ソーシャル・キャピタルの概念に基づく多部門連携による地域保健基盤形成に関する研究 

文献情報

文献番号
201330032A
報告書区分
総括
研究課題名
ソーシャル・キャピタルの概念に基づく多部門連携による地域保健基盤形成に関する研究 
課題番号
H25-健危-若手-015
研究年度
平成25(2013)年度
研究代表者(所属機関)
近藤 尚己(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 克則(千葉大学 予防医学センター)
  • 尾島 俊之(浜松医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 健康安全・危機管理対策総合研究
研究開始年度
平成25(2013)年度
研究終了予定年度
平成27(2015)年度
研究費
2,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健康日本21(第二次)の基本姿勢となるなど、地域のソーシャル・キャピタルを醸成することで健康増進を図る「地域づくり型」の保健施策の重要性が高まっている。しかしソーシャル・キャピタルの概念には誤解や乱用が多く、その醸成手法も発展途上である。そこで本研究は、地域づくり型の保健施策を進めるために、まずソーシャル・キャピタルの概念を整理し、その醸成方法の在り方を検討すること、そして介護予防を例に、自治体との連携による実践で、その課題や手法についての知見を得ることを目的とした。
研究方法
1)自治体における地域づくり型の保健活動におけるソーシャル・キャピタルの概念の活用法についての理論的研究:ソーシャル・キャピタルの概念について,主にその定義と健康への影響について文献的検討を行い,定義の相違を分類した. 2)自治体における多部署・官民連携体制の構築による地域づくり型の介護予防対策の推進に関する研究:介護予防対策を目的として,兵庫県神戸市および熊本県御船町における連携会議の立ち上げと多部署連携会議の運営を,研究者の参画を伴い実施した.3)データに基づく地域診断ツール:JAGES-HEART2010を用いた神戸市のベンチマーキング:2010-11年度に「健康とくらしの調査(JAGES調査)」のデータを用いて,JAGES-HEARTの枠組みにより自治体間のベンチマーキングを行った.使用したデータ元の調査は31自治体保険者で実施され,回収率は66.3%であった.用いた指標はJAGES調査によって把握できる地域診断のための主要17項目であった.各指標の値は直接法による年齢調整を施した.4)介護予防事業の優先地域を選定するためのツール開発に関する研究:JAGES2010年-11年調査のデータを用いて,市内を小地域単位で客観的に評価し,優先的に介入すべき地域を選定するツール「介護予防事業実施対象地区選定シート(version2.1)」を開発した.5)JAGES2013年調査結果:神戸市と御船町:2013年に全国30自治体を対象としたJAGES2013年調査を実施した.その一部として,本研究では兵庫県神戸市と熊本県御船町において調査を実施した. 6)自治体における多部署連携を進めるための会議のファシリテーション手法に関する研究:「一人からみんな(1-2-4-ALL)」手法の活用:多職種連携会議の場で Liberating Structuresの一手法である「一人からみんな(1-2-4-ALL)」を,御船町での地域包括ケア推進会議において活用した.(倫理面への配慮)JAGES調査は日本福祉大学倫理審査委員会の許可を得て実施した.
結果と考察
概念整理の結果,地域づくり型の公衆衛生活動においては,コールマンやパットナムによる定義に基づき,グループメンバー同士やグループ同士の良好な関係性を追求するような,集団の凝集的特性としてのソーシャル・キャピタルの醸成を進めることが概念的に合致していた.兵庫県神戸市および熊本県御船町において連携会議の立ち上げと多部署連携会議の運営を,研究者の参画を伴い実施した.その結果,共通の目的の保有,参加部署それぞれにとって合目的であるための運営の工夫,効果的なファシリテーション手法の活用,ソーシャル・キャピタルの負の効果への対処などの重要点が確認された.これらに留意しつつ準備を進め,両自治体において,実際に連携会議を立ち上げることに成功した.また,日本老年学的評価研究(JAGES)による地域診断とその結果の見える化ツールであるJAGES-HEARTを活用して,23年に実施した神戸市でのJAGES調査結果に基づき,神戸市の地域診断を行った.JAGES-HEARTをさらに実践的に活用するため,「介護予防事業実施対象地区選定シートver.2.1」を開発して,神戸市で実際に使用した.要介護のリスク,社会参加状況,社会経済状況,地域づくりのための資源等について学区単位で数値評価することで,介護予防施策の優先順位が高い地域を客観的に選定できるツールである.連携会議では,「ひとりからみんなへ(1-2-4-all))」といった会議のファシリテーション手法を活用し,多様な部署が参画する会議においての有用性を確認した.加えて,今後の地域づくりの介入効果判定のベースラインとするため,今年度はJAGESの2013年調査を上記2自治体で実施し,自治体の特徴等について把握した.
結論
2年目の計画では,第6次介護保険事業計画の立案と合わせて,データを活用した連携組織の運営による地域づくりとソーシャル・キャピタルの醸成の具体化と取り組みの継続実施をめざし,その評価をする.

公開日・更新日

公開日
2017-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
201330032Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,730,000円
(2)補助金確定額
2,730,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 192,642円
人件費・謝金 22,000円
旅費 812,006円
その他 1,073,352円
間接経費 630,000円
合計 2,730,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-06-17
更新日
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