再発卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の予後改善のための新たな治療法確立のための研究

文献情報

文献番号
201409007A
報告書区分
総括
研究課題名
再発卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の予後改善のための新たな治療法確立のための研究
課題番号
H24-臨研推-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 恵一(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 板持 広明(鳥取大学 医学部)
  • 笠松 高弘(国立がん研究センター 婦人腫瘍科 (研究分担者 前任))
  • 石川 光也(国立がん研究センター 婦人腫瘍科 (研究分担者 後任))
  • 中村 俊昭(鹿児島市立病院 産婦人科)
  • 道前 洋史(北里大学 薬学部)
  • 岡本 愛光(東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座)
  • 高野 忠夫(東北大学病院 臨床研究推進センター プロトコール作成支援部門)
  • 杉山 徹(岩手医科大学 医学部)
  • 野河 孝充(独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 婦人科)
  • 万代 昌紀(近畿大学 医学部)
  • 櫻木 範明(北海道大学病院 婦人科)
  • 榎本 隆之(新潟大学 医学部)
  • 青木 大輔(慶應義塾大学 医学部)
  • 青谷 恵利子(北里大学 臨床研究機構 )
  • 平田 英司(広島大学 産科婦人科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
上皮性卵巣癌は初回化学療法によく奏効するものの、半数以上の症例が再発する。治療後6カ月以上経過して再発するものを化学療法感受性再発例として取り扱い、現時点ではパクリタキセルとカルボプラチン併用(TC)療法が標準化学療法である。しかし、再発後の予後は不良なので、延命に寄与する薬物療法の開発が求められている。VEGFに対するモノクローナル抗体であるベバシズマブ(Bev)は、2つのランダム化第3相比較試験 (GOG-0218 ,ICON-7) において、初発進行上皮性卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に対するTC療法にBevの上乗せおよび維持療法が有意に無病生存率を改善することが示された。本研究はそれに続く再発例に対するBev投与のランダム化第3相試験である。同時に、再発癌に対する手術療法の有用性を評価する研究である。
本試験は先進医療(旧高度医療評価制度)の下で開始した。
研究方法
本試験の対象症例は、プラチナ感受性再発卵巣癌、卵管癌、腹膜癌である。
研究者が、再発腫瘍が摘出手術の候補と考えられた場合は、手術を行うかどうかのランダム化の対象となる。そのいずれに割り付けられた場合も、手術適応症例でない場合のいずれも、化学療法としてTC療法 対 TC+Bevのランダム化が行われる。目標症例は、GOG全体で927例(うち手術ランダム化症例267例)、我が国から、50例登録を目標とした。本試験は、北里大学臨床研究機構臨床試験コーディネーティング部の管理の下、GOG Japan13施設で遂行し、すべてのデータは米国GOGデータセンターに送られ、独立したデータ管理と統計解析を行う。本試験は、ICH-GCPに則り施行した。
結果と考察
本試験は、米国GOGでは2008年9月に開始された(NCT00565851)。本邦においては、2009年より先進医療への申請を行い、試験を開始した。現在日本からの登録症例数は42例である。
GOG全体では2015年5月25日現在までに907例が登録されている。Bev投与のランダム化対象登録症例数はすでに目標を達成(674例)したため、2011年8月より、手術施行のランダム化のみが行われるようになり、プロトコルが改訂された。2013年11月Bevが保険承認されたことを受け、先進医療の取り下げを指示されたため、2014年3月6日現在新規登録を中止した。試験薬提供元である米国NCIと交渉したが、試験途中での薬剤供給元の変更について理解を得るのに長期間を要した。2014年10月にNCIからの許可が得られたため、厚労省医政局、保険局と協議を行い、2014年12月末日をもって先進医療を終了とすることとなった。引き続き一般臨床試験として、症例登録を2015年1月1日より再開した。本試験Bevランダム化の部分の解析は2015年3月末に学会発表された。また、手術ランダム化部分の症例登録は2015年夏過ぎには終了する予定である。
〈考察〉本試験は、再発上皮性卵巣癌に対するBev投与の有用性を検証するためのランダム化第3相試験である。日本では先進医療B下で米国NCIから無償提供された試験薬を輸入して実施する国際共同試験として行った。すなわち、本試験は我が国の新しい臨床試験制度に基づき、さらに米国NCIから輸入した試験薬を用いて行う、我が国発の国際共同ランダム化比較試験であり、今後新たな新薬開発試験実施体制としてモデルとなり得ると考えられる。一方、試験期間中にBevが保険承認を受けたが、その適応症として初回治療例の限定がなかったため、再発例に対しても保険が適応されることとなった。それに伴い、先進医療の取り下げを指示されたが、NCIが無償提供しているBevを用いる事が必須である本試験において、市販のBevを使用することについてNCIの理解を得るのに時間を要した。すなわち、保険承認になった場合、公的機関から無償提供されている薬剤が使えず、患者負担が増加することとなる点について理解してもらうのが困難であった。国民皆保険制度と混合医療禁止という、日本の保険医療制度が、国際共同試験のハードルとなる可能性がある一事例と考えられる。
試験環境は変わったが、再発卵巣癌に対するBevの有用性を示すことは医学的に重要であり、引き続き本試験完結に向けて最大限の努力を続けるべきであると考える。
結論
再発上皮性卵巣癌・腹膜癌・卵管癌に対するTC療法にBev投与を加える有用性を検証するランダム化第3相試験を、米国NCIから無償提供された試験薬を輸入して実施する国際共同試験として、我が国における新たな臨床試験制度である先進医療Bとして国内13医療機関において実施した。先進医療は取り下げざるを得なかったが、本試験は一般臨床試験として継続しており、一日も早い登録終了を目指し、結果を得ることが肝要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

文献情報

文献番号
201409007B
報告書区分
総合
研究課題名
再発卵巣癌・卵管癌・腹膜癌の予後改善のための新たな治療法確立のための研究
課題番号
H24-臨研推-一般-008
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 恵一(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 紀川 純三(鳥取大学 医学部 (平成24年度))
  • 板持 広明(鳥取大学 医学部 (平成25年度、平成26年度))
  • 笠松 高弘(国立がん研究センター 婦人腫瘍科 (平成24年4月~平成26年5月))
  • 石川 光也(国立がん研究センター 婦人腫瘍科 (平成26年6月~平成27年3月))
  • 波多江 正紀(鹿児島市立病院 産婦人科 (平成24年度、平成25年度))
  • 中村 俊昭(鹿児島市立病院 産婦人科 (平成26年度))
  • 道前 洋史(北里大学 薬学部)
  • 落合 和徳(東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 (平成24年度~平成25年度))
  • 岡本 愛光(東京慈恵会医科大学 産婦人科学講座 (平成26年度))
  • 高野 忠夫(東北大学病院 臨床研究推進センター プロトコール作成支援部門)
  • 杉山 徹(岩手医科大学 医学部)
  • 竹原 和宏(独立行政法人国立病院機構 呉医療センター・中国がんセンター 婦人科 (平成24年4月~平成24年9月))
  • 野河 孝充(独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター 婦人科)
  • 渡部 洋(近畿大学 医学部 (平成24年4月~平成25年1月))
  • 万代 昌紀(近畿大学 医学部 (平成25年2月~平成27年3月))
  • 櫻木 範明(北海道大学病院 婦人科)
  • 八幡 哲郎(新潟大学 医学部 (平成24年度))
  • 榎本 隆之(新潟大学 医学部 (平成25年度、平成26年度))
  • 青木 大輔(慶應義塾大学 医学部)
  • 青谷 恵利子(北里大学 臨床研究機構 )
  • 藤原 久也(広島大学 産科婦人科 (平成24年度))
  • 平田英司(広島大学 産科婦人科 (平成25年度、平成26年度))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
上皮性卵巣癌は初回化学療法によく奏効するものの、半数以上の症例が再発する。治療後6カ月以上経過して再発するものを化学療法感受性再発例として取り扱い、現時点ではパクリタキセルとカルボプラチン併用療法が標準化学療法である。しかし、再発後の予後は不良なので延命に寄与する薬物療法の開発が求められている。VEGFに対するモノクローナル抗体であるベバシズマブ(Bev)は、2つのランダム化第3相比較試験 (GOG-0218 ,ICON-7) において初発進行上皮性卵巣癌・卵管癌・腹膜癌に対するTC療法にBevの上乗せおよび維持療法が有意に無病生存率を改善することが示された。本研究はそれに続く再発例に対するBev投与のランダム化第3相試験である。同時に、再発癌に対する手術療法の有用性を評価する意欲的な研究である。本試験は先進医療の下で開始した。
研究方法
本試験の対象症例は、プラチナ感受性再発卵巣癌、卵管癌、腹膜癌である。
研究者が、再発腫瘍が摘出手術の候補と考えられた場合は、手術を行うかどうかのランダム化の対象となる。そのいずれに割り付けられた場合も、手術適応症例でない場合のいずれも、化学療法としてTC療法 対 TC+Bevのランダム化が行われる。目標症例は、GOG全体で927例(うち手術ランダム化症例267例)、我が国から50例登録を目標とした。本試験は、北里大学臨床研究機構臨床試験コーディネーティング部の管理の下、GOG Japan13施設で遂行し、すべてのデータは米国GOG データセンターに送られ、独立したデータ管理と統計解析を行う。本試験は、ICH-GCPに則り施行した。
結果と考察
本試験は、米国GOGでは2008年9月に開始された(NCT00565851)。
本邦においては、2009年より先進医療への申請を行い、試験を開始した。現在日本からの登録症例数は42例である。GOG全体では2015年5月25日現在までに907例が登録されている。Bev投与のランダム化対象登録症例数はすでに目標を達成(674例)したため、2011年8月より、手術施行のランダム化のみが行われるようになり、プロトコルが改訂された。2013年11月、Bevが保険承認されたことを受け先進医療の取り下げを指示されたため、2014年3月6日現在新規登録を中止した。試験薬提供元である米国NCIと交渉したが、試験途中での薬剤供給元の変更について理解を得るのに長期間を要した。2014年10月にNCIからの許可が得られたため、厚労省医政局、保険局と協議を行い、2014年12月末日をもって先進医療を終了とすることとなった。引き続き一般臨床試験として、症例登録を2015年1月1日より再開した。本試験Bevランダム化の部分の解析は2015年3月末に学会発表された。また、手術ランダム化部分の症例登録は2015年夏過ぎには終了する予定である。
〈考察〉本試験は、再発上皮性卵巣癌に対するBev投与の有用性を検証するためのランダム化第3相試験である。日本では先進医療B下で米国NCIから無償提供された試験薬を輸入して実施する国際共同試験として行った。
すなわち、本試験は我が国の新しい臨床試験制度に基づき、さらに米国NCIから輸入した試験薬を用いて行う、我が国発の国際共同ランダム化比較試験であり、今後新たな新薬開発試験実施体制としてモデルとなり得ると考えられる。一方、試験期間中にBevが保険承認を受けたが、その適応症として初回治療例の限定がなかったため、再発例に対しても保険が適応されることとなった。それに伴い、先進医療の取り下げを指示されたが、NCIが無償提供しているBevを用いる事が必須である本試験において、市販のBevを使用することについてNCIの理解を得るのに時間を要した。すなわち、保険承認になった場合、公的機関から無償提供されている薬剤が使えず、患者負担が増加することとなる点について理解してもらうのが困難であった。国民皆保険制度と混合医療禁止という、日本の保険医療制度が、国際共同試験のハードルとなる可能性がある一事例と考えられる。試験環境は変わったが、再発卵巣癌に対するBevの有用性を検討することは医学的に極めて重要であり、引き続き本試験完結に向けて最大限の努力を続けるべきであると考える。
結論
再発上皮性卵巣癌・腹膜癌・卵管癌に対するTC療法にBev投与を加える有用性を検証するランダム化第3相試験を、米国NCIから無償提供された試験薬を輸入して実施する国際共同試験として、我が国における新たな臨床試験制度である先進医療Bとして国内13医療機関において実施した。先進医療は取り下げざるを得なかったが、本試験は一般臨床試験として継続しており、一日も早い登録終了を目指し、結果を得ることが肝要である。

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201409007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、製薬企業では採算性の問題から企業治験としての適応拡大試験を行う予定はなかったため、医師主導で行う必要があった。幸い、米国との医師主導共同臨床試験を行うチャンスがあり、先進医療として行うこととなった。国内での適応拡大を目的とした臨床試験を国際共同試験として行うことにより、効率よく遂行できることが示された。
臨床的観点からの成果
これまで、ベバシズマブは初回治療例における治療効果が示されていたが、学会発表レベルではあるが、プラチナ感受性再発卵巣癌に対して標準化学療法にベバシズマブを併用+維持療法として追加することによる有用性がしめされたことによって、日常臨床での適応の可能性が拡大した。
ガイドライン等の開発
該当せず
その他行政的観点からの成果
該当せず
その他のインパクト
該当せず

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
8件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
7件
学会発表(国内学会)
15件
日本産婦人科学会、日本癌治療学会等で発表
学会発表(国際学会等)
5件
ASCO、SGO等で発表
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-29
更新日
2019-05-24

収支報告書

文献番号
201409007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
39,000,000円
(2)補助金確定額
34,859,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,141,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 333,505円
人件費・謝金 9,026,422円
旅費 1,810,851円
その他 14,688,916円
間接経費 9,000,000円
合計 34,859,694円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-01-28
更新日
-