文献情報
文献番号
201406014A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒトiPS由来神経前駆細胞の腫瘍形成能のメカニズムとその制御による安全性確保の検討
課題番号
H25-実用化(再生)-一般-003
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
中村 雅也(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 岩波 明生(慶應義塾大学 医学部 )
- 神山 淳(慶應義塾大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 【補助金】 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
33,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究拠点では京都大学CiRAよりヒトiPS細胞の供与を受け、神経前駆細胞(hiPS-NPC)への誘導後に、マウス脊髄損傷モデルへの移植後の治療効果に関して検討してきた。その中で造腫瘍性を示す、iPS-NPCを複数見出してきた。本研究では、hiPS-NPCの造腫瘍性を規定する分子的基盤の解明を目指す。
研究方法
1)メチル化DNAのプロファイリング
CiRAより提供を受けたヒトiPS細胞2株(201B7:造腫瘍性−, 253G1:造腫瘍性+)および、②これらから分化誘導したhiPS-NPC、③ヒト胎児由来神経前駆細胞からゲノムDNAを抽出して、イルミナ社のInfiniumシステムを用いて、全ゲノム領域のDNAメチル化状態を網羅的に解析を行った。
2)iPS-NPCの造腫瘍性の検討
本年度樹立したintegration-free iPS-NPCの造腫瘍性を検討した。非侵襲的、定量的、かつ経時的に造腫瘍性を検討するために、ルフシフェラーゼ発現用のレンチウイルスを感染させ、免疫不全マウスの脳、脊髄、損傷脊髄に100万個移植した。移植後Bio-imagingにより細胞の生存と増殖を経時的に評価し、運動機能評価も同時に施行した。移植後3、6ヶ月後にこれらの動物から組織標本を作成し、病理学的評価を行った。
CiRAより提供を受けたヒトiPS細胞2株(201B7:造腫瘍性−, 253G1:造腫瘍性+)および、②これらから分化誘導したhiPS-NPC、③ヒト胎児由来神経前駆細胞からゲノムDNAを抽出して、イルミナ社のInfiniumシステムを用いて、全ゲノム領域のDNAメチル化状態を網羅的に解析を行った。
2)iPS-NPCの造腫瘍性の検討
本年度樹立したintegration-free iPS-NPCの造腫瘍性を検討した。非侵襲的、定量的、かつ経時的に造腫瘍性を検討するために、ルフシフェラーゼ発現用のレンチウイルスを感染させ、免疫不全マウスの脳、脊髄、損傷脊髄に100万個移植した。移植後Bio-imagingにより細胞の生存と増殖を経時的に評価し、運動機能評価も同時に施行した。移植後3、6ヶ月後にこれらの動物から組織標本を作成し、病理学的評価を行った。
結果と考察
1)造腫瘍性を規定するDNAメチル化領域同定
全ゲノムのメチル化状態をもとに各サンプルをクラスタリング解析し、造腫瘍性を有する細胞のコントロールとして用いたグリオブラストーマとiPS細胞およびiPS-NPCは全ゲノムDNAメチル化状態が大きく異なることが分かった。さらに細胞株による差異よりも細胞の状態の差異の方が大きく、ゲノム全体の状態から造腫瘍性の有無を規定する要因は見出せなかった。そこで継代による差異を平均化し、iPS細胞、iPS-NPCおよび胎児由来NPCにおける全ゲノムDNAメチル化状態に関し、クラスタリング解析を行った。造腫瘍性を呈する253G1 iPS-NPCにおいて継代によるDNAメチル化状態の変化を解析すると、継代を進めることによりDNAメチル化状態が上昇していく領域が存在した。プロモーター領域5kベースの領域に着目すると685遺伝子、転写開始部位近傍で解析すると457遺伝子においてDNAメチル化状態の上昇が見出された。また、DNAメチル化変動領域はCOSMICに登録されているガン抑制遺伝子も含まれており、DNAメチル化状態は遺伝子発現と負に相関することからunsafe hiPS-NPCにおいてはガン抑制遺伝子のDNAメチル化により発現抑制により、造腫瘍性を規定している可能性が示唆された。さらに、201B7と253G1由来hiPS-NPCを比較することにより、両者において顕著に差の見られる領域を複数見出した。これらの領域は造腫瘍性と関連する遺伝子制御領域も含まれているため、再生医療実現に向けたhiPS-NPCの品質管理項目として有用であると期待された。DNAメチル化という観点から解析し、造腫瘍性の有無による差異と細胞の継代ごとによる差異があることが明らかとなった。細胞の継代による差異から再生医療にむけた細胞の供給源としては少ない継代数のiPS-NPCを利用することが現実的であると考えられた。一方で、大量の細胞ストックの確保も必要であるため、エピジェネティックな観点から安定であるiPS細胞を大量に準備し、iPS-NPCストックを作成することが重要であると示唆された。
2)iPS-NPCの造腫瘍性検討
本年度樹立したintegration-free iPS-NPCの造腫瘍性を検討した。1210B2由来iPS-NPC移植群では全例において移植後一過的にphoton countの低下を認めるが、その後時間経過を経て、photon countは上昇し、生体内において増殖しているのが予想された。しかし、組織学的検討では脳および脊髄内で細胞増殖を認める個体は存在せず、また行動異常や脊髄機能の低下を認める個体は存在しなかった。
全ゲノムのメチル化状態をもとに各サンプルをクラスタリング解析し、造腫瘍性を有する細胞のコントロールとして用いたグリオブラストーマとiPS細胞およびiPS-NPCは全ゲノムDNAメチル化状態が大きく異なることが分かった。さらに細胞株による差異よりも細胞の状態の差異の方が大きく、ゲノム全体の状態から造腫瘍性の有無を規定する要因は見出せなかった。そこで継代による差異を平均化し、iPS細胞、iPS-NPCおよび胎児由来NPCにおける全ゲノムDNAメチル化状態に関し、クラスタリング解析を行った。造腫瘍性を呈する253G1 iPS-NPCにおいて継代によるDNAメチル化状態の変化を解析すると、継代を進めることによりDNAメチル化状態が上昇していく領域が存在した。プロモーター領域5kベースの領域に着目すると685遺伝子、転写開始部位近傍で解析すると457遺伝子においてDNAメチル化状態の上昇が見出された。また、DNAメチル化変動領域はCOSMICに登録されているガン抑制遺伝子も含まれており、DNAメチル化状態は遺伝子発現と負に相関することからunsafe hiPS-NPCにおいてはガン抑制遺伝子のDNAメチル化により発現抑制により、造腫瘍性を規定している可能性が示唆された。さらに、201B7と253G1由来hiPS-NPCを比較することにより、両者において顕著に差の見られる領域を複数見出した。これらの領域は造腫瘍性と関連する遺伝子制御領域も含まれているため、再生医療実現に向けたhiPS-NPCの品質管理項目として有用であると期待された。DNAメチル化という観点から解析し、造腫瘍性の有無による差異と細胞の継代ごとによる差異があることが明らかとなった。細胞の継代による差異から再生医療にむけた細胞の供給源としては少ない継代数のiPS-NPCを利用することが現実的であると考えられた。一方で、大量の細胞ストックの確保も必要であるため、エピジェネティックな観点から安定であるiPS細胞を大量に準備し、iPS-NPCストックを作成することが重要であると示唆された。
2)iPS-NPCの造腫瘍性検討
本年度樹立したintegration-free iPS-NPCの造腫瘍性を検討した。1210B2由来iPS-NPC移植群では全例において移植後一過的にphoton countの低下を認めるが、その後時間経過を経て、photon countは上昇し、生体内において増殖しているのが予想された。しかし、組織学的検討では脳および脊髄内で細胞増殖を認める個体は存在せず、また行動異常や脊髄機能の低下を認める個体は存在しなかった。
結論
hiPS-NPCにおける造腫瘍性の実体解明には単一細胞由来のNPCの樹立が必須であり、本研究では再生医療用iPS細胞ストックを利用し作製されたhiPS-NPCの造腫瘍性の実体解明に向けた基礎的な基盤が確立されたもの考えており、これらをもとに腫瘍原性を事前に検出可能な腫瘍マーカーの同定が期待される。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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