角間 辰之(久留米大学バイオ統計センター)
  • 作田 亮一(獨協医科大学越谷病院 小児科)
  • 井口 敏之(星ヶ丘マタニティ病院 小児科)
  • 小柳 憲司(長崎県立こども医療福祉センター)
  • 北山 真次(神戸大学医学部附属病院)
  • 岡田 あゆみ(土居 あゆみ)(岡山大学病院小児医療センター 子どものこころ診療部)
  • 井上 建(獨協医科大学越谷病院 小児科)
  • 鈴木 雄一(福島医科大学病院 小児科)
  • 鈴木 由紀(国立病院機構三重病院 小児科)
  • 須見 よし乃(札幌医科大学付属病院 小児科)
  • 高宮 静男(西神戸医療センター 精神神経科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 【補助金】 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本邦における思春期のやせ傾向は、先進国の中でも進んでおり、不健康なやせの比率は成人において12.3%と高率である。思春期のやせは,自身の健康被害の影響の他に,次世代への影響が危惧されている。思春期のやせの早期発見システムの確立と思春期やせ症の予後に影響を与える因子の解明は、思春期やせ症の増加を抑制し、国民の健康増進を推進するうえで重要な課題である。従って、まずは広く一般的に判断できる方法として摂食態度を包括的に評価できる26項目からなる思春期のやせ願望・食事態度についての質問紙(Children’s version of Eating Attitudes Test 26 (EAT-26))の日本語版の標準化をおこない、従来のBMI値や心拍数と組み合わせることによって学校保健において思春期やせ症の早期発見に有用なツールとしていくこと。そしてアウトカムの解析をおこなって、83項目の家庭要因、生活環境、個人特性、学校環境など発症や予後に影響を与える心理社会的因子を抽出し、さらにEAT-26やBMI値の変化と比較して改善もしくは悪化傾向を示す指標を作ることで、様々な病態や治療法がある思春期やせ症の適切な早期介入や、慢性化・再発の予防につながっていくと思われる。
研究方法
3年間の研究期間中に以下の点について明らかにする事で、思春期やせ症とそれに伴う心身の二次的健康被害の防止を行政的施策とする。①学校保健における思春期やせ症の早期発見システムの構築(2014,2015年度)②やせを来す要因の解析(2015年度)③思春期やせ症の予後に影響を与える因子を分析(2016年度)2014年度は諸外国で汎用されている質問紙EAT-26の日本語版を原著の許可を得て作成した。すでに取得済みの7,000人分の母集団データーを解析し、標準化の作業をおこなった。また、共同研究機関内で、現在加療中の約100名の思春期やせ症患者とのスコアを比較し、異常なやせ願望、食事態度を示す児童生徒のカットオフ値を算出した。また、7,000人分の母集団データーは、小学校4年生から中学3年生まで取得しており、学年が上がるごとに、やせ願望がどのように変化するか、男女間でどのように異なるか検討をおこなった。また、都市部、中都市、地方でデーターを取得しているため、地域差についても検討をおこなった。

結果と考察
2014年度、本研究事業の初年度の研究計画として、児童生徒の摂食態度を網羅的に評価し、思春期やせ症の早期発見スクリーニングと、思春期やせ症の病勢を反映することのできる質問紙、日本語版EAT-26 (Eating Attitude Test with 26 items)の標準化を予定どおりに実施することができた。都市部、中都市、地方から7,076名分のデーターを取得し、質問紙の妥当性、信頼性を、評価した。質問紙の総点数は78点で点数が高くなるほど、やせ願望やダイエット嗜好などの不適切な摂食態度を示す。平均点は女性7.9、男性5.9で、学年別では中学3年で8.4と最も高い値を示した。地方都市での平均が7.3に対して中都市6.9、大都市6.3であった。私立小中学校の平均は7.8、公立小中学校の平均は6.3であった。またBMIとの関係ではBMIが12から18.5の低体重群の平均点6.3と、BMIが18.5から25の中間群の平均点6.7に対して、BMI25以上の群では、平均点9.1と高くなる傾向があった。よってBMIが低く、かつEAT値が高い個人は、逸脱した摂食態度を有する可能性が高く、思春期やせ症の早期発見に有用なツールとなる可能性が考えられる。またEAT-26のカットオフ値は、神経性無食欲症のみの患者群において感度0.69、特異度0.93にて、18という値を算出することができた。また、2015年度以降のやせに至る要因の解析、思春期やせ症の予後に影響を与える因子の解析のため、前方視的に100名の患者を観察していく企画に対して、北海道から関東、東海、関西、九州にまたがる日本全国から83名の新規患者登録が終了した(2015年5月31日現在)。今回のEAT-26の標準化によって、小児摂食障害の早期発見だけでなく、治療経過での疾病の回復や再発などの評価をおこなうことが可能になると考える。ただしEAT-26を使用した思春期やせ症の早期発見システムの有用性に関しては、今後患者群とコントロール群との比較検討をおこなった上で、実際の学校現場(養護教諭など)での意見も検討していくことが必要であると考察する。
結論
EAT-26の標準化、カットオフ値の算出によって、EAT-26による小児摂食障害の早期発見における更なる進歩が期待されるのと同時に今後のアウトカム研究の評価尺度として準備された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201410001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,551,614円
人件費・謝金 0円
旅費 578,770円
その他 369,616円
間接経費 500,000円
合計 3,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2016-04-28
更新日
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