文献情報
文献番号
201409034A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸癌に対する粘膜免疫を介したヒトパピローマウイルス(HPV)分子標的免疫療法の臨床応用に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-医療技術-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
川名 敬(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 藤井 知行(東京大学 医学部附属病院 )
- 五十君 静信(国立医薬品食品研究所)
- 立川 愛(国立感染研究所)
- 永松 健(東京大学 医学部附属病院 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
子宮頸癌は、発癌性ヒトパピローマウイルス(HPV)によるウイルス発癌であり、罹患のピークが 30才前後である。子宮頸癌に対する子宮摘出術では妊孕能は断たれ、前癌病変(CIN2-3)に対する子宮頸部円錐切除術ではその後の早産リスクが高まる。
本研究の目的は、HPV分子を標的にした子宮頸癌と前駆病変(CIN1-3)に対する新規の分子標的治療薬を開発することである。
本研究の特長は、標的となるHPV分子を発現した感染細胞・腫瘍細胞に対する粘膜免疫(細胞性免疫)を誘導して殺細胞効果を発揮する経口薬を開発した点である。これまでに我々は、HPVの癌蛋白質E7に対する粘膜免疫を誘導するため、E7発現乳酸菌(Lactobacillus casei)GLBL101cを製剤化し、第I/IIa相臨床試験を実施した。GLBL101cの経口投与によって腸管粘膜で惹起された抗E7細胞性粘膜免疫が誘導され、CIN3が退縮することを確認した。粘膜免疫を介した癌免疫療法の有効性を示したのは世界初である。
CINのうちCIN1がウイルス感染症、CIN2-3が子宮頸癌の前癌病変として扱われるが、細胞性免疫の標的となるウイルス分子はCIN1がE2、CIN2-3がE7である。そこで本研究では、E2発現乳酸菌とE7発現乳酸菌を開発することをめざしている。
本研究の目的は、HPV分子を標的にした子宮頸癌と前駆病変(CIN1-3)に対する新規の分子標的治療薬を開発することである。
本研究の特長は、標的となるHPV分子を発現した感染細胞・腫瘍細胞に対する粘膜免疫(細胞性免疫)を誘導して殺細胞効果を発揮する経口薬を開発した点である。これまでに我々は、HPVの癌蛋白質E7に対する粘膜免疫を誘導するため、E7発現乳酸菌(Lactobacillus casei)GLBL101cを製剤化し、第I/IIa相臨床試験を実施した。GLBL101cの経口投与によって腸管粘膜で惹起された抗E7細胞性粘膜免疫が誘導され、CIN3が退縮することを確認した。粘膜免疫を介した癌免疫療法の有効性を示したのは世界初である。
CINのうちCIN1がウイルス感染症、CIN2-3が子宮頸癌の前癌病変として扱われるが、細胞性免疫の標的となるウイルス分子はCIN1がE2、CIN2-3がE7である。そこで本研究では、E2発現乳酸菌とE7発現乳酸菌を開発することをめざしている。
研究方法
1)GLBL101cのCIN2に対する有効性を検証する第IIB相ランダム化二重盲検自主臨床試験を実施。臨床試験を行う際に対象疾患となるCIN2-3のうち、CIN2に対するE7乳酸菌経口薬の有効性が未検討であるため、本研究の一環としてこれを検証する
2)第2世代E7発現乳酸菌では、粘膜免疫誘導能を高めるためにE7:乳酸菌の量比を最適化させ、その量比でE7発現量を調整した乳酸菌を、H26年度中に特許申請する
3)CIN1(ウイルス感染症)では、E7は発現せずE2が発現することから分子標的治療薬としてはE2発現乳酸菌を用いる必要がある。そのため、HPV16型E2の発現系とその評価系としてE2発現細胞を樹立する
2)第2世代E7発現乳酸菌では、粘膜免疫誘導能を高めるためにE7:乳酸菌の量比を最適化させ、その量比でE7発現量を調整した乳酸菌を、H26年度中に特許申請する
3)CIN1(ウイルス感染症)では、E7は発現せずE2が発現することから分子標的治療薬としてはE2発現乳酸菌を用いる必要がある。そのため、HPV16型E2の発現系とその評価系としてE2発現細胞を樹立する
結果と考察
H26年度は、乳酸菌にHPVE7を発現させた薬剤GLBL101cを用いて、CIN2に対する第IIb相相当の自主臨床試験を実施し1/3の症例が試験を終えた。本試験はH27年度末に症例登録を終え予定である。H26年度はE7発現乳酸菌の薬理効果を高めるために第二世代の製剤を開発した。既存のGLBL101cに対して約2倍の粘膜免疫誘導能を有する乳酸菌を開発した。特許出願を終え、H27年5月より、GMP製造を開始する。この第二世代E7発現乳酸菌は、E7含有量、乳酸菌菌体表面の表出分子数ともに、GLBL101cの2-3倍であることから免疫誘導能が高められたと考えている。このHPV分子発現乳酸菌の最適規格にE2分子を搭載させたE2発現乳酸菌の作製を始めた。E2特異的粘膜免疫誘導能を確認し、製剤化を目指す。E7発現乳酸菌とE2発現乳酸菌のカクテルにより、子宮頸癌の原因となるHPV感染から発癌に至るステップ全体をカバーできる世界初の治療薬剤となる。本研究期間内にE7発現乳酸菌の医師主導治験をめざす等の当初計画した開発ロードマップはほぼ遵守されている。
結論
本研究では、CIN2に対するHPVE7標的免疫療法の第IIb相に準じた二重盲検ランダム化自主臨床試験を実施中である。H27年度末のキーオープンに向け、登録症例数の向上を図る必要がある。
第2世代E7乳酸菌は、予定通り特許出願に至った。第2世代の発現型E7乳酸菌は、マウス実験でGLBL101cの約2倍の免疫誘導能であったことから、先行研究で示された臨床効果を上回る有効性が期待できる。
HPV分子を標的とする治療法は未だ世界的にも存在しない。粘膜免疫を介した免疫療法も存在しない。これらを融合させることで、これまで開発に至っていないHPV分子標的治療剤が開発できると期待される。
第2世代E7乳酸菌は、予定通り特許出願に至った。第2世代の発現型E7乳酸菌は、マウス実験でGLBL101cの約2倍の免疫誘導能であったことから、先行研究で示された臨床効果を上回る有効性が期待できる。
HPV分子を標的とする治療法は未だ世界的にも存在しない。粘膜免疫を介した免疫療法も存在しない。これらを融合させることで、これまで開発に至っていないHPV分子標的治療剤が開発できると期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-04-28
更新日
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