受療行動調査による患者の満足度と意識・行動等の現状と推移、相互の関連性およびその規定要因に関する研究

文献情報

文献番号
201402003A
報告書区分
総括
研究課題名
受療行動調査による患者の満足度と意識・行動等の現状と推移、相互の関連性およびその規定要因に関する研究
課題番号
H25-統計-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
村上 義孝(東邦大学 医学部医学科社会医学講座医療統計学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 松山裕(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)
  • 宮下光令(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本年は受療行動調査・患者調査・医療施設調査を統計法第33 条に基づく申請により入手・突合し、①患者満足度・意識・行動を示す項目の経時的変化、②患者満足度・医師説明の理解度の項目における相互関連性、③新しい関連集計内容、④患者の不満足度に医療施設特性が与える影響評価、⑤心身の状態(療養生活の質)に対する要因探索・新しい関連集計内容の5つを検討した。
研究方法
①では昨年度と同様、受療行動調査基本集計データ5調査(平成11、14、17、20、23年)を整理・結合しデータセット(N=1,076,346)を作成し、患者満足度について性別、年齢別に経時変化を、患者行動(アクセス)である待ち時間、診察時間、診療・治療に要した費用の負担感について性別、年齢別、病院種別に検討した。②③では平成23年受療行動調査データを使用した。④では患者の不満足に焦点をあて、受療行動調査関連集計データと医療施設調査データを用い患者要因、医療施設のハード面、サービス面の3つについてロジスティック混合効果モデルにより検討した。⑤では心身の状態(療養生活の質)に焦点をあて、平成23年受療行動調査の関連集計データを使用、検討を行った。
結果と考察
①では患者満足度の性・年齢階級別検討では65歳以上に高満足、低不満の傾向があり、全年齢階級で不満が経年的に減少する傾向にあった。男女別傾向は同様で経年的に不満が減少する傾向にあった。待ち時間の経年推移では、特定機能、小、療養病床で待ち時間30分未満のカテゴリが増加する傾向にあった。また大中病院で平成14年に一時的に高い傾向を示した。診察時間では全病院種で3分未満、3-10分のカテゴリが減少し、10-20分が増加する傾向を示した。性・年齢別にみた待ち時間の推移では40歳未満では40-65歳未満、65歳以上よりも待ち時間が短い傾向があった。男女別の傾向は同様であった。診察時間の傾向は年齢別・性別で同様であった。費用負担感の推移では、病院種に関わらず費用負担感は増加する傾向にあった。性別・年齢別では65歳以上では他に比べ費用負担感が少ない傾向にあるが、年齢階級を通じ負担感小が減少、負担感大が増加する傾向がみられた。男女別では同様の結果であった。なお平成23年では負担感少が増加、負担感大が減少する傾向があった。患者満足度の項目であった患者負担感が、平成23年ではページを改め世帯収入、世帯人数とともに測定される項目になった影響と思われ、設問カテゴリや設問ページの移動が回答に影響を与えることが示されたのは興味深いといえる。②では満足度項目間の因子構造は、外来患者では第一因子に医師との対話、診察・治療内容、全体的な満足度、診察時間、病院スタッフの対応が、第二因子に精神的ケア、痛みなどの対応、診察時プライバシーが、第三因子に待ち時間が含まれた。入院患者の満足度項目間の因子構造をみると、第一因子に病室・浴室・トイレ、食事の内容、病室のプライバシー、全体的な満足度が、第二因子に診療・治療内容、医師との対話が、第三因子に精神的ケア、痛みなどの対応、病院スタッフの対応が含まれた。医師の説明に関する理解度の項目間因子構造をみると、第一因子に治療の方法・期間、病名・病状、今後の見通しが、第二因子に生活習慣指導、その他、薬の薬効・副作用が含まれた。患者満足度は多種多様な要素をふくみ多次元で構成される概念であるが、3ドメインに分かれることが確認できたことは大きく、複数設問で収集する意義は示されたといえる。③では1)今後の治療・療養の希望と医療施設特性、2)都市部とそれ以外の比較として政令指定都市とそれ以外の患者満足度の集計を実施した。④ではロジスティック混合効果モデルによりベースライン施設間差を考慮したもとで、全般的な患者不満足度に影響する医療施設特性として、開設者、受動喫煙防止対策、院内感染施設内回診頻度などが挙げられた。なお高齢になるほど不満割合が小さくなる傾向が認められた。⑤ではロジスティック回帰分析の結果、心身の状態(療養生活の質)と関連する項目として、性、年齢、傷病分類、病院の種類、世帯収入が、入院患者では年齢、傷病分類、病院の種類が挙げられた。
結論
受療行動調査について、患者満足度・意識・行動を示す項目の経時変化を検討し、待ち時間、診察時間などで病院種により、変化パターンが異なることが示された。患者の不満に焦点をあて、医療施設特性の影響および医療施設間差を検討した結果、医療施設間差は大きくないこと、医療施設の質向上を示す項目との関連がみられた。平成23年から導入された「心身の状態」については関連要因の探索および新しい関連集計内容が提案された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-22
更新日
-

文献情報

文献番号
201402003B
報告書区分
総合
研究課題名
受療行動調査による患者の満足度と意識・行動等の現状と推移、相互の関連性およびその規定要因に関する研究
課題番号
H25-統計-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
村上 義孝(東邦大学 医学部医学科社会医学講座医療統計学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 松山裕(東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻)
  • 宮下光令(東北大学大学院医学系研究科保健学専攻)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(統計情報総合研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は受療行動調査に対して傷病などの患者特性をもつ患者調査、医療施設特性をもつ医療施設調査と突合することで、患者の満足度と意識・行動等の現状と推移、相互関連性とそれらの規定要因を検討することである。2年間の研究期間で3つの分担課題、「1. 患者の満足度と意識・行動等の分布の推移と相互関連性の評価」、「2. 患者の満足度等の施設間差とその規定要因の検討」、「3. 患者の満足度や療養生活の質の指標等の現状の分布とその規定要因の評価」を検討した。
研究方法
受療行動調査・患者調査・医療施設調査を統計法第33条に基づく申請により入手し突合を行い、基本的な検討を進めた。上記3つの分担課題に対し、平成25年度は①患者満足度の経時的変化の検討、②患者満足度に影響する医療施設調査の項目の探索、③傷病分類別にみた療養生活の質指標の検討、④がん患者における療養生活の質に影響する要因探索の4つを実施し、平成26年度は①患者満足度・意識・行動を示す項目の経時変化の検討、②患者満足度・医師からの説明理解度における相互関連性の検討、③新しい関連集計内容、④患者の不満足度に医療施設特性が与える影響評価、⑤心身の状態(療養生活の質)に対する要因探索、⑥心身の状態に関する新しい関連集計内容の検討の6つの検討を実施した。
結果と考察
平成25年度;①では外来・入院ともに特定機能病院、小病院で満足割合の増加と不満割合の減少が観察された。②では入院では満足・不満割合はともに、開設者が国・その他で高い満足と低い不満が、医療法人・個人で低い満足と高い不満の傾向がみられ、その差は満足で7.6%、不満では2.1%であった。外来では開設者が国で高い満足と低い不満が、公的医療機関で低い満足と高い不満の傾向がみられ、その差は満足で10.4%、不満で2.8%であった。同様に満足割合に差がみられた項目(7%以上)として、病院種別(入院、外来)、開設者(入院、外来)、医育機関(入院)、委託(給食、滅菌、保守・医療機器、検体検査)(入院)、受動喫煙防止対策(外来)、医療安全体制(全般)(外来)、院内感染施設内回診(外来)、緩和ケア病棟の有無(外来)、研修の実施状況(入院、外来)があった。③では、主要疾患別の療養生活の質の指標は「からだの苦痛がある」「痛みがある」に関しては筋骨格系及び結合組織の疾患ではいと答えた人の割合が外来・入院ともに70%程度と高く、他の疾患では神経系の疾患、呼吸器系の疾患でやや高く、外来で20~40%、入院で40~60%程度であった。④では年齢が75歳以上であること、膵臓がんの患者は療養生活の質が低く、前立腺がんの患者は療養生活の質が相対的に高かった。
平成26年度;①では待ち時間では、特定機能から小病院にしたがって待ち時間30分未満が増加傾向であり、その推移は大中病院で平成14年に一時的に高い傾向を示した一方、特定機能、小、療養病床では待ち時間の減少傾向であった。診察時間では3分未満、3-10分のカテゴリが減少し、10-20分が増加する傾向を示した。費用負担感の推移では病院種を通じて経年的に増加する傾向を平成20年まで示していた。②では因子分析を実施した結果、満足度項目間の因子構造は外来患者では、治療・診察に関する項目、精神的ことに関する項目、待ち時間の3つに分かれた。入院患者の満足度項目間の因子構造はアメニティーに関する項目、治療・診察に関する項目、精神的なことに関する項目の3つに分けられた。③では1)今後の治療・療養の希望と医療施設特性との関連、2)都市部とそれ以外の比較として政令指定都市とそれ以外の患者満足度の2テーマを検討された。④では病院種を変量効果としたロジスティック混合効果モデルを実施したところ、全般的な患者不満足度に統計的に有意な医療施設特性として、外来では開設者、受動喫煙防止対策、院内感染施設内回診頻度、入院では受動喫煙防止対策、緩和ケアチーム、新人研修、院内感染施設内回診頻度という結果となった。⑤では心身の状態の「気持ちがつらい」をアウトカムとしたロジスティック回帰分析で要因探索したところ外来者では性、年齢、傷病分類、病院の種類、世帯収入が、入院では年齢、傷病分類、病院の種類が関連要因として挙げられた。
結論
受療行動調査における患者満足度と意識・行動等の現状と推移、相互の関連性に関する検討をしたところ、患者満足度、待ち時間、診察時間などで病院種により変化パターンが異なること、患者の不満に対する医療施設特性の影響および医療施設間差を検討では医療施設間差は大きくなく医療施設の質向上を示す項目との関連がみられた。また新導入の「心身の状態」で関連要因の探索結果が示された。

公開日・更新日

公開日
2015-05-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2016-05-13
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201402003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
患者の医療ニーズや受療行動を測定する受療行動調査において、患者満足度をはじめとした主観的な回答項目の評価は重要である。医療機関を対象とした主観的評価項目では患者特性とともに、医療施設特性に影響を受ける部分も多く、その定量的評価が求められてきた。本研究では上記の患者満足度に関し医療施設特性の影響を評価し、医療施設間差の有無についても検討を加えた。このように公的統計を用いた学術的検討はわが国で初めてのことであり、本分野における大きな貢献といえる。
臨床的観点からの成果
受療行動調査個票データから、患者満足度などの患者報告アウトカム(Patient reported outcome、以下PRO)について経時的変化を検討した。20年にわたる本調査で経時的変化を本格的に実施したのは公衆衛生行政的に重要であり、日本におけるPROの経時モニタリングの端緒を開いたといえる。本研究班では患者満足度等について因子分析を実施、3ドメインに明瞭に分かれることを確認した。本検討は20年前に一度行われたのみであり、今回因子構造を再検討したことは保健統計行政的に意義があることである。
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2018-07-04

収支報告書

文献番号
201402003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,000,000円
(2)補助金確定額
2,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 452,613円
人件費・謝金 0円
旅費 119,910円
その他 1,427,477円
間接経費 0円
合計 2,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
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