文献情報
文献番号
201409004A
報告書区分
総括
研究課題名
肺胞蛋白症の吸入治療のための新規GM-CSF製剤の非臨床試験
課題番号
H24-臨研推-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
田澤 立之(新潟大学 医歯学総合病院)
研究分担者(所属機関)
- 中田 光(新潟大学 医歯学総合病院)
- 湯尾 明(国立国際医療研究センター研究所 疾患制御研究部)
- 井上 義一(国立病院機構近畿中央胸部疾患センター)
- 中垣 和英(日本獣医生命科学大学 獣医学部)
- 内田 寛治(東京大学 医学部)
- 井上 彰(東北大学 病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療技術実用化総合研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
29,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
自己免疫性肺胞は,GM-CSFに対する自己抗体により,肺胞マクロファージのサーファクタント除去能が低下して呼吸不全を生じる稀少肺疾患である.標準治療は,手術室で全身麻酔下で20-30Lの温生理食塩水を使う全肺洗浄であるが,侵襲が大きい.外来で施行可能なより簡便な新規治療薬として本邦未承認のヒトGM-CSF製剤の吸入薬開発に向けた非臨床試験の方法を考えるため,CHO細胞および酵母由来製剤の関連企業と連携して,その薬理学的特性と哺乳動物を用いた吸入毒性試験方法を検討する.
研究方法
①薬理学的特性:肺胞マクロファージ(AM)へのGM-CSFとGM-CSF抗体の共刺激による効果を調べるため,サルAMをGM-CSFのみまたはGM-CSFとGM-CSF抗体の共存下で培養を行い、形態観察,ウシサーファクタント2時間処理しての観察,抗マンノース受容体抗体免疫染色を行った.CHO細胞由来製剤・酵母由来製剤および大腸菌由来製剤を用いて,正常ヒト由来のヒト骨髄血液細胞を作用対象細胞として,メチルセルロースを用いた半固形培地でコロニーアッセイを実施した. GM-CSFの生物活性評価のための好中球表面に発現する接着因子CD11bを測定するCD11b刺激indexの検討では,FITC-CD11b抗体を混和して測定し,GM-CSF刺激による基礎値からの上昇率を比較した.
②吸入毒性試験の方法の検討:ヒトGM-CSFは,種特異性が高くげっ歯類等の動物で生理活性を示さないためカニクイザルにおいて以下の2実験を行った.②-1.GM-CSF単回投与実験:カニクイザルにGM-CSF 製剤を気管内噴霧単回投与(0.05 mg/body)又は2種のネブライザー(膜型/ジェット)(0.5 mg/body)を用いて単回吸入投与し,投与後24時間まで経時的に血漿を採取した.②‐2.CHO細胞由来および大腸菌由来製剤を,気管内噴霧投与(15μg/回,2回/週,12週)を各製剤オス2例のカニクイザルに施行し定期的な抗体の検出,気管支肺胞洗浄液(BALF)採取,剖検で評価した.血漿のGM-CSF中和活性は,血漿を系列希釈し,GM-CSFを加え中和されずに残存したGM-CSF活性をTF-1の増殖によって測定した.委託先の動物実験審査委員会ならびに新潟大学動物実験倫理委員会に動物実験計画書を提出し,指摘事項を修正し,承認を受けた(単回投与実験:26新大研第240号3,抗体観察実験:26新大研第204号1).
③非臨床試験・臨床試験計画:以上の結果をもとに,2014年10月24日に対面助言を受け,本研究の目的である6か月反復吸入毒性試験計画,医師主導治験での検証試験計画書,健常成人薬物動態調査計画を策定した.
②吸入毒性試験の方法の検討:ヒトGM-CSFは,種特異性が高くげっ歯類等の動物で生理活性を示さないためカニクイザルにおいて以下の2実験を行った.②-1.GM-CSF単回投与実験:カニクイザルにGM-CSF 製剤を気管内噴霧単回投与(0.05 mg/body)又は2種のネブライザー(膜型/ジェット)(0.5 mg/body)を用いて単回吸入投与し,投与後24時間まで経時的に血漿を採取した.②‐2.CHO細胞由来および大腸菌由来製剤を,気管内噴霧投与(15μg/回,2回/週,12週)を各製剤オス2例のカニクイザルに施行し定期的な抗体の検出,気管支肺胞洗浄液(BALF)採取,剖検で評価した.血漿のGM-CSF中和活性は,血漿を系列希釈し,GM-CSFを加え中和されずに残存したGM-CSF活性をTF-1の増殖によって測定した.委託先の動物実験審査委員会ならびに新潟大学動物実験倫理委員会に動物実験計画書を提出し,指摘事項を修正し,承認を受けた(単回投与実験:26新大研第240号3,抗体観察実験:26新大研第204号1).
③非臨床試験・臨床試験計画:以上の結果をもとに,2014年10月24日に対面助言を受け,本研究の目的である6か月反復吸入毒性試験計画,医師主導治験での検証試験計画書,健常成人薬物動態調査計画を策定した.
結果と考察
本研究では今年度以下の結果が得られた.①サル肺胞マクロファージをin vitroでヒトGM-CSFとGM-CSF抗体存在下で培養するとサーファクタント処理能が低下し泡沫状マクロファージとなりうる.②コロニーアッセイでは3製剤とも同様の活性を示し,大腸菌由来製剤の活性がやや高い傾向にあった.③CD11b刺激indexは,Intra-individual variationが有意に小さく,異なるサンプル同士の比較が可能なことが分かった.④カニクイザルへのGM-CSF 製剤の単回吸入投与を,気管内噴霧,膜型/ジェットネブライザーで行い,いずれの方法でも血中GM-CSF濃度推移・薬物動態解析が可能であった.⑥GMCSFのカニクイザルへ12週間の間欠的経気道反復投与は,一般状態の変化なく2コース目と3コース目(週1回投与)を施行でき,抗GM-CSF抗体の中和能は個体差が大きく,一部で泡沫状マクロファージをみられた.⑦以上の結果および酵母由来製剤の製造企業からの協力を得て,PMDAの薬事戦略相談での対面助言を受けて,26週反復吸入投与毒性試験,検証試験,健常成人薬物動態試験の計画を策定した.
結論
本研究での結果,CHO細胞,酵母,大腸菌由来の3製剤は薬理学的にほぼ同様の作用を示し,カニクイザルへのネブライザーでの単回投与で血中濃度の推移が測定でき,スプレーでの長期反復投与はサルの一般状態は変わらずに施行できることがわかった.連携企業の意向より酵母由来製剤での医師主導治験の可能性が考えられるようになり, PMDAとの薬事戦略相談事前相談の結果をもとに,非臨床試験・検証試験の実施計画案を作り,連携企業からの資料も添付して対面助言を受けた.対面助言での機構の意見・見解をもとに,26週反復吸入投与毒性試験,医師主導治験による検証試験,薬物動態試験の計画を策定できた.
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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