文献情報
文献番号
201408005A
報告書区分
総括
研究課題名
レーザー消化管内視鏡治療装置の開発
課題番号
H24-医療機器-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
東 健(神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 豊永 高史(神戸大学 医学部付属病院)
- 森田 圭紀(神戸大学 医学部付属病院)
- 粟津 邦男(大阪大学 工学研究科)
- 間 久直(大阪大学 工学研究科)
- 石井 克典(大阪大学 工学研究科)
- 岡上 吉秀(株式会社モリタ製作所 第2研究開発部)
- 本郷 晃史(株式会社モリタ製作所 第2研究開発部)
- 日吉 勝海(株式会社モリタ製作所 第2研究開発部)
- 村上 晴彦(株式会社モリタ製作所 第2研究開発部)
- 川上 浩司(京都大学 大学院医学研究科)
- 田中 司朗(京都大学 大学院医学研究科)
- 斎藤 豊(独立行政法人国立がん研究センター 中央病院)
- 貝瀬 満(財団法人沖中記念成人病研究所)
- 上堂 文也(独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立成人病センター)
- 井口 秀人(兵庫県立がんセンター)
- 横井 英人(香川大学 医学部付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 医療機器開発推進研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
27,645,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
現在、早期消化管粘膜がんに対して内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic Submucosal Dissection:ESD)が高周波電気メスを用いて実施されている。本研究の目的は、電気メスで生じる出血・穿孔等の合併症を改善した、より安全な消化器内視鏡治療のためのレーザー消化器内視鏡治療装置を開発することである。
研究方法
1)レーザー装置開発:歯科用や耳鼻咽喉科用として製造・販売している炭酸ガスレーザー装置をベースとしてESDに適した装置を開発する。特に、レーザー光の取り出し光路の変更、操作性や光学特性において改善する。2)導光ファイバー開発:中赤外波長のレーザーを導光できる光ファイバーは限られており、本研究では中空光ファイバーを使用したファイバー導光路を用いる。従来のガラス製中空ファイバーよりも内視鏡先端部で高い柔軟性(曲率半径2 cm以下)を持ち、高い伝送効率(約70%)、および耐久性を備えたファイバー導光路を開発する。3)ガイド光反射強度モニター装置の開発:摘出したブタ胃切片の粘膜下層にヒアルロン酸ナトリウム溶液を注入し、切片の表面から深さ2 mmの位置に動脈を設置した。ハロゲンランプから発生した白色光を分光器で単色光にしてブタ胃切片に照射し、反射光をCCDカメラで撮影する。4)ブタの摘出胃によるin vitroでの安全性・有効性の評価、5)生体ブタによる前臨床試験を実施する。
結果と考察
レーザー装置における伝送系の取出し構造については、施術者による操作性を考慮し、伝送路取り出しの方向を水平方向、高さを120cmとし、炭酸ガスレーザー装置の改造を行なった。ESD施術に必要な安定したレーザーパワーを確保するため、システムの光学特性として、レーザー伝送路の曲げ損失、出射ビーム拡がり角、偏光依存性を評価した。伝送系については、マルチルーメンチューブの固定を冷却水接続口の1か所とし、ストレスフリー構造とし、導光ファイバーの機械的強度を定量的に把握するためIEC60793-1-33に準拠した光ファイバー2点曲げ破断試験を実施した。ESDにおける出血を避けるための可視ガイド光は、血管部からの反射光強度と粘膜、粘膜下層、筋層からの反射光強度の波長による変化を測定した結果、反射光強度の変化が大きくなったのは波長400-430 nm、および530-580 nmの範囲であった。反射強度をモニタリングすることによる血管の検出のために、ガイド光の波長は530nm帯が最適であった。本炭酸ガスレーザーシステムは、in vitroブタ摘出胃及びin vivo生体ブタにおいて、胃粘膜層を切開するが、粘膜層通過後粘膜下層注入材によってレーザー光が吸収され、血管や筋層を傷付けずに、安全に粘膜及び粘膜下層のみを選択的に切除することが出来、より安全な消化器内視鏡治療が実現された。今年度、3度目のPMDA薬事戦略事前相談を受けることが出来た。
結論
内径φ530μm、長さ2.6mの中空導光ファイバーを用いて、レーザーESD施術におけるガイド光および炭酸ガスレーザー光の出力要求値を達成できる見通しを得た。また処置具の滅菌処理はEOG滅菌が有効であることを確認した。炭酸ガスレーザーと粘膜下層に注入したレーザー吸収材を用いたESDの安全性・有効性を評価するため、in vitroの実験系を構築し、内視鏡先端部の曲げ角度による粘膜切開能力の変化を明らかにした。切開能力を正確に制御するためにはレーザー出力のみではなく、レーザービーム径の変化を考慮に入れる必要があることがわかった。また、ガイド光を波長530 nm付近の緑色光として反射強度をモニタリングすることで血管を検出し、出血を避けられる可能性が示された。レーザーのパワーは既存の機器での15wと本体の大きな改良は必要無く、射出口の位置を変更することと、中空ファイバーを冷却する装置を付加するに留まり、中空ファイバーも530μmの細径のもので治療操作が可能であり、製品のスペックが決定され、臨床試験への準備が出来た。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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