文献情報
文献番号
201403010A
報告書区分
総括
研究課題名
ポスト国連開発ミレニアム開発目標における熱帯アフリカマラリア根絶可能性に関する研究
課題番号
H25-地球規模-一般-001
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
金子 明(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 皆川 昇(長崎大学熱帯医学研究所)
- 平山 謙二(長崎大学熱帯医学研究所)
- 脇村 孝平(大阪市立大学 大学院経済学研究科)
- 五十棲 理恵(大阪市立大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
4,805,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
熱帯アフリカにおけるマラリア撲滅は地球規模マラリア根絶にいたる困難かつ重要な踏み石である。本研究はこの課題にケニア・ビクトリア湖島嶼より挑戦する。熱帯アフリカ高度マラリア流行地域を対象とすることに最大の学術的特徴がある。島嶼モデルにより挑戦することが第2の特徴である。ACTと少量プリマキンによる集団治療を応用することが第3の特徴である。
研究方法
本研究はケニア・ビクトリア湖スバ地区で実施される。今般の対策法強化によりケニア人口の65%は小児熱帯熱マラリア原虫陽性率(PfPR)が1%以下の低流行地に住むようになった。しかし人口の10.6%は依然PfPR0が40%以上の高度流行地に居住していて対象地はこの中核に位置する。当地では長崎大学熱帯医学研究所により2006年8月よりHDSSによる住民の移動、生死が把握されている。ムファンガノ島(人口約2万人)、オコデ、タカウリ、キブオギの3小島(各人口約千人)および内陸集落ウンゴイ(人口約3千人)を対象にする。
撲滅干渉実施へ以下の研究段階を経て推進する。
(1)マラリア感染率調査(2)原虫薬剤耐性(3)赤血球異常症:G6PD欠損症,HbS、タラセミア(4)血清疫学(5)薬剤投与試験(6)マラリア伝播モデル(7)短期的マラリア撲滅干渉:オコデ島でマラリア撲滅を目指す。集団治療はLiのFEMSEに従い、乾季に全住民を対象に35日間隔でAPP2サイクル実施する。この処方は3つの効果を含む:artemisininによる急速原虫排除、piperaquineによる長期的予防、primaquineによる生殖母体急速不活化。島嶼間移動による原虫移入に対するサーベイランスを構築する。また定期的全島民スクリーニングにより陽性者にAPPを投薬する。
(8)長期的マラリア撲滅維持(9)社会経済学的インパクト(10)Feasibility study: 島嶼マラリア撲滅戦略のムファンガノ島への応用を検討。
撲滅干渉実施へ以下の研究段階を経て推進する。
(1)マラリア感染率調査(2)原虫薬剤耐性(3)赤血球異常症:G6PD欠損症,HbS、タラセミア(4)血清疫学(5)薬剤投与試験(6)マラリア伝播モデル(7)短期的マラリア撲滅干渉:オコデ島でマラリア撲滅を目指す。集団治療はLiのFEMSEに従い、乾季に全住民を対象に35日間隔でAPP2サイクル実施する。この処方は3つの効果を含む:artemisininによる急速原虫排除、piperaquineによる長期的予防、primaquineによる生殖母体急速不活化。島嶼間移動による原虫移入に対するサーベイランスを構築する。また定期的全島民スクリーニングにより陽性者にAPPを投薬する。
(8)長期的マラリア撲滅維持(9)社会経済学的インパクト(10)Feasibility study: 島嶼マラリア撲滅戦略のムファンガノ島への応用を検討。
結果と考察
ビクトリア島嶼人口のマラリア感染率
2012年1月以来、5回にわたってMbitaにおいてマラリア調査を行った。このうち4回の調査はNgodhe, Kibuogi, Takawiri, Mfanganoの4島および陸側 Ungoye村の同様な人口を対象にした。このうち2014年8月調査のラボにおけるPCR解析は終了していない。1回の調査で総計約2500人全年齢を対象にし、サンプルの約半数が10歳以下の小児である。
マラリア原虫検査は、 (1) microscopy, (2) RDT, 及び (3) PCRの3法で行われた。地域島別、年齢特異的陽性率について示した.総じて原虫陽性率はUngoyeで最も高く、Takawiri, Kibuogi, Ngodheの3小島では低く、Mfanganoでは中間であった。 Ungoyeでは陽性率は10歳以下小児で高くその後加齢に従って減少していく高度伝播地域に特徴的なパターンが見られたのに対して、Takawiri, Kibuogi, Ngodheの3小島ではこの年齢依存パターンははっきりしなかった。これらのデータは多くの原虫感染がsubmicroscopicであり、低い原虫カウントの感染者が伝播の継続に重要な役割を担っていることを示唆する。
2014年8月の調査では、現地にてAO法で見出された高い原虫カウントの熱帯熱マラリア感染者静脈血より原虫培養株の確立が試みられている。2014年2月調査のPf-PCR陽性サンプルについてgametocytesの検出がLSHTMとの共同研究で試みられている(C. Drakeley)。
2012年1月以来、5回にわたってMbitaにおいてマラリア調査を行った。このうち4回の調査はNgodhe, Kibuogi, Takawiri, Mfanganoの4島および陸側 Ungoye村の同様な人口を対象にした。このうち2014年8月調査のラボにおけるPCR解析は終了していない。1回の調査で総計約2500人全年齢を対象にし、サンプルの約半数が10歳以下の小児である。
マラリア原虫検査は、 (1) microscopy, (2) RDT, 及び (3) PCRの3法で行われた。地域島別、年齢特異的陽性率について示した.総じて原虫陽性率はUngoyeで最も高く、Takawiri, Kibuogi, Ngodheの3小島では低く、Mfanganoでは中間であった。 Ungoyeでは陽性率は10歳以下小児で高くその後加齢に従って減少していく高度伝播地域に特徴的なパターンが見られたのに対して、Takawiri, Kibuogi, Ngodheの3小島ではこの年齢依存パターンははっきりしなかった。これらのデータは多くの原虫感染がsubmicroscopicであり、低い原虫カウントの感染者が伝播の継続に重要な役割を担っていることを示唆する。
2014年8月の調査では、現地にてAO法で見出された高い原虫カウントの熱帯熱マラリア感染者静脈血より原虫培養株の確立が試みられている。2014年2月調査のPf-PCR陽性サンプルについてgametocytesの検出がLSHTMとの共同研究で試みられている(C. Drakeley)。
結論
集団治療実施
昨年9月にKNH/UON-ERCに提出したMDA実施のための研究計画に対して11月にprimaquineの安全性等多くのコメントが寄せられた。それらに基づき改訂した研究計画を1月に再提出し既に承認を得た。MDA実施のpilot studyとして ビクトリア湖Ngodhe島全住民(700人)を対象にアルテミシニンとプリマキンによる集団治療をおよび薬剤処理蚊帳配布によりマラリア撲滅が達成できるかをみるfeasibility study実施に向かう予定である。これとは別に中国側Prof LiからMfangano島(25,000人)のMDA実施に対して、人的、資金的な全面協力の申し出があった。この拡大MDA計画の妥当性をケニア側と話し合うため、Prof Liらの広州グループの参加を得てMDAセミナーを3月17-19日、ナイロビにてMOHと共同で開催し、本干渉研究推進についてケニア側の前向きな対応が得られている。
昨年9月にKNH/UON-ERCに提出したMDA実施のための研究計画に対して11月にprimaquineの安全性等多くのコメントが寄せられた。それらに基づき改訂した研究計画を1月に再提出し既に承認を得た。MDA実施のpilot studyとして ビクトリア湖Ngodhe島全住民(700人)を対象にアルテミシニンとプリマキンによる集団治療をおよび薬剤処理蚊帳配布によりマラリア撲滅が達成できるかをみるfeasibility study実施に向かう予定である。これとは別に中国側Prof LiからMfangano島(25,000人)のMDA実施に対して、人的、資金的な全面協力の申し出があった。この拡大MDA計画の妥当性をケニア側と話し合うため、Prof Liらの広州グループの参加を得てMDAセミナーを3月17-19日、ナイロビにてMOHと共同で開催し、本干渉研究推進についてケニア側の前向きな対応が得られている。
公開日・更新日
公開日
2015-05-19
更新日
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