地域に求められる医療機能と医療提供体制の変化に対応した医療施設調査、患者調査のあり方とその評価・分析手法に関する研究

文献情報

文献番号
201402004A
報告書区分
総括
研究課題名
地域に求められる医療機能と医療提供体制の変化に対応した医療施設調査、患者調査のあり方とその評価・分析手法に関する研究
課題番号
H25-統計-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科医療政策情報学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成37年に向けた医療提供体制のあり方の議論において、高度急性期、急性期、亜急性期、地域一般等の病床機能分化が想定されているが、これらの病床群の機能評価手法、調査手法等は今後の重要な検討課題となっている。平成15年から導入されたDPC/PDPS制度のための調査研究は、我が国の急性期医療の実態を明かとしつつあるが、部分的に公表されるデータのみからでは地域の医療提供体制の全貌を評価することは難しい。これに対して研究申請者らの既存研究が示すように、医療施設調査、患者調査等の情報は、地域の患者動態と医療ニーズの定量的な評価に適していると考えられる。
 本研究では、悉皆性を有する医療施設調査、患者調査データを用いて、変化しつつある地域医療の実態と地域で必要とされる医療機能を明かとする手法を示すとともに、他の調査との整合性を持たせながら病床機能を含めた地域医療提供体制の評価につながる統計調査のあり方を示すこととを目的とした。
研究方法
2年計画初年度の平成25年度は、平成23年の医療施設調査、患者調査個票データとDPC関連公表データを用いて、地域の典型的な急性期医療機関とそれ以外の医療機関の入院機能の相違を明かとする手法を検討した。併せて、DPC調査等の整合性を持たせるとともに、年々変化する地域医療提供体制をより適切に評価しうる患者調査等のあり方を検討した。二年度は、医療施設調査、患者調査等から求められる高度急性期、急性期、亜急性期、地域一般、慢性期病床等の医療機能を表す指標を検討するとともに、医療データが充実する中での患者調査、医療施設調査等のあり方を検討した。
結果と考察
(1)病床機能の評価手法の検討
 DPC病院と非DPC病院では、病床当たりの全身麻酔手術数、がん手術数、内視鏡手術数、1.5テスラ以上のMRI実施数、ICU利用患者数等に大きな違いを認め、これらの指標が、急性期機能を表す可能性が示唆された(図1
、図2)。それらのうち、全身麻酔手術数、MRI実施数は、非DPC病院でも実施が多い病院が認められ、急性期病院以外でもこれらが実施されている可能性も示唆された。個別病院ごとのこれらの指標の分布を見ると、全身麻酔手術数、1.5テスラ以上のMRI実施数では、DPC病院と非DPC病院の分布の重なりが大きい一方、ICU利用患者数では、これらの重なりが少なかった(図3、図4、図5)。このように重なりが少ない指標を中心に組み合わせることによって、病床機能を表す指標を構築できることが示唆された。
(2)認知症疾患の将来医療需要の推計
 主副傷病名別の受療率等と将来人口推計から平成37年の認知症医療の需要を推計し、対応医師、病床が不足する地域が発生する可能性を示した(図6)。
(3)地域医療構想策定における医療データの役割の分析
 平成37年に向けた医療提供体制の整備のために、医療データに基づく体制効率化のための施策が検討されている。近年、従来の患者調査・医療施設調査データに加えて、レセプトNDBデータ、DPCデータ等が活用されるようになり、これらのデータの利用方法を再整理する必要が生じている(図7)。それぞれの長短所を分析するとともに、今後の患者調査等の見直し方向として、悉皆性、正確性を担保する基礎調査としての位置づけを明確にし、堅実な調査を維持するかまたは、他の医療データを効率的に活用し、多機能データとして充実を図るなどの可能性を示した(図8、図9)。
結論
本研究により、医療施設調査、患者調査等に基づいた地域の医療機能別提供体制の実態とニーズの推計手法が明らかとなる事が期待され、今後の急性期病床群設定の参考情報として利用しうることが可能になるとともに、平成26年度以降の医療施設調査、患者調査においてDPC調査や各種届出情報等の既存データと整合性を持たせ、より効率的に詳細な情報を収集、分析する仕組みを明かとすることが期待される。長期的には、患者調査等を基礎調査と位置づけ簡略化を図るか、多医療データと効果的にリンクして充実化を図るべきか、を検討する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

文献情報

文献番号
201402004B
報告書区分
総合
研究課題名
地域に求められる医療機能と医療提供体制の変化に対応した医療施設調査、患者調査のあり方とその評価・分析手法に関する研究
課題番号
H25-統計-一般-006
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科医療政策情報学分野)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、悉皆性を有する医療施設調査、患者調査データを用いて、変化しつつある地域医療の実態と地域で必要とされる医療機能を明かとする手法を示すとともに、他の調査との整合性を持たせながら病床機能を含めた地域医療提供体制の評価につながる統計調査のあり方を示すこととを目的とした。
研究方法
平成23年の医療施設調査、患者調査個票データとDPC関連公表データを用いて、地域の典型的な急性期医療機関とそれ以外の医療機関の入院機能の相違を明かとする手法を検討した。併せて、DPC調査等の整合性を持たせるとともに、年々変化する地域医療提供体制をより適切に評価しうる患者調査等のあり方を検討した。
結果と考察
 非DPC病院では、平均在院日数が11日程度長く、入院患者の平均年齢が6歳程度高かった。退院患者数と平均在院日数より推計した非DPC病院の1日あたりの入院患者数は、一般病床のそれの約3分の1であり、一般病床の約3分の2をDPC病院が占めていることがわかった。
 このことは、緊急度別の在院日数別患者数構成比からも示唆され、DPC病院では、緊急度が低いほど短期入院の割合が高いのに対して、非DPC病院では緊急度が低いほど181日以上の長期入院の患者の割合が高くなっていた。
 DPC病院と非DPC病院では死亡患者数の割合には大きな差を認めなかった(図5)。一方、非DPC病院の死亡患者の平均在院日数がDPC病院のそれの3倍近く、非常に長いことが示された。
 非DPC病院は新生物、消化器系疾患の急性期患者が一定数入院していること、一方、循環器系、呼吸機器、外傷では慢性期病態の患者が多く入院していることを示すと考えられる。すなわち、非DPC病院には、がん、消化器の急性期患者と慢性心不全、慢性呼吸不全、外傷による機能障害の慢性期患者が混在していると考えられる。
 非DPC病院の長期入院患者は、手術のない患者で後期高齢者に限らず成人も含まれ、心不全、脳卒中、慢性呼吸器疾患の患者が多いことが特徴であると考えられた。
 都道府県別の、DPC病院と非DPC病院の一般病床の平均在院日数を比較したところ、DPC病院では、ほとんど都道府県差異を認めなかったのに対して、非DPC病院では、2倍近い差を認めた。
 平成23年度の患者調査、医療施設調査より二次医療圏医療施設患者住所別、在院日数階級別、手術有無別の退院患者数集計と手術等診療実績集計を作成した。参照データベースは研究代表者のウェブページ(http://www.tmd.ac.jp/grad/hci/index.html)に公表し、医療計画作成、地域医療分析に利用できるようにした。
 各都道府県が、それぞれの地域の平成23年度の医療施設静態調査病院票、同一般診療所票、病院報告、患者調査病院退院票、一般診療所退院票、病院入院奇数票、病院外来奇数票、一般診療所票の固定長目的外使用データを入手して使用する事を想定して平成23年度研究で開発したプログラムの更新を行った。
 重なりが少ない指標を中心に組み合わせることによって、病床機能を表す指標を構築できることが示唆された。
 主副傷病名別の受療率等と将来人口推計から平成37年の認知症医療の需要を推計し、対応医師、病床が不足する地域が発生する可能性を示した。
 平成37年に向けた医療提供体制の整備のために、医療データに基づく体制効率化のための施策が検討されている。近年、従来の患者調査・医療施設調査データに加えて、レセプトNDBデータ、DPCデータ等が活用されるようになり、これらのデータの利用方法を再整理する必要が生じている。
結論
本研究により、医療施設調査、患者調査等に基づいた地域の医療機能別提供体制の実態とニーズの推計手法が明らかとなる事が期待され、今後の急性期病床群設定の参考情報として利用しうることが可能になるとともに、平成26年度以降の医療施設調査、患者調査においてDPC調査や各種届出情報等の既存データと整合性を持たせ、より効率的に詳細な情報を収集、分析する仕組みを明かとすることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201402004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究結果は、医療施設調査、患者調査の分析によって病床の機能、特に一般病床の急性期機能と非急性期機能の差異を明らかとできる可能性を示した。今後、急速に進む人口構造の高齢化に合わせて、一般病床の機能分化、特に急性期病床、高度急性期病床の明確化と機能の充実、回復期病床、亜急性期病床の整備が求められており、それらの検討に必要なデータを示すことが出来ると考えられた。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
充実する医療ビッグデータの活用の中で、患者調査等の比較優劣を示した。これらの調査の基礎調査としての重要性は高いので、今後のあり方を慎重に検討していく必要性が示唆された。医療施設調査、患者調査の分析から一般病床の機能の多様性を明らかとする手法を示した。病床機能分化を進める今後の医療計画等の策定に有用なデータを提供できる可能性が示唆された。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
2015-06-10

収支報告書

文献番号
201402004Z