人口減少期に対応した人口・世帯の動向分析と次世代将来推計システムに関する総合的研究

文献情報

文献番号
201401014A
報告書区分
総括
研究課題名
人口減少期に対応した人口・世帯の動向分析と次世代将来推計システムに関する総合的研究
課題番号
H26-政策-一般-004
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
石井 太(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 玲子(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 鈴木 透(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 千年 よしみ(国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部)
  • 小池 司朗(国立社会保障・人口問題研究所 人口構造研究部)
  • 岩澤 美帆(国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,884,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 現在、国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の人口・世帯の将来推計は、人口減少・少子高齢化・地域構造変化等による人口・世帯の長期動向を踏まえた施策立案に広範に活用されている。従来、わが国の人口・世帯の将来推計は、最初に全国の将来人口を推計し、これに地域・世帯推計を整合させる形で実施してきた。しかしながら、わが国が人口減少期を迎えるにあたり、首都圏の高齢化と地方の過疎化という複合的動態の進展、未婚率上昇等をはじめとした家族・世帯構造の転換や高齢単独世帯の増加など、地域や世帯の変化が少子化・長寿化等の全国的潮流に影響を与え、相乗しながら展開している。
 このような人口減少期における将来推計にあたっては、先進諸国等における人口学界の最新の研究動向を反映した人口・世帯の動向分析の深化や、地域・世帯の将来に関する情報提供により重点を置きこれに全国的な少子化・長寿化の傾向を整合させるという新たな観点を導入した将来推計モデルの開発が求められる。一方、世界から注目を浴びるわが国の人口高齢化とその政策的・技術的対応は「日本モデル」として中長期的な成長戦略分野となり得るものであり、その企画には人口・世帯の将来推計を用いた政策的シミュレーションが必要となる。
 そこで、本研究は人口減少期に対応した新たな人口学的将来推計に関して総合的な研究を行うことを目的とし、①最先端技術を応用した人口減少期における総合的な人口・世帯の動向分析、②地域・世帯に関する推計に重点を置いた次世代将来推計モデルに関する基礎的研究、③将来推計を活用した政策的シミュレーションに関する研究の三領域から研究を推進する。
研究方法
 本研究では、研究全体を「研究目的」で示した三領域に分けて研究を進める。なお、研究全般にわたり、社人研や研究者個人が属する国際的研究ネットワークを最大限に活用し、諸外国や国際機関などと緊密な国際的連携を図って研究を進める。また、研究所が有する人口・世帯の将来推計に関する研究蓄積を方法論やモデル構築研究に活かすとともに、所内における関連分野の複数の研究者に研究協力者として参加を要請し、総合的に研究を推進する。
結果と考察
 本年度の成果を課題領域ごとに示すと以下の通りである。
 ①について、地域別の結婚出生力指標の検討、配偶関係構造の推計に必要なデータ準備、就業や労働市場環境の少子化への寄与検討のためのデータ整備、年途中までの統計を用いた年間出生率の推定精度向上の検討、国際移動の国際比較を行う際に必要となる定義等統一化の課題整理、各種調査による外国人人口の地理的分布および国内移動に関する集計値の比較検討、日本における外国人女性の職業達成に関する分析、子育て費用の負担感に関する分析を行った。
 ②については、全国と都道府県の間で整合性を保つ死亡モデルのレビューと検討、都道府県別人口移動集計結果の補正に基づく地域推計移動モデルへの適用可能性、7か国の近年の世帯数将来推計の比較検討、移動の男女差・学歴別移動差等の分析、ヨーロッパ等の生殖補助による出生の人口学的インパクト等の調査と日本との比較を行った。
 ③については、外国人受入れシナリオに応じた外国人女性の出生パターンに基づくシミュレーション、自治体の人口関係政策のピックアップと類型化、外国人介護労働者のインフォーマルケアの中での位置付け、送り出し国と受け入れ国の組み合わせなどの整理を行った。
結論
主な結論を要約すると以下の通りである。
(1)全国と都道府県の間で整合性を保つ死亡モデルについてはその可能性が示されたが、これらをそのまま都道府県の自然な投影結果と考えられるかについては留保も必要である。
(2)外国人労働者を受け入れる複数のシナリオに応じて外国人女性出生率に変化を持たせることにより、政策に応じた日本国内での出生パターンの変化が反映され、長期の人口動向への影響も織り込むことが可能となった。
(3)女性の移動は、高学歴・高就業化に応じて確実に変化しており、今後、女性の移入により地域活性化を図るのであれば、受け入れのための社会環境の整備が必要となる。
(4)女性の活躍を促進するうえで晩婚・晩産化はやむをえない状況であり、ARTが出生率向上に果たす割合は無視できない。
(5)世帯推移率法は状態間のフローを明示的にモデルに組み込んでおり、世帯主率法やプロペンシティ法より方法論的に妥当である。
(6)社人研の世帯数の将来推計(全国推計)は、5 年ごとの標本調査から推移確率行列を毎回新しく作り直している。しかし配偶関係間推移を与えた条件付推移確率が安定的であることが示されれば、ProFamyモデルのように標準年齢スケジュールを定義し、少数の要約指標で調整できる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2015-06-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201401014Z