文献情報
文献番号
201407025A
報告書区分
総括
研究課題名
薬用植物、生薬の持続的生産を目指した新品種育成および新規栽培技術の開発並びにこれらの技術移転の基盤構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-創薬-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
菱田 敦之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター北海道研究部)
研究分担者(所属機関)
- 川原 信夫(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター)
- 渕野 裕之(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 吉松 嘉代(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 熊谷 健夫(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 河野 徳昭(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター筑波研究部)
- 杉村 康司(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター種子島研究部)
- 林 茂樹(独立行政法人医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター北海道研究部)
- 井上 聡(独立行政法人農業食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター)
- 伊藤 美千穂(京都大学大学院薬学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 創薬基盤推進研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
46,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
日本では高齢社会の到来により一般用漢方薬の利用が増えている。 一方、国内の生薬原料は中国産が83%を占め、近年、中国の経済成長に伴いその価格は上昇している。このような背景から、日本の国内栽培の再開が期待されている。しかしながら、日本の薬用植物の栽培面積は1988年に3,916 haであったが、 2009年には1,839 haに半減し、この間、在来種苗が失われ、地域の指導者や技術者の育成が途絶えた。また国内生産量が極めて少ない薬用植物は、品種育成、省力化栽培技術や登録農薬の整備が遅れている。
我々は、平成22年度から平成24年度の3年計画で行った「優良形質を持った薬用植物新品種の育成及びそれら種苗の安定供給体制構築のための保存、増殖に関する基盤的研究」において、育成したシャクヤク1品種およびハトムギ2品種の試験栽培および生産栽培を開始し、さらにグリチルリチン酸高含量カンゾウ2系統の選抜に成功した。
本研究は、薬用植物の国内栽培の基盤的技術を整備するために、上記の研究をもとに薬用植物の新たな育種、栽培、生産技術等に関する研究をさらに進め、研究で得られた成果の早期実用化のために、企業、行政機関と連携して技術移転や実用化の基盤構築を図ることが目的である。
我々は、平成22年度から平成24年度の3年計画で行った「優良形質を持った薬用植物新品種の育成及びそれら種苗の安定供給体制構築のための保存、増殖に関する基盤的研究」において、育成したシャクヤク1品種およびハトムギ2品種の試験栽培および生産栽培を開始し、さらにグリチルリチン酸高含量カンゾウ2系統の選抜に成功した。
本研究は、薬用植物の国内栽培の基盤的技術を整備するために、上記の研究をもとに薬用植物の新たな育種、栽培、生産技術等に関する研究をさらに進め、研究で得られた成果の早期実用化のために、企業、行政機関と連携して技術移転や実用化の基盤構築を図ることが目的である。
研究方法
研究の目的を達成するために次の研究を実施した。
1)薬用植物の新品種の育成とその基盤的技術の開発並びに普及:種苗の形質調査、新品種の育成と普及、品種の遺伝子識別、稀少創薬資源植物の収集を行った。
2)薬用植物・生薬の新規生産技術の開発:省力化・機械化栽培技術の開発、栽培環境条件の情報収集、薬用植物の国内栽培化、農薬の適正使用、種苗の効率的増殖と保存、品質評価を行った。
3)薬用植物の国内栽培推進に向けた基盤構築:行政機関と連携して栽培課題の調査、技術移転の拠点確立に取り組み、薬用植物における農薬の作物残留試験の考え方につて有識者による検討会を開催した。
1)薬用植物の新品種の育成とその基盤的技術の開発並びに普及:種苗の形質調査、新品種の育成と普及、品種の遺伝子識別、稀少創薬資源植物の収集を行った。
2)薬用植物・生薬の新規生産技術の開発:省力化・機械化栽培技術の開発、栽培環境条件の情報収集、薬用植物の国内栽培化、農薬の適正使用、種苗の効率的増殖と保存、品質評価を行った。
3)薬用植物の国内栽培推進に向けた基盤構築:行政機関と連携して栽培課題の調査、技術移転の拠点確立に取り組み、薬用植物における農薬の作物残留試験の考え方につて有識者による検討会を開催した。
結果と考察
本研究は、薬用に適した薬用植物の新品種、新規栽培技術の開発、これらの技術移転の基盤構築に関する研究から構成され、平成26年度は、以下の研究実績が得られた。
1)新品種育成では、選抜したグリチルリチン酸高含量ウラルカンゾウについて、品種名は‘厚労Glu-0010’として品種出願した。さらにシャクヤク新品種‘べにしずか’の特性分類調査を行い、シャクヤク品種の遺伝子鑑別法を開発した。稀少創薬資源植物に着目して九州ではオケラ、ウコンイソマツ、北海道ではトウキ類、ニガキの資源量と特性を調査した。
2)新規生産技術の開発では、カンゾウ収穫装置の改良を行い、その成果は特許出願した。気象学的手法に基づくカンゾウの栽培適性は北海道日本海側においてやや生育が劣ると判断された。
栽培指針の作成を目的にナイモウオウギ、メハジキ等の栽培試験を実施し、サジオモダカは西表島で栽培すると生薬原料に適した性状が得られることを見出した。さらに除草剤クレトジム乳剤を用いたカノコソウ栽培を実施して薬害、農薬残留性等を試験した。
クララ等9品目について種子の保存・発芽条件を試験し、植物組織培養を用いたイトヒメハギシュート培養系の確立に成功した。ボウフウ指標成分を用いた品質評価法を開発して市場品の比較を行った。
3)薬用植物の国内栽培推進に向けた基盤構築では、行政、公的研究機関の担当者と検討会を開催し、国内栽培の課題として、登録農薬が少ない、定植、収穫および調製作業の機械化の遅れ等の技術的課題、長期的な需給見通し、情報共有の不足等の経営的課題が提起された。さらに薬用植物の種苗生産基盤構築を目的にトウキ種苗の生産条件を検討した。薬用植物における農薬の作物残留試験の考え方について、有識者、業界団体と検討会を開催した。
1)新品種育成では、選抜したグリチルリチン酸高含量ウラルカンゾウについて、品種名は‘厚労Glu-0010’として品種出願した。さらにシャクヤク新品種‘べにしずか’の特性分類調査を行い、シャクヤク品種の遺伝子鑑別法を開発した。稀少創薬資源植物に着目して九州ではオケラ、ウコンイソマツ、北海道ではトウキ類、ニガキの資源量と特性を調査した。
2)新規生産技術の開発では、カンゾウ収穫装置の改良を行い、その成果は特許出願した。気象学的手法に基づくカンゾウの栽培適性は北海道日本海側においてやや生育が劣ると判断された。
栽培指針の作成を目的にナイモウオウギ、メハジキ等の栽培試験を実施し、サジオモダカは西表島で栽培すると生薬原料に適した性状が得られることを見出した。さらに除草剤クレトジム乳剤を用いたカノコソウ栽培を実施して薬害、農薬残留性等を試験した。
クララ等9品目について種子の保存・発芽条件を試験し、植物組織培養を用いたイトヒメハギシュート培養系の確立に成功した。ボウフウ指標成分を用いた品質評価法を開発して市場品の比較を行った。
3)薬用植物の国内栽培推進に向けた基盤構築では、行政、公的研究機関の担当者と検討会を開催し、国内栽培の課題として、登録農薬が少ない、定植、収穫および調製作業の機械化の遅れ等の技術的課題、長期的な需給見通し、情報共有の不足等の経営的課題が提起された。さらに薬用植物の種苗生産基盤構築を目的にトウキ種苗の生産条件を検討した。薬用植物における農薬の作物残留試験の考え方について、有識者、業界団体と検討会を開催した。
結論
本年度の研究成果より、グリチルリチン酸高含量ウラルカンゾウ‘厚労Glu-0010’の品種出願を行ったことに加え、同種の国内栽培化に必要な栽培適地の解明、穫機の研究開発が進み、これらの成果は従来困難と思われていた生薬「甘草」の国内生産に大きく貢献すると思われた。さらに、遺伝子配列を利用したシャクヤク品種鑑別法、国内のオケラやニガキ等の植物資源調査、ナイモウオウギ等の栽培指針の作成、イトヒメハギの増殖技術、トウキの種苗生産技術、ボウフウの品質評価技術等の成果が多く得られた。薬用植物の国内栽培推進に向けた基盤構築に関する検討では、薬用植物の国内栽培を進めるためには、さらなる企業、都道府県、自治体との連携、種苗・技術移転および情報共有の体制強化が必要であると思われた。
公開日・更新日
公開日
2015-06-12
更新日
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