「都市部における医療・介護・福祉等連携のための情報共有システムのあり方」に関する研究

文献情報

文献番号
201401006A
報告書区分
総括
研究課題名
「都市部における医療・介護・福祉等連携のための情報共有システムのあり方」に関する研究
課題番号
H25-政策-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
植村 尚史(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  • 尾形 裕也(東京大学 政策ビジョン研究センター)
  • 河手  典彦(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 可部明克(早稲田大学 人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,984,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、地域において、病診連携、医療・介護連携を促進し、包括ケアを実現するために、患者情報を関係専門職間で共有し、紹介・逆紹介、薬剤管理、日常生活管理等に役立てることができる情報システムを構築するには、どのような政策が有効であるかを探るものである。特に、在宅医療・看護・介護体制が整っているものの、急性期病院との連携を構築することが難しいとされる大都市部において、現状に適した医療・介護を通じた情報システムのあり方について提言しようとするものである。
このため、国内、海外の有効に機能している情報システムが、どのように構築され、どのような専門職の間で、どのような情報が、どのようにして共有され、どのような成果を挙げているかを調査するとともに、大都市部の代表的な地域である新宿区をフィールドとして、病診連携、医療・介護連携がどのように行われ、どのような課題を有しているかを調査し、具体的な情報システムのあり方を示していくこととしている。
研究方法
病診連携、医療介護連携政策の背景と目的について文献調査を中心に調査を行うとともに、病院経営
サイドからみて、病診連携、医療介護連携とそれを進めるための情報システムの導入についてのメリ
ット・デメリットについての検討を行った。また、前年度に引き続き、地域の中核医病院が中心にな
ってつくっている医療介護一体のシステム、医師会が中心となって地域の医療介護の連携を図ってい
るシステムを中心に綿密な現地調査を行った。さらに、医療情報ネットワークの普及が進んでいるオ
ランダについて、関係者からのヒアリングを行った。オランダにおいては、看護師を中心とした,医療介護の小規模集団Buurtzorgwebの現状と、その使用している情報システムについても調査した。
結果と考察
病院間、病院・診療所間の機能分化と連携が進んでいる地域では、情報ネットワークの構築・普及
が進んでおり、そのような地域の実践事例の中で、システム上の課題は乗り越えられてきている。
システムとしては、新たなものを構築する必要は無く、うまくいっている地域のシステムを他の地域
にも広げることで、情報ネットワークの普及は可能である。また、少数の地域中核病院がその地域の
医療介護サービス全般を担っているような地域では、情報ネットワークを活用した事業の統合化が進
んでおり、一事業体で地域包括ケアをカバーするための道具として情報ネットワーク構築が図られて
いる。これに対し、大都市部では、大病院が患者を囲い込む傾向が見られ、医療機関間の情報ネット
ワークは機能していない。
結論
在宅医療介護に関しては、大都市部の一部では、訪問看護を中心とした包括ケア体制がつくられており、事業統合化に近い状況が生まれている事例もある。これに対し、事業者の選択ができない、医師主導の在宅医療に支障が生じる場合があるなどの批判もある。こうした中で、事業統合化とは逆の方向で、各専門職間の独立と連携のために、簡便な情報ネットワークシステムが求められている。本研究では、各専門職からの意見を踏まえ、大都市部における在宅医療・看護・介護の連携に特化した簡便なシステムのモデルを構築した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201401006B
報告書区分
総合
研究課題名
「都市部における医療・介護・福祉等連携のための情報共有システムのあり方」に関する研究
課題番号
H25-政策-一般-005
研究年度
平成26(2014)年度
研究代表者(所属機関)
植村 尚史(早稲田大学 人間科学学術院)
研究分担者(所属機関)
  •  尾形 裕也 ( 東京大学 政策ビジョン研究センター )
  • 河手  典彦(早稲田大学 人間科学学術院)
  • 可部  明克(早稲田大学 人間科学学術院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 【補助金】 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、地域において、病診連携、医療・介護連携を促進し、包括ケアを実現するために、患者情報を関係専門職間で共有し、紹介・逆紹介、薬剤管理、日常生活管理等に役立てることができる情報システムを構築するには、どのような政策が有効であるかを探るものである。特に、在宅医療・看護・介護体制が整っているものの、急性期病院との連携を構築することが難しいとされる大都市部において、現状に適した医療・介護を通じた情報システムのあり方について提言しようとするものである。
研究方法
 病診連携、医療介護連携政策の背景と目的について、文献調査を中心に調査を行った。また、地域の多くの医療機関が参加して、情報交換を行い、病診連携に役立っているシステム、小さな地域で地域の中核医病院が中心になってつくっている医療介護一体のシステム、医師会が中心となって地域の医療介護の連携を図っているシステム、また、大きく打ち出したもののほとんど利用されていないシステムなど、特徴的な地域連携システムについて、綿密な現地調査を行った。
 国際的な状況について、OECD事務局において担当者からヒアリング調査を行った。また、Dossier Medical Personnel=DMPを、国の政策として進めているフランスにおいて、病診連携とか医療と介護の連携という点でどのような成果をあげているかについてヒアリングを行った。さらに、医療情報ネットワークの普及が進んでいるオランダにおいて、関係者からのヒアリングを行った。
 急性期病院、行政担当者、在宅医療を担当している開業医、訪問看護ステーション、ケアマネージャー等から、退院して在宅療養に移行する場合に、専門職の間で情報がどのようにして伝えられているかについて、ヒアリング調査を行い、これを元に大都市部における情報ネットワークの課題について考察し、都市型に特化した医療介護の連携情報モデルシステムの設計を行った。
結果と考察
病院経営の観点からは、少なくとも首都圏に関する限り、機能を特化してスリム化を図るとともに、他の医療機関との連携を強化し、紹介、逆紹介等を増やそうという強い姿勢は見られない。これは、患者が大病院に「来てしまう」という状態にあり、病院に患者を集める経営から脱却できていないためである。このような状況の下では、医療情報ネットワークの普及は困難である。病院サイドでネットワークシステムの意義が理解されておらず、そのために費用を負担するインセンティブがないためである。
 都心では、大きな急性期の病院がいくつかあるが、療養型の病院がほとんどない。一方で、在宅の医療介護サービスが充実している。退院後在宅に戻っても、患者が入院していた病院に通院しており、かかりつけ医は病院の医師という状態になっている。病院に通えなくなると、その段階で、近くの在宅支援診療所が担当することになるが、その間の事情が診療所ではよくわからない。終末期には、再入院ということで、在宅看取りなどは困難な状態にある。
病院側が積極的に機能分化と病診連携、病病連携を推進しようとしているところでは情報ネットワークシステムが有効に機能している。一方で、地域の中核病院と診療所、さらには介護サービス機関が、情報ネットワークを通じて体系的につながっているという形態もある。これは、実質的なグループ化であり、見方を変えると、いわゆる患者の囲い込みのために情報ネットワークが利用されている形態というふうに言えなくもない。しかし、中核病院が実質的に1つしかない地域では、それを中心とした事業体のグループ化が、機能分化と連携の形態でもあり、情報ネットワークシステムは、そこに貢献しているとみることもできる。
結論
医療情報ネットワーク構築のシステム上の主要な課題については、すでに既存のネットワークの実験で乗り越えられており、これを積極的に活用するメリットがあるところでは、順調に稼働、拡大している。このため、個人の健康データを集積・管理するという方式(我が国では「どこでもマイ病院」構想などで検討されている方式)のような全国一律のシステムは必要ない。
大都市部では、大病院が患者を囲い込む傾向が見られ、情報ネットワークは機能していない。大都市部では、事業統合化は難しく、各専門職間の独立を前提とした連携体制確立のために、簡便な情報ネットワークシステムが求められている。本研究では、各専門職からの意見を踏まえ、大都市部における在宅医療・看護・介護の連携に特化した簡便なシステムのモデルを構築した。

公開日・更新日

公開日
2015-05-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201401006C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究によるフランスの情報ネットワーク調査に基づき、研究協力者の岸田伸幸(創造大学院大学)が、第34回医療情報学連合大会標準化セッション「フランスDMPサービスの普及阻害要因」について発表を行った。
臨床的観点からの成果
本研究で開発した医療・介護情報共有のためのネットワークシステムについて、関係専門職団体とともに、その実用化に向けた検討を行うこととしている。
ガイドライン等の開発
大都市部における在宅医療・看護・介護の連携に特化した簡便な情報共有のためのネットワークシステムのモデルを構築した。
その他行政的観点からの成果
本研究での調査結果と連携・役割分担に関する提言は、新宿区の介護保険事業計画に、部分的には取
り入れられたが、情報ネットワークシステムに対する取り組みはまだ各自治体とも低調な状況である。次期計画を展望しながら、介護保険制度改革への対応が始まったところであり、その中での地域包括ケアシステム構築における情報ネットワークシステムの役割について、引き続き提言を行っていくこととしている。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201401006Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,582,000円
(2)補助金確定額
4,582,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 366,996円
人件費・謝金 559,010円
旅費 1,171,335円
その他 1,886,659円
間接経費 598,000円
合計 4,582,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2016-03-15
更新日
-