文献情報
文献番号
201406031A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患創薬シーズの探索と薬剤安全性評価法開発
研究課題名(英字)
-
課題番号
H25-実用化(再生)-指定-019
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
井上 治久(国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所増殖分化機構研究部門)
研究分担者(所属機関)
- 長船 健二(国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所増殖分化機構研究部門)
- 吉田 善紀(国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所初期化機構研究部門)
- 斎藤 潤(国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所臨床応用研究部門)
- 太田 章(国立大学法人京都大学 iPS細胞研究所初期化機構研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
42,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究課題では、疾患モデリングに基づく治療薬スクリーニング、薬剤安全性・毒性評価用細胞の作製等に取り組む。すなわち、iPS細胞を用いた疾患解析で確立してきたアッセイ系基盤を用いることによって、創薬と毒性評価の双方向性の研究開発をすすめる。この開発が、医学のみならず、創薬産業にもたらす効果は極めて大きいと期待される。
研究方法
本研究では、同定した疾患表現型を用いたスクリーニング系を構築する。加えて、日本製薬工業協会からの情報をもとに、これまで種々の毒性を呈した薬剤をモデルとして、その毒性を検出可能な細胞の開発とアッセイ系の構築を行う。
本研究では、次の5名の研究者を中心とした実施体制を組み推進する。研究代表者としては井上治久が、研究総括・難治性神経疾患創薬開発・神経毒性評価を担当する。分担研究者としては、長船健二が、難治性肝疾患創薬開発・肝毒性評価を、吉田善紀が、難治性心疾患創薬開発・心毒性評価を、斎藤潤が、難治性血液・免疫疾患創薬開発を担当する。また、太田章が、難治性骨疾患創薬開発を行う。
本研究では、次の5名の研究者を中心とした実施体制を組み推進する。研究代表者としては井上治久が、研究総括・難治性神経疾患創薬開発・神経毒性評価を担当する。分担研究者としては、長船健二が、難治性肝疾患創薬開発・肝毒性評価を、吉田善紀が、難治性心疾患創薬開発・心毒性評価を、斎藤潤が、難治性血液・免疫疾患創薬開発を担当する。また、太田章が、難治性骨疾患創薬開発を行う。
結果と考察
神経疾患に関して、これまで構築したアルツハイマー病・ALS患者iPS細胞由来神経細胞を用いたスクリーニング系を用いて、既存薬ライブラリーについて、スクリーニングを施行した。それぞれ、数十のヒット化合物を同定した。薬剤神経毒性評価のアッセイ系として、多電極アレイ(MEA)解析を開始した。
肝疾患に関して、シトルリン血症特異的iPS細胞から作製した肝細胞における尿素サイクルと脂質代謝機能の評価を目指した。薬剤肝毒性評価系開発に関しては、新規の化合物を用いた分化誘導法で得られる肝細胞のCYP活性やrifampicin投与によるCYP3A4の酵素誘導などの機能評価を完了した。また新規化合物による肝細胞への分化誘導機構の一部を解明した。また、iPS細胞から成熟肝細胞を誘導する転写因子の組み合わせを検討し、マウス線維芽細胞に導入することで肝細胞を誘導する方法を確立した。
心疾患に関して、QT延長症候群iPS細胞を樹立し、核型異常の有無などの性状評価をおこなった。またこれらのiPS細胞から心筋細胞を分化誘導し、健常者iPS細胞由来心筋細胞と比較して活動電位持続時間が有意に延長していることを確認した。肥大型心筋症iPS細胞から分化誘導した心筋細胞を用いた解析においては健常者iPS細胞由来心筋細胞とで細胞表現型の比較を行った。これまでに開発した高効率心筋細胞分化誘導系を用いてラージスケールで心筋細胞の分化誘導を行った。また、合成RNAを用いた心筋細胞の選別純化法を開発し(Miki et al., Cell Stem Cell, 2015)、これまで報告されている心筋細胞の純化法と比較最適化を行うことにより、ハイスループットスクリーニング系に使用できる品質の高純度心筋細胞の培養が可能になった。
血液・免疫疾患に関して、単球系の分化系・株化系を用いたスクリーニング系構築について、これまでに構築したiPS細胞からの単球分化系に千住らの報告による遺伝子導入を行って作製する単球株の性状評価を行った。CINCA症候群患者由来iPS細胞及びChediak東症候群患者由来iPS細胞よりより誘導した単球系前駆細胞へレンチウイルスベクターにより遺伝子導入を行い、単球細胞株を樹立した。両者とも良好な増殖を示し、単球様の形態を呈した。 iPS細胞由来赤芽球系の細胞増殖を誘導する系を構築した。
骨疾患に関して、iPS細胞から軟骨細胞への誘導の評価系のValidationを実施した。評価のために軟骨化を定量的に検出する方法を開発し、軟骨誘導条件のWell(High Control)の平均を100%、軟骨非誘導条件のWell(Low Control)平均を0%として化合物の効果を%Inhibitionとして評価した。プレートにHighおよびLow ControlのWellを設け、それらの平均の比([High Control]/[Low Control])とZ’-factorはそれぞれ3.40、0.54の範囲となり、良好なアッセイ系を構築した。
肝疾患に関して、シトルリン血症特異的iPS細胞から作製した肝細胞における尿素サイクルと脂質代謝機能の評価を目指した。薬剤肝毒性評価系開発に関しては、新規の化合物を用いた分化誘導法で得られる肝細胞のCYP活性やrifampicin投与によるCYP3A4の酵素誘導などの機能評価を完了した。また新規化合物による肝細胞への分化誘導機構の一部を解明した。また、iPS細胞から成熟肝細胞を誘導する転写因子の組み合わせを検討し、マウス線維芽細胞に導入することで肝細胞を誘導する方法を確立した。
心疾患に関して、QT延長症候群iPS細胞を樹立し、核型異常の有無などの性状評価をおこなった。またこれらのiPS細胞から心筋細胞を分化誘導し、健常者iPS細胞由来心筋細胞と比較して活動電位持続時間が有意に延長していることを確認した。肥大型心筋症iPS細胞から分化誘導した心筋細胞を用いた解析においては健常者iPS細胞由来心筋細胞とで細胞表現型の比較を行った。これまでに開発した高効率心筋細胞分化誘導系を用いてラージスケールで心筋細胞の分化誘導を行った。また、合成RNAを用いた心筋細胞の選別純化法を開発し(Miki et al., Cell Stem Cell, 2015)、これまで報告されている心筋細胞の純化法と比較最適化を行うことにより、ハイスループットスクリーニング系に使用できる品質の高純度心筋細胞の培養が可能になった。
血液・免疫疾患に関して、単球系の分化系・株化系を用いたスクリーニング系構築について、これまでに構築したiPS細胞からの単球分化系に千住らの報告による遺伝子導入を行って作製する単球株の性状評価を行った。CINCA症候群患者由来iPS細胞及びChediak東症候群患者由来iPS細胞よりより誘導した単球系前駆細胞へレンチウイルスベクターにより遺伝子導入を行い、単球細胞株を樹立した。両者とも良好な増殖を示し、単球様の形態を呈した。 iPS細胞由来赤芽球系の細胞増殖を誘導する系を構築した。
骨疾患に関して、iPS細胞から軟骨細胞への誘導の評価系のValidationを実施した。評価のために軟骨化を定量的に検出する方法を開発し、軟骨誘導条件のWell(High Control)の平均を100%、軟骨非誘導条件のWell(Low Control)平均を0%として化合物の効果を%Inhibitionとして評価した。プレートにHighおよびLow ControlのWellを設け、それらの平均の比([High Control]/[Low Control])とZ’-factorはそれぞれ3.40、0.54の範囲となり、良好なアッセイ系を構築した。
結論
本年度は2年度であったが、iPS細胞を用いた治療薬スクリーニングと治療薬シーズの同定、薬剤毒性評価という大きな目標に向けて、順調に研究をすすめることができた。引き続き、来年度も研究を推進する。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
-